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(1)大銀行は消費者金融以上の焦げつき率
日本の金融再生はスタートからボタンを掛け違えた。
銀行が実質破綻状態になっても法的清算をせずに、経営責任まで不問にして2度にわたる税金投入によって救済した。その後、銀行は預金者に手数料引き上げ、ゼロ金利と経営合理化を名分にしたサービス低下を押しつけながら、経営者には高額退職金、社員は高い給料というお手盛り経営を続けてきた。法的清算ならとても許されない。そんな銀行に3回目の税金投入をして救済するなど何の意義も意味もない。
本誌はあるメガバンクが作成した融資先企業の≪破綻確率リスト≫を入手した。いいかえると、いかに銀行が放漫経営をしてきたかを告白している。これほど如実に銀行融資のデタラメぶりを示した資料はかつてなかった。
具体的な≪倒産確率≫の数字には目を疑う。
まず、問題3業種といわれる不動産、建設、流通だ。この銀行ではスーパーや百貨店などの流通業を「卸売・小売業・飲食店」として分類している。
不動産業 4・8%
建設業 4・2%
卸売・小売業・飲食店 3・6%
倒産確率とは、その業種に対する融資が1年間にどのくらい焦げついたかの割合を示している。不動産業の倒産確率4・8%とは、例えば100社に同じ金額を融資していれば、そのうち毎年5社が倒産していることに相当する。
3業種以外の倒産確率はこう続く。
サービス業 2・6%
製造業 2・0%
金融・保険業 1・5%
電器・ガス・熱供給・水道業 0・3%
運輸・通信業 0・1%
地方公共団体 0・0%
その他 2・3%
ちなみに消費者金融最大手の武富士の場合、昨年度の融資焦げつき率は実質2・4%だ。貸し出し金利は平均約24%と銀行より当然高い。
メガバンクの不動産融資の倒産確率4・8%とは、大銀行がいかにずさんな融資を続けてきたかを証明している。
別項の≪金融庁内部告発資料≫――大手銀行がいかに不良債権を隠しているかという資料と、まさに表裏の関係にある。
(2)政府の金融破綻回避方針の矛盾
金融庁はすでに政府の金融危機対応勘定15兆円を2月にも大手銀行に軒並みつぎ込む方針とみられているが、国民の税金を差し出す政治家と、受け取る銀行の経営者のいずれも責任を棚上げされているのだから、この先、何回やっても金融再生などできるはずがない。いずれ大手銀行が破綻して、20兆円以上が泡と消えるかもしれない。
昨年暮れに石川銀行が破綻した際にも、柳沢氏と金融庁の無責任体質を露呈した。緊急会見した柳沢氏は、「金融危機を絶対に起こさない決意だ」――といって胸を張ったが、石川銀行がいつから債務超過に陥り、実質破綻状態にあったのかと質問されて黙り込んだ。かわって高木祥吉・金融庁監督局長が、一昨年の9月中間決算時点ですでに債務超過だったことを認めた。柳沢氏と金融庁は、1年以上も国民にそのことをひた隠しにして、石川銀行の粉飾決算を黙認していた。
同銀行の内部証言だ。
「金融庁は、石川銀行の経営内容をつぶさに知った上で、存続を認めてきた。オーナー経営者だった高木茂前頭取が昨年勇退したのも、金融庁との折衝で経営存続の条件とされたからだった。それなのに年末になって突然、みせしめのようにつぶした」
要するにいよいよとなるまで問題先送りを続けてきただけではないか。
その柳沢氏がいくら「金融危機を絶対に起こさない」といってもまるで説得力がない。否、信用できない。
(3)原則なき税金投入は経済破壊
小泉首相と柳沢氏は、対米公約を口実に不良債権処理を金融政策の中心に据えながらも、その実、大銀行救済しか眼中にない。そうした金融行政のやり方そのものが日本経済を押しつぶそうとしていることに気がついていない。
日本研究の第一人者で、著名なジャーナリストでもあるアムステルダム大学教授(政治経済制度比較論)のカレル・ウォルフレン氏は、本誌のインタビューでこう語っている(詳細は別掲記事参照)。
「日本経済は、いわば不良債権の上に奇跡の成功を遂げた。アメリカが不良債権、不良債権というのに影響されて、何でも処理してしまおうというのは間違いだ。日本の専門家もアメリカ政府も日本経済の本質を理解していない」
日本の銀行は従来、たとえ赤字会社でも成長性や信用があると判断すれば事業資金を融資し、膨大な中小企業に支えられた日本経済の牽引車となってきた。ところが、金融庁は銀行に大企業も中小企業も同じ基準で融資審査をさせ、赤字の中小企業は不良債権に認定されて融資を次々に打ち切られている。そうしたマニュアル行政が日本経済の活力を奪い、不況を長期化させていることをウォルフレン教授は鋭く指摘している。
京都大学の吉田和男教授(金融論)は、原理原則を欠いた税金投入は、かえって不況を加速させると分析する。
「ここまで金融危機が深刻になれば、公的資金の再投入が必要なことは間違いない。しかし、その方法と規模は慎重に決めなければならない。これまで政府は大銀行中心に公的資金を投入し、その根拠を『経済全体を支えるマネー・センターバンクだから』と説明してきた。ところが、今度は地方銀行にも入れるという。“余っているから地方にも”という程度の認識なら、地方経済は回復するどころか逆効果になりかねない。公的資金を受けた銀行は、それを原資にして不良債権処理をますます加速させるだろうが、それはすなわち、地域の中小企業を軒並みつぶすことにつながる。場当たり的に税金をバラ撒くのではなく、きちんとした金融システムのビジョンを描いた上で、必要な税金を使うというのが筋でしょう。それを決断できるのは、金融庁でも財政諮問会議でもなく小泉首相しかいないが、首相自身がどこまでそう考えているかは大いに疑問がある」
そもそも小泉首相は金融再生の骨格はおろか、日本経済が進むべきグランドデザインさえ国民に一度も提示していない。