投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 30 日 12:53:57:
ソニー<6758>、京セラ<6971>など主力ハイテク株が強烈な戻りを見せ、平均株価が同時テロ後の高値を更新する原動力となった。ハイテク株を中心に信用売り残が高水準に積み上がったままだが、その姿からは海外年金など一部機関投資家が底値をさらった跡が浮かび上がる。さらに信用売り残自体は高水準にあっても、買い戻しによる一段高が期待しにくい状況にもあるようだ。
●空前の売り残が示すもの〜売り手は証券会社
東証が毎週火曜日に発表する信用取引残高では11月20日、27日と2週連続で売り残が買い残を上回った。27日発表分では、売り残が1兆900億円と買い残を200億円ほど上回っている。信用取引は通常、買いが多いため、売り残超過は「異常事態」といえる。
まれに見る大量の売りを建てたのは、カラ売り専門のヘッジファンドや個人投資家ではなく、顧客の大口注文に応じる一部証券会社といわれる。外資系や国内大手証券は、大口顧客から買い注文を受けると、自ら売りを出して売買を成立させる。この際、手持ちの株券だけでは足りない場合は、日本証券金融を通じて株券を借りて顧客の買い注文にぶつけるため、統計上は信用売りとして現れるのだ。個人投資家のカラ売りも、もちろん含まれているが、5000円を超える株を数千、数万株単位でカラ売りできる個人投資家は「1%いるかどうか」(準大手証券)といわれる。
●安値は海外年金の手に、売り残消化は巧妙に
今回の局面で、ハイテクを中心とした安値を拾ったのは海外年金といわれる。分散投資系のファンドは、テロ後に米国株が値を戻していったことから相対的に日本株の保有比率がダウン。このため「割安感というよりも投資比率の調整を目的に、半ば機械的に日本株を買い増す動きが目立った」(同)という。
信用売り残がこれほど多ければ、買い戻しによる株価上昇が気になるところ。投資家は自らの買い戻しによる株価への影響を嫌うが、証券会社は株券を現渡し(市場で買い戻さず、手持ちの株券を日本証券金融に引き渡し信用売りを決済すること)する手段が容易に使える。このため、株価が動かないうちに、いつの間にか売り残が減少していたということにもなりかねず、海外投資家好みのハイテク株に限っては買い戻しを当て込んだ過剰な期待は禁物だ。
(半沢 昭悟)