投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 12 月 06 日 12:03:34:
「債権者として、関われる部分とそうできない部分がある。自ずと限界がある」――。整理回収機構(以下RCC)の鬼追社長は、ある日マスコミを前に、企業再生業務についてこう言ってのけた事があった。発足したばかりのRCCの再生部門は実働部隊が数十人いるかどうかの小さな所帯。どれだけRCCに持ちこまれるか分からないので、というが、これでは、不良債権処理の切り札と言われているのにお寒い限りだ。これまで実績があると強調してきた企業再生の事例を見ると、実はどれも小さな企業ばかりだ。
もし大手銀行が本気でRCCを活用し始めたとしたら、企業の再建ビジネスをおいしいと実感した弁護士が、内職程度という気持ちで事に当たっても、とうてい無理なお話といえる。では、どうやってRCCはこの業務を立ち上げようとしているのか。自らの能力の限界を知っている鬼追社長らは、外資と国内の大手金融グループの手を借りようとしている。しかし、このウラには国民の税金を使って、国内の大手銀行や外資、さらにはRCCを養うためのカラクリが仕組まれている。
●RCCに企業再生は可能か〜そのカラクリ
RCCが金融機関から買い取る資金は、預金保険機構がすべて手当てする。政府保証のついた借り入れだから、直に国民負担ではないと主張する関係者がいるかもしれないが、損失が出ればすぐに国民の税金で穴埋めすることを考えれば、形を変えただけの税金投入なのだ。しかし、この不良債権を売る大手銀行側は、実はRCCの指南役なのである。それに外資の大手証券会社と提携しようとしている。RCCは企業の再建を図るため、日本政策投資銀行と投資家が出資してファンドを作る事になるが、その後の再建のスキームを練るなど中心的な役割を果たすのは、不良債権の売り手の大手銀行であり、出資者となる外資なのだ。カンのいい方なら、もうお分かりだろう。ある程度の損は出るだろうが、国費で不良債権を買い取ってもらった大手銀行は、RCCの買い取り価格をある程度推測できる立場にある。これだけでも問題ではないか。談合とは言わないまでもRCCの内部事情を知り得る所に銀行の関係者がいるのだ。
●不良債権がビジネスの新しい種に?
それだけではない。自らが再生の絵を書くことが出来れば、多額の手数料を得られる。また、債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)など証券化の手法を使えば、その受け手として配当を得る事もできるのだ。つまり、不良債権がビジネスの種に早変わりする。また、外資も同様だ。自ら、その企業を破たんに追い込めば、ただただ損失が膨らむだけの不良債権を、企業再生という名目でRCCに売却すれば、損をしたように見えて、実は、その損失を可能な限り小さくできるカラクリが潜んでいるのだ。それも、国民の税金を使って、である。これはRCCの買い取り価格が低すぎて国民負担が出る、と言う懸念以前に、このスキーム自体が持つ宿命とでも言えようか。国民負担によってRCCを存続させるだけでなく、大手銀行の負担を軽減し、外資を肥やす事にならないか。そしてそれ以前に住専機構以来、不良債権の回収で懐を肥やしてきた“弁護士たち”をまた太らせ、破たん金融機関の行員の雇用を再び確保する事になったのだ。ほとんど自分の頭も手も足も使わずに。
●大手銀行も参入・・・RCCの機能拡充の行方
あさひ銀行<8322>のほか、三和銀行・東海銀行・東洋信託銀行が統合したUFJホールディングス<8307>が、企業の再建ビジネスに本腰を入れ始めた。みずほフィナンシャルグループ(みずほホールディングス)<8305>も、関係会社を動員して、参入を狙っている。自らの吐き出す不良債権が金に変わるのだから、そのおいしさを黙って指をくわえて見ていることもないわけであろう。それも買い取り価格が時価とは言いつつ、国民の負担を減らすと言う前提で価格設定しなければならないRCCに買い取りを期待する所も少なかろう。これだけでも大手銀行がどこまでRCCを活用するかが疑問になるはずである。
しかし、ある人は「大手銀行は間違い無くRCCを活用する」という人もいる。政治家とのつながりが深いからという理由で延命されてきたゼネコンなどとの縁を断ち切るのに、RCCを使うというのだ、と説明する。つまり大手銀行側が期待するのは再建ではなく、“回収”なのだ。
公的資金を投入しても、峠さえまだ見えない不良債権問題。これを解決するための切り札になるはずだった“RCCの機能拡充”は高い買い取り価格に伴う2次ロスによって国民負担の発生ばかりでなく、スキーム自体が、国民負担を増やすものになっている事を国は納税者にどう説明するのか。今のところ具体的で分かりやすい説明は一切ない。それがない限り、政府は国民を裏切り続ける事になる。