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大手銀行について、2001年9月中間決算から、いわゆる“不況業種”といわれる「建設・流通・不動産」への貸し出しと不良債権残高について分析した。ほぼすべての銀行で、不良債権問題とはイコール、この3業種の問題に集約されていることがはっきりと分かる。巨額の負債を抱えている企業も、この3業種に多いことは事実であり、デフレが続き景気回復への先行きも見えないなか、破綻が起きれば、また銀行の体力を弱めることになる。
銀行問題取材班
●問題3業種の不良債権11兆1349億円
結果は下表のようになったが、この3業種に対し、大手行の貸し出しは総計84兆6439億円あり、その13%に当たる11兆1349億円が不良債権に分類されている。
3業種の中では、「建設」が貸出金の中で最も不良債権化しており、全貸出金11兆4625億円の中の不良債権額2兆1965億円は19%に当たる。次いで「不動産」は17%が不良債権化。逆に「流通」は7・3%だった。
また3業種に対する「シェア」という観点から見ると、貸出金は全体の32%となっているものの、不良債権でみれば、約2倍の60%に跳ね上がる。銀行の不良債権問題とは、いかにこの3業種の問題に集約されているのかを示している。
なかでも、東洋信託と住友信託はシェアが70%を超えている。これは、不動産業に対するシェアがともに半分を超える57%に達していることが大きな原因となっている。一方でシェアが低いのは、富士、三井住友、三和、第一勧銀などだった。
もちろん、この3業種に対する不良債権シェアが高いからといって、すぐさま銀行の健全性の問題に結びつくわけではない。例えば、不良債権が貸出金全体のなかでどれくらいの割合を占めるのかといった「貸出金比率」なども見て、総合的に判断すべきだろう。
ただ、近年相次いでいる大型倒産、さらには株価も低迷している企業は、この3業種に多く見られることは事実である。特に大型倒産は、銀行の体力を急速に奪うだけに、警戒が必要になる。
●個別分析1 みずほホールディングス〜株価低迷企業を多く抱える憂鬱
4月に完全統合・分離して、大企業や機関投資家向けの「みずほコーポレート銀行」と、個人・中小企業向けの「みずほ銀行」に。総資産160兆円の巨大金融グループになる。
メーンバンクとなっている企業に、建設・流通・不動産の、いわゆる「問題3業種」や、株価が低迷している企業は多い。
ゼネコンでは、佐藤工業(第一勧銀)、ハザマ(一勧)、飛島建設(富士)など債権放棄を受けた企業が並ぶ。流通ではダイエーに対して、富士が4行並行メーンの一つ。そのほかにも西友(一勧)、商社では、丸紅(富士)、日商岩井(一勧)を抱える。
佐藤工業に対しては、一勧と北陸銀行ともに、ある程度引き当てを積んだようで、万が一のときの備えはできたという観測もある。
●経営陣はガラリと入れ替わることになる。
2001年11月、統合3行の頭取であった杉田力之・第一勧銀頭取(みずほホールディングス社長)、山本恵朗・富士銀頭取、西村正雄・興銀頭取ら9人のみずほホールディングス取締役全員が退任し、富士銀行の前田晃伸副頭取がホールディングス社長に就任する人事を発表した。
02年3月期に2兆円の不良債権処理を行う代わりに、大幅な赤字決算を余儀なくされた、いわば責任を取る形での”トップ総退陣”といえる。ただ、前田氏に巨大グループを統括していける実力があるかどうかは未知数だ。
●さらなる分割・再編
みずほの場合、不良債権処理もさることながら、3行統合のビジネスモデルがうまくいくかどうかを疑問視する声も多い。06年3月末までに行員7400人を削減(1999年3月末比)する計画をさらに上積みして、1万人規模を削減する計画のようだが、逆に、そんなに辞めさせると言って大丈夫なのか。行員の士気を失わせるだけだし、優秀な行員まで辞めていったら、銀行は成り立たない。
みずほコーポレート銀行は残っても、みずほ銀行の方は、いずれは再分割して再編、または外資への売却――といった見方も絶えない。
●個別分析2 三井住友銀行〜熊谷組とは一心同体の綱渡り
一連の金融再編の中で唯一、持ち株会社ではなく合併による統合を図った銀行。「持ち株会社より合併の方がスピードが出る」という西川善文頭取の決断は、これまでのところ当たっている。旧住友銀行が主導権を握り、旧さくら銀行を、いわばねじふせる形で、経営を軌道に乗せる作業を進めている。
いわゆる問題企業への貸し出しという点では、旧住友系ではダイエー、そしてゼネコン関係では熊谷組、住友建設などに多くの貸し出しがある。旧三井系ではフジタ、三井建設、日本信販などを抱えている。
債権放棄を受けたゼネコンで、メーンになっているゼネコンは、熊谷組、フジタ、三井建設の3社あり、特に熊谷組への融資残高は3612億円と巨額だが、熊谷組は旧住友系が「住友の沽券にかけて潰さないだろう」と言われる。確かに株価は21円(1月7日終値)と低迷しているものの、熊谷組と旧住友は一心同体の関係で、最後まで面倒を見るのではないか。
●グループ戦略としては、証券戦略がいま一つ不明確。
大和証券グループとは、旧住友銀行とのつながりで関係が深いのだから、ここをハッキリさせて、三井住友としての証券戦略を早く明確にすべき。さらにグループ内の問題としては、中央三井信託銀行と三井生命を、これからどうしていくのかという問題が残っている。
●個別分析3 三菱東京フィナンシャル・グループ〜すべてに慎重姿勢の諸刃の剣
財務体質は大手行中でトップと言える。グループ内の旧三菱信託銀行、日本信託銀行、東京信託銀行が昨年10月に合併して、新しい三菱信託銀行となったが、グループの核となる東京三菱銀行は変わりなく、本格的な日本の金融システム危機の混乱も予測される中、統合や人事の軋轢で悩まされることはない。
大口の貸出先は、東京三菱が日商岩井、オリエントコーポレーション、日本信販など、三菱信託がハザマなどを抱えるが、それ以外には、目立った大口の”問題貸出先”は見当たらない。他行に比べて、経営の根幹を揺るがすような”爆弾”は抱えていない。
これはひとえに、バブル期も慎重だった融資姿勢のおかげ。ただ、バブル期に大きな傷を負わなかったのは、それだけ積極的な融資をしてこなかったということ。逆に言えば、得べかりし利益も得なかったということで、同じ手法が、今後も通用するとは限らない。金融業の基本は、リスクを負わなければ、リターンも小さい――である。
現在は確かに他行に比べて不良債権処理の重荷は負っていないが、とかく三菱グループ内だけで小さくまとまりがちな体質で、将来的に収益力の高い銀行になれるかどうかには疑問符がつく。
●個別分析4 UFJホールディングス〜のしかかるダイエーの重圧
1月15日に、三和銀行と東海銀行が合併してUFJ銀行、東洋信託銀行はUFJ信託銀行に移行する。
やはり大きな問題はダイエー。並行メーン4行のうち、三和と東海が一緒になることで、連結企業も含む実質的な融資残高は8000億円に達し、名実ともにダイエー問題は、イコールUFJの問題となったと言えるだろう。
そのほかにも、特に不動産・デベロッパー関連への貸し出しは多い。藤和不動産、大京などがあげられる。ゼネコンではフジタ、商社では日商岩井、ニチメン、トーメンなど、どちらかというと業界での下位企業に貸し出しが多い。
みずほと並んで、新体制の銀行発足前に人事でも、ひと波乱あった。
UFJ銀行トップに内定していた室町鐘緒・三和銀頭取と、UFJ信託銀行トップに内定していた横須賀俊六・東洋信託社長が、2002年3月期の大幅赤字決算見通しや普通株の配当を見送る方針であることの責任を取って退任する。室町氏は、4月に就任予定だった全国銀行協会の会長も辞退する。
●小笠原社長の責任は……
代わって、UFJ銀行初代頭取には寺西正司・三和銀専務、UFJ信託銀行社長には土居安邦・東洋信託専務執行役員が就くことになった。小笠原日出男・UFJホールディングス社長(東海銀頭取)は持ち株会社の社長を当面続投するが、やはり遠からず責任を取らされることになるのではないか。
UFJ全体としては、証券、生損保も取り込み、金融グループとしての体制は整った。しかし、5大グループの中で、何か際立った特徴があるわけではない。
02年3月期には、みずほと並んで2兆円の巨額な不良債権処理を行う。3月期は越えても、引き続き不良債権処理原資の確保には苦労することになるかもしれない。
●個別分析5 大和・あさひ銀行〜弱者連合の見方払拭できるか
事実上のあさひ銀行救済のため統合はしてみたものの、しょせんは”弱者連合”のイメージはぬぐえていない。
いわゆる問題融資先企業は、長谷工コーポレーション、昭和リース、大京などを抱える。ただ、バブル時の投資もさることながら、長引く不況によって、中小企業の不況型倒産が引き続き高水準。これによる処理に負担がかかっている。
青木建設が2001年末に破綻した後も、あさひ銀行の株価はさほど戻っていないことは、まだまだ処理すべき問題が多いことを物語っている。
ゴールドマン・サックスとの不良債権買い取り会社設立は、それほど期待できるものではなさそうだ。処理会社に移管されるものは、ゴルフ場など不動産担保がついているものだけだろう。この数年で、処分できる不動産物件はほとんど処分されているため、残っているのは、すでに開業しているゴルフ場程度しかないのではないか。
近畿大阪銀行、奈良銀行も含む現在の持ち株会社は、ただ集まっただけという感じをいなめない。いずれまた再編劇にまきこまれる可能性は高い。