投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 12 月 03 日 19:47:07:
IPO(新規株式上場)で前代未聞の波乱劇が演じられた。主役は大型上場として注目され、11月30日に公開された電通<4324>である。寄り付き状況は、公開価格42万円でスンナリ初値をうつけ、その後40万5000円まで下げたものの、引けは定石通りストップ高の47万円で比例配分となり、なお17万株強の買い物を残した。
●考えられないミスだが・・・皮肉な結果も
問題は、この高速エレベーターのようなイレギュラーな上げと下げの値動きの背景にある。幹事証券の1社のUBSウォーバーグ証券が、注文の入力ミスで大量の売り物を出し、この売りと買い戻しが株価の下落と急伸を演出する演出家になってしまったのだ。この収拾が今週どうつけられるかによって、電通株の今後が決まることはもちろん、次の大型上場の野村総研(12月17日公開)への好波及し、さらにIPO全般の注目度がアップ、師走相場の方向性が浮上する皮肉な結果も予想されるのである。
●「相手の弱み」を衝いて株価は一段高
UBSウォーバーグ証券は、注文の入力ミスを認め陳謝のコメントを発表している。そのミスについて市場では「61万円で16株の売り」を「16円で61万株の売り」としてしまったとするのが有力である。ミスに気づいた段階で同社は注文を取り消したが、既に6万株超が執行され、結局この日の同社の売買手口は、売りが6万5579株、買いが1万8111株となった。この買いは、売りの買い戻しとみられており、同社では、受け渡しのための株券の調達をしなければならないことになる。しかし6万株超といえば、今回の公募・売り出し株合計の17万5000株の40%にも達する株数である。
株券調達は、海外公募・売り出し株は当然、市場からの手当ても必至となる。市場での調達は、需給要因としては買い・上げ要因となる。どれだけの買い株数が市場に出てくるかによって電通株の上値が決定する。目端のきく証券会社のディーラーやプロ投資家にとって、全体相場の相場観や電通株の実態価値とはまったく関係なしにUBS証券の「フトコロ具合い」を見極めさえすれば対応が可能となる。
「相手の弱みはこちらの強み」となるわけで、その背景には外資系証券にいいようにやられてきた積年の怨念もありそうだ。現に30日の取引終了後のPTS(私設取引システム)では、さらに53万円まで買い進められており、こうした動きに一段と弾みがつくことが有力なのである。
●クリスマスプレゼントにお年玉つき?
先週「小さく産んで大きく育てることがIPOの要諦」とお伝えした。今回の電通株は、UBS証券のイレギュラー・ミスで、まさに皮肉にもこのIPOの要諦を実現したのである。数10億円単位の損失が予想されるUBS証券はともかく、株式市場や投資家にとっては「降って湧いた幸運」となる。
となれば、まず12月17日上場の野村総研への好波及はもちろん、IPO全般への注目度もアップするとともに、市場全般は回転がつきムード好転につながる。師走相場は「禍(わざわい)転じて福」となり、クリスマスプレゼントがちょっと早いお年玉も一緒につれてくる可能性は強い。
[相馬太郎 2001/12/03 11:32]