投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 12 月 04 日 20:18:32:
日銀が今年3月から導入した「ロンバート型」貸出制度が、株式市場関係者の熱い視線を集めている。同制度は、日銀が貸出先を決めていた従来の仕組みではなく、個別金融機関の申し出により短期資金を融通する新たな仕組みだ。こうした金融機関が短いタームの資金をやり取りするのが短期金融市場だが、超低金利政策の長期化とともに、株式市場ではほとんど注意を払う向きはなかった。なぜ短金市場、特にロンバート貸出への関心が高まったのか―。背景には、信用リスク懸念の高まりとともに、個別金融機関の資金繰りにがぜん注目が集まっていることがある。
●「資金繰り破たん」はない
日銀が同貸出制度を導入して以降、金融市場では1997年、98年のような金融機関の破たんは事実上なくなったとの安堵感が広がった。第1次金融危機の際は、格付け会社が相次いで弱体金融機関の格下げに動き、短金市場内で貸し倒れを恐れて貸し渋りが顕在化。北海道拓殖銀行などが相次いで資金繰り破たんに追い込まれたのはこのためだ。
こうした記憶が金融市場関係者の脳裏に焼きついていたため、何らかの要因で資金繰り難に陥った金融機関が日銀に助けを自ら申し出ることができる新貸出の導入は「資金繰り破たんは今後あり得ない形態となった」(銀行系証券)と受け止められた訳だ。
●深刻な「担保不足」
ところが11月中旬から、「年越え、期末越え資金の手当てに一部銀行が相当苦労している」(大手都銀)と、短金市場の動きが伝わり、株式市場の早耳筋たちがにわかに動揺し始めた。
実際、こうしたうわさが立った銀行はペイオフ解禁を控えて地方公共団体の公金解約、事業法人の預金引き揚げなどで預金流出が進行。格付け会社の厳しい見方もあいまって、短金市場での話題はストレートに株価に反映された。
株式市場関係者があわてて売りを出したのは、「ロンバート貸出が万能ではないことに気づいた」(準大手証券)ためだ。短金市場での資金繰り難のうわさは、「一部銀行がロンバート貸出を受けるため、割引短期国債など日銀に差し入れる担保をかき集めていたことが一層拍車をかけた」(銀行系証券)。
日銀は自らの財務の健全性を保つため、貸出の際には国債やこれに準じる信用力の高い社債、CPを担保に取る。ロンバートについても同様だ。不良債権処理が難航していることは織り込み済みだったが、「適格担保のやり繰りにも窮しているとは、正直驚いた」(同)投資家は少なくなかった。
●高まる資金繰り不安
一部銀行が担保をかき集めていることに関し、金融当局筋は「12月初旬に日銀の金融決済システムの更改を控え「資金決済をスムーズに進めるため、担保は厚めになる傾向がある」(同筋)ことが背景と強調する。こうした動きが市場の動揺を誘ったのは、「あくまで一過性の動き」というわけだ。
ただ、金融の「駆け込み寺」とも言われるロンバート貸出が頻繁に活用されているのは事実だ。日銀が日々短金市場に厚めの資金供給を実施しても、一部銀行へのクレジット・ライン(与信枠)はタイトなままだ。資金需要の高まる年末年始、期末に向け、株式市場関係者がロンバート貸出の動向に細心の注意を払うことにもなりそうだ。
○URL
・「外債投資」失敗で冷や汗〜金融機関に新たな火種
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/28/20011128142511_74.shtml
[相場英雄 2001/12/04 11:00]