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(1)大型企業倒産秒読み〜柳沢金融相と森金融庁長官が急遽外遊を中止
アセアン外遊から帰国する小泉純一郎首相を待ち受ける魔の風景――。小泉首相は1月15日に帰国し、21日に召集される通常国会に臨む。その一方で、実は、首相官邸と金融庁では大手企業複数の倒産による≪非常事態≫を想定し、緊張していた。いまや大銀行といえども当事者能力を失い、どの企業への融資を打ち切り、あるいは債権放棄をするかはすべて金融庁がコントロールしている。いわば政治と行政が企業の生殺与奪の権を握る≪統制経済≫の下に置かれているといっていい。小泉首相―柳沢伯夫金融相―森昭治金融庁長官のラインが“あの企業はつぶす”――と決定すれば、銀行はそれに従うしかないのである。
トップ3人の胸三寸で企業の生死が決まるなら、それによって起こる非常事態とは、経済政策がますます政権運営の都合に利用される異常を生む。国民にとって、それこそが≪魔の風景≫ではないか。
金融庁は、柳沢大臣と森長官が外遊を急遽とりやめ、ひそかに非常事態に備える態勢を敷いた。柳沢氏は小泉首相のアセアン歴訪と同時期に中国訪問を予定し、森長官もそれと前後して香港と国際決済銀行があるスイスのバーゼルでの国際会議に出席する予定だった。それを直前になって2人そろってキャンセルしたが、外遊の計画があったことも、とりやめたことも一切秘密にされている。
金融庁に確認すると、渋々認めて理由をこう説明した。
「相手国の日程調整がつかなかったから見送りになったにすぎない」(広報室)
しかし、柳沢氏はすでに昨年のうちに自分の外遊に備えて大臣臨時代理を置く手続きを内々にとっており、出発間際に中国側との日程調整がつかなくなったというのはいかにも苦しい言い訳だ。2人は、大型倒産がいよいよ近づいてきたために国をあけることができなくなったとみる方が自然だろう。
そうした金融庁の慌ただしい動きと軌を一にして、大手銀行の間では、2つの有力企業の危機説が流れ始めた。大手流通A社と準大手ゼネコンB社で、いずれも東証1部上場企業である。
流通A社は昨年末にメーンバンクから債権放棄とひきかえに黒字店舗だけを残して会社を分割し、赤字店舗は売却か閉店するという事実上の解体案を突きつけられ、A社首脳は「年末商戦の結果を待ってほしい」と年明けまで結論を保留していたが、そのタイムリミットが近づいている。準大手ゼネコンB社が破綻した場合は大株主の有力地方銀行を直撃し、さらに融資先へと危機の輪が拡がり、あの北海道拓殖銀行破綻の時のように、地域経済が大混乱に陥りかねない。そのため金融庁はメーンバンクに大株主である地銀の債権を肩がわりさせ、地銀破綻を回避するという綱渡りの処理案づくりに追われている。
小泉首相は御用納めの昨年12月28日、首相官邸に自民党三役を集め、銀行救済のために税金を再投入するという基本方針を固めた。そして1月4日の年頭会見。
「金融危機を起こさないため大胆かつ柔軟な方策をとる。競争にとり残された企業が淘汰されるのはやむを得ない」
小泉首相にとって大型倒産こそ税金投入への突破口に他ならず、柳沢氏と森長官の突然の外遊中止も、≪Xデー≫の次に予定されている大銀行への税金投入の準備を急ぐことに主眼がおかれている可能性が濃い。
(2)金融庁特別プロジェクトチームの極秘任務
年明け早々、金融庁内に柳沢大臣の特命プロジェクトチームが編成された。
任務は大銀行の不良債権の実態調査である。とはいえ、同庁は検査局が銀行に2年越しの特別検査を行なっているさなかであり、わざわざ別組織に調査させる必要はないはずだ。
実は、検査局の検査では銀行側との交渉で手加減された不良債権額が算出されるのに対して、特命チームに対する指示は、<大銀行がどのくらいの不良債権を隠しているかを調査し、国民にわかるような資料にまとめよ>――というものだった。
これまで金融庁は銀行と結んで不良債権隠しに走り、2年前にIMF(国際通貨基金)が邦銀の不良債権額は公表額の2倍以上の150兆円に達すると分析したリポートを公表すると、「全く根拠のない数字だ」と真っ向から反論した。それがようやく国民に本当の不良債権額を情報公開する気になったのかと思うと、そうではなかった。
動機がいかにも不純なのだ。
柳沢氏と森長官はこれまで「銀行に税金再投入はしない」と繰り返してきたが、小泉首相が銀行救済のために再投入の方針を固めると、自分たちの責任回避に腐心し始めた。
特命チームの調査も、銀行の不良債権隠しをクローズアップさせて、“金融庁も騙されていた”と銀行悪玉論を煽って税金投入を正当化するのが目的だ。
(3)大銀行の不良債権隠しデータ
そのチームが作成した資料を入手した。数字ばかりが並ぶいくつかの表がまとめられたものだが、どうせなら不良債権額を正確に算定すればいいものを、税金投入の必要性を強調しようという数字の誤魔化しばかりが目立つ。
露骨にこれまでの主張をねじ曲げているのが、今年度に発生した新たな不良債権の額を各行ごとに比較した表だ。新規発生分の不良債権額が、今年度はじめの不良債権総額に比べて何%あるかを算出している。
それによれば、4大メガバンクはそれぞれ、「みずほ49・1%」「三菱東京14・3%」「UFJ31・0%」「三井住友15・1%」とされている。
プロジェクトに関与する金融庁中堅幹部が、この表に隠された意図をこう解説する。
「新しく発生している不良債権に、メガバンク間で大きな差があることを強調するために作った表だ。不況により融資先からの資金回収ができなくなっている事情はどこも同じはずで、大きな差が出るのはおかしい。三菱東京や三井住友は、本当はもっと不良債権が発生しているのに、それを隠して処理を先送りしているのではないか、という疑問を裏付ける資料となる」
別の資料では、過去10年の各行の不良債権処理額を年次ごとと累計で集計している。この意味はこうなる。
「各行とも96年に大きく減り、この時点でいったん≪バブルの後遺症≫からは脱したことがわかる。その後、また処理額が増えているのは≪平成不況≫の影響であり、バブルの責任論とは切り離して考えられる。また、累計額を見ると、大手行だけで10年間に約60兆円もの不良債権処理をしている。そのカネは債権放棄などの形で産業界に還元されたと見れば、そこまでやった銀行に数兆円の税金を投入することにも理解が得られるはずだ」(前出の幹部)
失われた60兆円は預金者の金だ。
語るに落ちるのは、各行の自己資本の分析表だ。
大手行の合計で見ると、自己資本は総額で19兆円あまりあるが、内訳を見ると、公的資金による資本増強分が約6兆円、さらに、不良債権処理に伴う優遇税制によって得られる分が7兆4000億円あまりあると指摘されている。合わせて、全体の7割近くが税金により水増しされたものだというわけだ。
幹部の解説には笑わされる。
「つまり、それくらい大手銀行の自己資本は余裕がないということ。もし、税金救済しなければ、どの大手行もあっという間に経営危機に陥ることが一目でわかる。だからこそ、日本の金融を守るためには税金投入が必要だという論理が成り立つ」
税金がなければ助からないから投入やむなしというのは、国民の預金や将来への不安を人質に取った恫喝というしかないが、これまで繰り返してきた≪銀行健全宣言≫とのあまりの落差に言葉を失う。
金融庁は“信用できない役所”の烙印を押されても仕方ない。