投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 30 日 14:34:01:
老舗(しにせ)の重機メーカー、新潟鐵工所<6011>の事実上の倒産が東京株式市場に大きな波紋を広げている。同社は東証1部市場の平均株価を示す「日経225」採用銘柄であり、市場流動性も高く文字通りの「名門企業」だが、11月27日、東京地裁に会社更生法適用を申請した。負債総額は2270億円に上る。市場関係者は名門企業のあっけなく、予想外の破たんに“潟鉄(がたてつ)ショック”と呼ぶほどの衝撃を受けている。師走相場入りする東京市場に計り知れないダメージを与える。株価400円台を維持しながら破たんした大成火災海上保険に加え、兜町でもほぼノーマークであった新潟鐵工所が「突然死」した事実は、証券関係者に一層の危機感を募らせている。そして今回、海外企業の経営危機のとばっちりを受け、安全な金融商品とうたったMMFが元本割れする事態を招き、証券業界はまさに「内憂外患」だ。
●市場もお手上げ、読めなくなった次なるターゲット
「(潟鉄倒産で)注視する企業の範囲を広げざるを得ないが、正直いってマークしきれなくなった」。マイカル破たん後、次なるターゲットの選別に躍起となっている株式市場だが、ある準大手証券関係者は新潟鐵工所倒産にショックと困惑を隠さない。1300億円弱の有利子負債が経営の屋台骨を揺さぶっていたものの、営業黒字を確保するなど本業が踏ん張っていた同社。その会社がいとも簡単に倒れた事実は、ゼネコンや流通という市場で「噂される企業」だけでなく、どの企業が飛んでもおかしくない状況を迎えたことを浮き彫りにしている。
●難しくなった大台維持
大手銀行が今期、6兆円を超える不良債権処理に本気で乗り出すことを表明したことを受け、証券業界では「企業破たんの第1の大波は、この年末から年始にかけて」(大手証券)とみるのが一般的だ。それだけに危惧されているのが年末の株価水準だ。
26日には1カ月ぶりに1万1000円台に値を戻した東京市場だが、27日からは「潟鉄ショック」の波紋で、株価は再び下降曲線を描いている。倒産リスクが一気に頭をもたげてきた市場だけに、海外の機関投資家を中心に投売りが加速することは避けられず、個人は二の足を踏むのは必至。「大納会で株価1万円台の維持は極めて難しくなった」(同)。株価下落は、企業の逆資産効果を増幅し、倒産リスクはさらに強まる。「負のスパイラル」に陥る危険性が高い、とみていいであろう。
●泣きっ面にハチ。泥沼の証券業界
一向に底入れ感が見出せず苦悩する証券業界だが、悪いことはさらに重なる。米電力大手のダイナジーによるエネルギー卸大手、「エンロン買収断念」は、日本の証券会社に意外な影響を与えている。今回の買収断念でエンロンが経営危機に陥ることは避けられず、同社発行の債券は即座に下落。これで困ったのが、日興コーディアルグループ<8603>やUFJ<8307>グループなどの投信会社。なぜなら、これら投信会社は「エンロン債」を組み込んだMMFを販売しており、その元本割れが必至の情勢になってきたからだ。MMFは安全性をうたった商品で、個人投資家に極めて人気が高いファンドだけに、MMF元本割れは投資家離れを加速することは間違いなく、ひいては証券会社の経営に大きな痛手となる。
証券税制改正で株式譲渡益課税が軽減され、追い風になったと、ほくそえんだ証券各社だが、大成火災、新潟鐵工所の相次ぐ突然死、そしてMMFの元本割れという事態は、まさに「兜町非常事態宣言」の時を迎えたといえる。
(井原 一樹)