投稿者 sanetomi 日時 2001 年 12 月 04 日 16:06:41:
日本銀行は4日、10月29日分の金融政策決定会合議事要旨を公表した。それによると、それによると、ある委員は「量的緩和の手段として、国債買い切りオペを月8000億円程度にまで増額するとともに、外債の購入も定期的に月2000億円程度実施するという形で補助的に用いることが適当である」と述べた。
さらにこの委員は、「外債の購入は毎月定額という形で行うのであれば、日銀法第33条に掲げられる通常業務の範囲内であり、為替介入と混同されることはないので法的に問題はないほか、実務面でフィージブルである」と指摘した。
「当座預金残高が6兆円を上回ることを目標とし、潤沢な資金供給を行う」とする現状の金融調節方針は、中原伸之委員を除く8人の賛成多数で可決された。
金融緩和の副作用やインフレ懸念する声も
ある委員は「短期金融市場の機能が低下していることや、本来淘汰されるべき企業の延命に伴い過当競争による価格下落に目に余る動きがみられることは、いずれも長期にわたる金融緩和の副作用とも言える」と言明した。
また、ある委員は「物価は世の中にある財・サービスと流動性の交換比率であるので、流動性を増やし続ければ、いずれはインフレになる」と指摘。さらに「その時点はいつか分からないが、そうしたリスクを念頭に置き政策を運営しなければならない」と述べた。
これに対し、「数人の委員より、そのような言い方では日銀がデフレとインフレのいずれを当面の主要なリスクと考えているのかうまく真意が伝わらなくなるので適当でないとのコメントが、デフレ防止を重視する観点から寄せられた」という。
複数の委員が「染み出し」効果を評価
現在の潤沢な資金供給の効果については、ある委員が「8月の緩和措置後、株価や長期金利に目立った効果が現れなかったのは、中間期末を控えていたことや補正予算に関する思惑が生じていたこと等が影響していたのではないか」と述べた。
そのうえで、この委員は「10月入り後、株式市場や為替市場が良好な地合いとなりつつある点を踏まえると、当座預金残高増額の効果が『染み出している』可能性も否定できない」との見方を示した。
また、もう1人の委員も「最近、本邦投資家が短期金融市場から期待収益率がより高い資産へ資金をシフトさせているように、そうした波及効果を期待できる動きが出てきている」と指摘。さらに別の1人の委員も「海外投資家が敏感に反応したなどの効果がみられた」と述べた。
中長期のリスク・プレミアムの最小化が必要
こうした議論を経て、多くの委員は「6兆円を上回る当座預金供給が金融市場への波及効果を強めていくのかどうか、もう少し時間をかけて見極めたい」との見解で一致。このうち1人は「市場に緩和効果を浸透させるためには、絶えず必要額を上回る潤沢な資金供給を続けるという本行のスタンスを堅持することが重要」と強調。さらに「金融面からの効果の波及を目指し、中長期金利や資産価格形成にかかるリスク・プレミアムを最小化していくことが必要」と述べた。
また、ある委員は、企業金融に関して「97−98年頃のような信用収縮の動きはないが、銀行貸出スタンスの二極化傾向が続いている中、企業収益の圧迫から資金繰りが悪化している企業が一部に出始めているようであり、今後の動向には注意を要する」と指摘。もう1人の委員も、最近のような景気情勢が続く限り、金融機関による貸出先の選別は厳しくならざるをえない」との見方を示した。
この会合では「経済・物価の将来展望とリスク評価」の文案が検討され、採決されたが、中原伸之委員が、1)レポート全体の書き振りが楽観的過ぎる、2)米国など海外経済の回復時期を来年度前半としているが、そのように展望することはできない−−特に米国において、雇用の悪化、企業収益の悪化を背景とした設備投資の減少、地方財政支出縮小の影響が深刻である−−という点を理由に反対した。