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(回答先: 銀行問題の最終局面 金融危機は第2段階に突入した 吉冨 勝(週刊エコノミスト12月25日号) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 12 月 18 日 23:30:07)
>これは驚くべき事実である。実体経済が相当に回復しても不良債権問題は、
>悪化し続けるという事実を突き付けられたからだ。
「実体経済の回復」といっても、吉富氏が後段で言われているように「不動産の価格は下がり続け、リターンを生み出すようにはなっていない」というデフレ状況での「年率3%成長した95〜96年の2年間」はデフレータで修整した値でしかなく、経済活動の回復を示すものではない。実質0%成長もしくはマイナス成長(00年ははっきりと)がダラダラと続いているのである。(物価を、食品や生活サービスを含めたものではなく、工業製品や不動産価格に絞り込んだもので見ないと、現在のデフレ状況の深刻さは理解できない)
だから、「驚くべき事実」なんかではないのである。
不動産価格(株価も)は“異常高騰”という過去の反動からその低下が顕著なだけで、他の物価も下げ圧力のみがかかり続け、企業の“基本欲求”である価格上昇を実現する余地がないデフレ状況に置かれている。
デフレの継続は、すなわち“デフレスパイラル”であるという最低限の経済論理を認めなければ策は出てこない。名目成長がマイナスであれば、実質成長がプラスであっても、実体経済が回復しているとは言えないのである。
デフレは、借金の重みが増大し、余剰資金があっても企業活動に投資するより現金もしくは現金に準じるもので持っているほうが有利という状況である。
>金融を緩和して、インターバンク・マネー・マーケット(銀行間取引市場)には
>潤沢にお金があるが、銀行はそのお金を企業向け貸し出しに向けず、リスク資産
>ではない国債を買っている。民間の需要を引き起こす要因である金融がうまく回
>らないから民間需要はでてこない。それは日銀の短観からもわかる。
この指摘は正しいし重要である。だからこそ、日銀がいくら川上から資金を流しても、現在の経済的苦境はじんわりとも改善されないのである。
このような実態が分かっているからこそ、与党を中心に、日銀がCPや社債の買い入れを増やすよう促しているのである。
しかし、これが実現しても、経済的苦境が改善されるものではない。CPや社債を発行し消化できる企業は、間接金融でも資金が手に入る企業であり、経済社会の本質的な資金不足(=需要)を解消するものではない。
>呼び水政策を行っても、金融機関からの銀行信用が中小企業に回らないかぎり、
>民間需要が井戸水のように自然に湧いてこない。
「中小企業に回らないかぎり、民間需要が井戸水のように自然に湧いてこない」という部分は、現状から一歩進めた対策提起ではあるが、他が現状のままであれば、その結果は“不良債権”の積み増しである。それが分かっている銀行は、中小企業への融資を増やしたりはしない。
>となると、財政出動するときは、同時に金融機関のもっている不良債権を処理して、
>銀行が前向きに貸し出しができるような環境をつくることが必要となる。
>これまで再三指摘してきた議論だが、それが後手後手に回ってきた。
「金融機関のもっている不良債権を処理して」も、「銀行が前向きに貸し出しができるような環境をつく」れるわけではない。
銀行の自力ではなく、“公的資金”の注入で不良債権を処理したとしても、銀行の重荷が一時的にとれるだけである。行き着く先は“銀行国有化”である。
実体経済が実質的に回復していく傾向にならないかぎり、「銀行が前向きに貸し出しができるような環境」にはならないのである。
>だから、30兆円と決めた時点から、景気の悪化にともなう税収の低下で生じる
>財政の悪化については許容すべきだ。これを増税して埋め、あくまで30兆円を
>死守しようとすれば、アメリカ恐慌期のフーバー大統領(1929年米株式大暴
>落に続く世界恐慌時の大統領、自発主義政策で経済の深刻化を招いた)と同じ轍
>を踏むことになる。(談)
財政が悪化するだけではなく、経済状況も悪化する。それも許容しなければならない。
フーバー大統領を引き合いに出すのなら、1941年の第二次世界大戦開戦に至る過程でなんとか経済的苦境を脱したルーズヴェルト大統領の政策も引き合いとして出すべきであろう。
ルーズヴェルト大統領の不況対策としては大規模な公共投資が有名だが、それでは大不況から脱出できなかったのである。不況脱出のヒントは、1935年以降の政策にある。
国庫のコストがほとんど掛からずに、現在の不況から脱出はできないとしても、苦境を緩和させられる政策はいくつかあるのだ。それを見つけて実行できるかどうかが、政府の存在意義を決するものだ。
現在の経済社会システムの崩壊を望む者としては、具体的な“延命策”は語らないが、経済の経済社会システムを維持したいと願う者であれば、その方策をきちんと考え語るべきである。
>吉冨勝氏は土地バブル発生に関して、「通説では、過剰なマネーサプライを原因と
>しているが、過剰なマネーサプライだと一般物価のインフレにはなっても、それが
>アセット・プライス(資産価格)・インフレーションになるメカニズムは説明でき
>ない」と指摘し、「1980年代の金融の自由化が日本の銀行のビヘイビア(行動)
>を変えたことに土地バブルの原因を求めるほうが、事実や理論と整合する」と断言
>する(詳細は同氏著の『日本経済の真実』東洋経済新報社刊)。
“土地バブル発生”の原因は、現在の“地価崩壊状態”の裏返しとして捉えれば分かりやすい。
現在も“超金融緩和状態”にある。しかし、その金は経済社会全体を循環していかない。'85年からの過剰なマネーサプライ状態も、経済社会全体を循環せず、銀行と企業(大企業及び不動産関連企業)のあいだでしか循環しなかったのである。地価は、主として不動産業者間のキャッチボールを通じて跳ね上がっていった。
過剰なマネーを持つ銀行は、株価上昇と地価上昇が“永遠”に続くという妄信に依拠し、そのようなものに“投資”する企業に過剰な貸付を行ったのである。
「日本の銀行のビヘイビア(行動)を変えた」わけでなく、“土地本位制”とも言える融資活動を一貫として行ってきた銀行が、そのビヘイビアを変えることなく、過剰なマネーサプライ状況で“高利貸し”の利益を“土地”投資に求めていった末路が土地バブルである。
このようなものだったからこそ、「一般物価のインフレ」にはならずに、資産インフレのみが生じたのである。
日本経済の苦境を端的に言えば、需給ギャップである。そして、現状での供給力の削減は、さらなる需給ギャップを生む。
現状の日本経済で需給ギャップを解消する方法は、需要の拡大しかないのである。
それを望むわけではないが...。