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経済産業省の成田公明・調査統計部長はこのほど、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、中国への生産拠点移転に伴う産業の空洞化の背景や、日本が取るべき対応について見解を明らかにした。成田氏は、中国での生産加速は、中国国内の旺盛な需要に支えられている面があり、必ずしも日本との賃金格差だけが要因ではないと指摘。また空洞化は為替相場の動きで打開できる問題ではなく、海外の企業や知的人材を引き付けるインフラ整備こそが、解決への緊急の課題と強調する。
日本企業は国際競争力を強化しようと、日本の20分の1とも言われる安い賃金と良質な労働力を求めて、中国に相次いで進出している。しかし成田氏は、中国への進出は、低賃金を利用した現地生産品を日本に逆輸入することが主目的ではなく、需要がある地域で生産し販売するという企業の常識に沿った行動だと説明。現に自動車メーカーの海外現地生産は「空洞化とは騒がれない」と語る。
現在進行している円安で中国進出に歯止めがかかるかと言えば「そういうレベルの話ではない」と指摘、「極端に言えば、海外直接投資を禁止しなければ無理」と述べ、中国進出の流れを止めることは事実上、不可能との見解を示した。
4割が中国での内需目的
同省が2001年末に発表した2001年7−9月期の日本企業の海外現地法人動向調査によると、中国の現地法人からの日本向け輸出は売上高全体の約3割にとどまっているのに対し、中国国内での販売は約4割を占めている。これは、東南アジア諸国連合(ASEAN)に進出している日本企業の域内販売の割合 35%程度を上回っており、中国進出企業には国内市場が重要なターゲットになっていることが分かる。
ちなみに米国進出日本企業は9割以上を現地で販売している。ただ、売上高をみると、北米では四半期単位で10兆円を超えているのに対し、中国では1兆円にも達していない。今後、中国への投資が増加する余地が残っていると言える。
一方、中国現地法人からの日本以外の第3国向け輸出は売上高の3割を占めているが、成田氏は日本の現地法人が中国で競争力をつけて各国に輸出していると指摘。「空洞化というより、こうしたことをしなければ、(部品などの)対中輸出もなくなってしまうかもしれない」と警告する。
また、日{企業の中国への進出は、今のところ中小企業、家電、アパレルなどが中心であるのに対し、米国はハイテク機器、ヨーロッパは鉄道などの分野でも現地生産を進めており、欧米諸国ほどは空洞化は進んでいないと指摘する。
政府と企業の利害不一致
成田氏は、すでに空洞化が進んでいる米国のように、「海外で稼いだ収入を国内にしっかり還元すれば、問題はないのではないか」と述べ、日本も貿易収支よりも、国際収支を重視すべきだとの考えを示した。また、国内総生産(GDP)ベースでみると空洞化は国内経済にとって好ましくないが、国民総生産(GNP)で見れば、海外での企業が稼いだ所得も含まれると説明。企業が国内だけで活動する時代には、政府と政策上の利害が一致していたが、企業活動のグローバルな展開が進み、両者の利害にずれが生じていると指摘する。
国内企業の海外進出に伴い、今後、国内で付加価値の高い製品を開発・生産し、同時にサービス業を育成して雇用を吸収していくことが重要である点では、企業も政府も認識が一致している。ただ、そうした大規模な産業雇用調整をどのように行うべきかについては、道筋が見えないのが現状だ。
魅力ある都市づくりと高コスト是正を
この点について、成田氏は「バイオなど先端技術で高度な研究開発をして生産段階まで行けばよいが、商業ベースで販売し、雇用拡大に至るまではリードタイムがかかる」とみる。そのうえで現在、空洞化の影響を深刻に受けているのは地方経済だと指摘。特に電気部品の生産高が非常に大きかった秋田、山形両県など東北地方は、「情報技術(IT)不況」と「公共事業削減」の2重の意味で直撃を受けているとしている。
このため成田氏は、まず企業や知的人材を海外から呼び寄せることが空洞化穴埋めの近道だと指摘。日本の産業構造を高度化するために、「東京は海外から、地方は東京から、企業や知的人材を引き付ける努力が必要」と述べ、「中国の上海などのように魅力ある都市づくりが不可欠」と強調した。そのためには、物流コストなど高コスト構造を是正するための一段と踏み込んだ規制緩和が必要と訴えている。