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【経済問題の焦点】
●ペイオフ、今さら法律変更は難しい
4月1日のペイオフ実施を前に金融不安は起こるのかが政界でも大きな関心を呼んでいる。同問題は今や経済問題にとどまらず、政治問題であり、社会問題ですらある。しかしペイオフが「先進国で解禁していないのは日本だけ」「これ以上の先送りは政策のクレデビリティ(信頼性)の問題」という政府の説明を待つまでもなく、現実問題として再延期は「今さら法律(預金保険法)の変更は難しい」(麻生太郎自民党政調会長)のが実情。従って「決めたら断固やる。長々と議論することが国民を不安にする」という出井伸之ソニー会長の言葉は至言である。国会議員や識者が今さら同問題についてあれこれ言うことは国民を不安に陥れ、混乱させるだけだ。
●政府は国民の不安除去を図れ
そこで政府が国民の不安解消のため、まず取り組むべきは第一に、ペイオフの内容を今一度国民によく説明し、仮に銀行が破たんしても定期預金などは元本1000万円とその利息の払戻が保証され、普通預金は今回は全額保護される、この制度を導入している米国などでもほとんど適用されるような事態が起きていない―を理解してもらう。第二に、自治体の預け替えを回避するため、公金預金を保護するなどのセーフティネット構築を急ぐこと。第三に、銀行株下落をきっかけに預金が流出、資金難から経営危機に陥らないよう、担保なしでも資金を貸す日銀特別融資の実施。金融危機と判断すれば直ちに公的資金を投入することを国民に周知する―などである。
●荒波を乗り切れる最後のチャンス
金融不安については、確かに昨年だけで37の信用組合と9信用金庫が破たん。年末には第2地銀の石川銀行が破たんし、福島銀行と中部銀行には年末年始に早期是正措置が発動された。また金融機関ではないが今月13日には東証1部上場の殖産住宅が民事再生法の適用を申請、受理され、事実上倒産した。
こうしてみると“確実に”不安が近付いているようにもみえる。しかし、それはバブルが弾けて既に10年以上が経過するのに、なまじ日本経済に体力があったため、この間、対症療法を重ね、不良債権処理という根本問題を先送りしてきたことが原因だ。
この10年、政府、特に歴代首相は財政・金融による景気対策を繰り返し、不良債権処理を延ばしてきたが、国も企業もそろそろ体力の限界に近付いてきた。この期に及んでまだ「時期が悪過ぎる」との論もある程度幅を効かせているが、ここで半年1年延ばせば、本当に手後れになる恐れがある。もうここまできたら少々の荒波であっても乗り切るしかないし、今なら乗り切れる。少なくともトップリーダーの小泉純一郎首相は異例の高支持率を背景にその覚悟を決めており、この際、首相の方針を信頼する以外に選択肢はないように思われる。
●日本の金融機関は「社会主義」だった
専門家はとうに気付いているはずだが、日本の金融機関が抱える不良債権の総額は既にGDPの7.8%にも達している。昭和初年の恐慌時でもわずか2.5%しかなかったのにである。小泉首相は今こそ「失われた10年」に決別し、「日本経済再生」に乗り出そうとしている。その具体的手段は(1)金融庁による大手銀行への特別検査の徹底(2)金融機関の効率化・リストラの推進(3)新たな再編の誘導―などである。
日本の金融機関は従来「護送船団方式」と言われてきたが、これは言い換えれば、「日本型社会主義」ということである。ゴルバチョフがソ連大統領時代に「世界で最も社会主義がうまくいっている国は日本?」と述べたとされるが、つまり「戦時統制経済」がごく最近まで日本に生き残っていたといえよう。
●レーガン、サッチャー税制で「日本経済再生」を
また税収面でも、単年度予算編成に合わせた税制改革は既に限界にきており、抜本的な税制改革が必要不可欠なことは言うまでもない。その際、政府、自民党両税制調査会が取り組むべき指針は「やる気のある、頑張った者が報われる税制」である。従来の税制はこれまた「日本型社会主義」が色濃く残っていた。「金持ち」からできるだけ多く取り、「貧乏人」からは取らない・・・まさに社会主義である。その結果、課税最低限は先進国中ダントツに高くなってしまった。このため、やる気のある者はあまりの高税率に働く意欲をなくし、逆に税金など払わない者が権利だけを主張するという活力のない典型的な先進国病に陥ってしまった。早くレーガン、サッチャー両税制を見本に「頑張った者が報われる」税制を採用し、米英両国と同じように遅まきながら経済再生を達成することが期待される。
【政局の焦点】
●道義的責任免れない加藤氏
加藤紘一自民党元幹事長の「右腕」とも「金庫番」とも言われる秘書の佐藤三郎氏が脱税の疑いで東京国税局の強制調査を受けた問題はその後、同氏が山形県内の建設会社などから多額の公共事業仲介料を受け取っていたことなども次々と明るみに出た。東京地検特捜部も同氏から事情聴取を開始しており、所得税法違反容疑での立件は不可避とみられる。加藤氏本人は「加藤事務所とは無関係」を繰り返しているが、仮にも「金庫番」と称される人物が日頃行ってきた行動について「全く知らない」では通らないだろう。もちろん疑惑が代議士本人までいくかどうか現段階では全く不明だが、もし無関係だったとしても道義的責任を免れることは恐らく難しいだろう。
加藤氏と言えば、2000年11月のいわゆる「加藤の乱」で政局を大きく読み違え、それまでの「首相候補」の座から滑り落ちた。その後、地味な全国行脚を続け、復活の機会をうかがっていただけに、誠に残念と言わざるを得ない。能力的には小泉首相を上回ると、高く評価する声もあったが、とかくカネをめぐる悪い噂が絶えない佐藤氏を切れとの友人・知己の進言を無視してきた責任はすべて加藤氏本人にある。
●政権が遠のくばかりの民主党
民主党が19日の党大会を前にごたごたが続いている。直接のきっかけは昨年のテロ対策特別措置法をめぐる鳩山由紀夫代表と横路孝弘前副代表の確執。要するに元々自民党出身で保守派の鳩山氏と元社会党のプリンスだった横路氏の安全保障をめぐる対立なのだが、大橋巨泉氏ら昨年の参院選で初当選した有力新人らも横路氏についたため、火花がさらに大きくなった。同党内は既に、鳩山氏を支持する保守系の「政権戦略研究会」(59人)、旧民社党系の「政策研究フォーラム21世紀」(約50人)、横路氏ら旧社会党系の「新政局懇談会」(34人)、旧さきがけ系の「高朋会」(約30人)など、元の所属政党別に派閥が存在する。
しかも鳩山氏と横路氏の対立だけでなく、9月の代表選で復帰を目論む菅直人幹事長や若手の一部が推す岡田克也政調会長なども複雑に絡むだけに、党が四分五裂した新進党末期に酷似しているとの見方もある。こうした状況の中でカリスマ性に欠ける鳩山氏が依然として高支持率を維持している小泉首相にどう立ち向かうのか、「敵失で政権が遠のくばかり」との厳しい評価も聞こえてくる。
(政治アナリスト 北 光一)