投稿者 sanetomi 日時 2001 年 12 月 04 日 16:08:57:
銀行株が下げ止まらず、みずほホールディングス、三井住友銀行などが軒並み年初来の安値を更新している。内外企業の相次ぐ破たんに伴う信用リスクの高まりが背景とされ「不良債権問題に対応する銀行の自助努力は限界にきている」(さくら投信投資顧問の山本誠司ファンド・マネジャー)との見方があらためて広がっている。
銀行は主要行で今年度、当初計画の3倍以上にのぼる6兆4000億円の不良債権を処理することを決めた。これに伴い、毀損(きそん)する自己資本を穴埋めするため、あさひ銀行、三井住友銀行、UFJホールディングスなどが法定準備金の取り崩しという“苦渋の選択”を迫られたばかりだ。
「峠と終着点が見えない」
それにもかかわらず、市場参加者の間で、企業の信用リスクや不良債権問題への不安が拭えないのは「やはり不良債権残高の推移と処理の峠と終着点が見えない」(新光証券の瀬川剛エクイティストラテジスト)からだ。また、「来期以降も不良債権の残高がスパイラル的に増える公算がある」(山本氏)とみる市場参加者が多い。
1週間ほど前までは、銀行が自己資本を毀損(きそん)しながらの積極的な不良債権処理や、みずほHDのトップ人事の刷新などを前向きに評価する雰囲気も広がった。だが、現状では、保有株の低迷が続き、景気の回復が遅れれば、「銀行の体力が底をつくのは時間の問題」(瀬川氏)という心理が投資家を支配している。
売りやすい環境が定着
市場では、投資家心理の底流にあるこうしたマイナス志向を背景に、「市場で銀行株を売りやすい環境が醸成されており、何らかの悪材料で、すかさず売りを仕掛けてくる」(瀬川氏)という。格付け機関が日本国債を格下げしており、大量に保有する邦銀のリスクを懸念する声もある。
もっとも、この日の午前の取引では、格下げ発表に先立つ日興ソロモン・スミス・バーニー証券などからの4大銀行株のまとまった売り注文が下落のきっかけとなった。市場では、短期的な株価の下落による利益獲得を狙った投資家からの注文ではないか、との見方が出ている。
“政策対応”待ち
法定準備金の取り崩しに加えて、優先出資証券の発行という自前の自己資本増強と銀行は自助努力としての手を尽くしている。しかし、それだけでは銀行株買い上がれず「金融庁など当局側から何らかの政策が打ち出されるのを待っている状況」(さくら投信の山本氏)という。
市場では「公的資金の再注入論に加え、さらなる大手行の再編・統合計画などが浮上してもおかしくない」(山本氏)との声さえ出てきている。下げ過ぎとの見方からの買いも入っているとみられ、反発する局面もあろう。だが、投資家は銀行に対して明らかに“黄信号”を送っている。