投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 30 日 09:33:08:
地域金融機関である信用金庫や信用組合の破たんが全国規模で続いている。来年四月からのペイオフ凍結解除を控え、金融庁が体力のない金融機関の整理淘汰(とうた)を進めた結果、週末に集中する形で十月以降、六週続けて十七の信金、信組が破たんした。また信金の中には地方自治体の指定金融機関となっているところもあり、ペイオフ対策で公金管理の安全対策に乗り出した自治体の不安も募っている。約四カ月後に迫ったペイオフの凍結解除だが、信金や信組の不安は膨らむばかりだ。(藤沢志穂子)
≪財務体質悪化≫
金融機関の破たん処理の枠組みを定める金融再生法が施行された平成十年十月、全国に四百の信金、三百四十二の信組があった。だが二十九日までに破たんや合併で信金は三百六十四、信組は二百六十二に減った(受け皿未定のものも含む)。破たんに至る経緯も、混乱を避けるため窓口の閉まる金曜に破たんを申請して、週末に事業譲渡を完了。月曜から営業再開する方式が定着している。
信金や信組を追い込んでいるのは、財務基盤の弱体化だ。特に信組は昨年四月、管轄が地方自治体から国に移り、改めて金融庁が検査した結果、貸倒引当金の積み増しを迫られるなど財務体質の悪化が目立った。
地場産業の衰退と公共事業の頭打ちで経営不振に陥る企業が続出、融資先を失うケースが増えたからだ。結果的にそれが破たんにつながった。
≪公的資金余波≫
さらに公的資金投入の見返りで、中小企業向け融資の増加を金融庁から迫られている大手銀行が地方で企業融資や個人業務に力を入れたため、「信金や信組が打撃を受けている」(金融庁幹部)と皮肉な現象も起きている。
金融庁は「来年四月までに問題のある金融機関を残しておくわけにいかない」(柳沢伯夫金融担当相)との構えを崩していない。それだけに、当面「週末破たん」は避けられないとみられる。
一方、ペイオフを控え公金管理の安全対策に乗り出した地方自治体にも、信金の破たんは重くのしかかる。信金の中に、自治体から指定金融機関に指名されているところもあるからだ。
公金を取り扱う窓口金融機関の機能を果たす指定金融機関が破たんすることになれば、自治体が直接、被害を受けることにもなりかねない。このため、自治体の資金分散の動きも急だ。
地方自治体の公金の大半は、現在、定期預金で運用され、一部が国債・地方債などで運用されている。国債の比率を増やしたり、格付けの高い社債に振り替えることを検討したり、ペイオフ対応が一年先の普通預金へ移すといった動きも目立つ。金融庁によると「金利の高い譲渡性預金(CD)への移動も目立つ」という。
自治体の問題はそれだけではない。税金などを納める窓口となる「収納代理金融機関」の扱いだ。代理機関に信金を指定していた場合、ここから指定金融機関に入金するまで数日間あり、その間にその信金が破たんすれば損失は自治体がかぶる。相次ぐ信金、信組の破たんは、自治体に「ペイオフで初めて市場の波にもまれる」と危機意識を促している。
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【10月以降破綻した信金信組】
月日 名 称 所在地
10・19 宇都宮信金 栃木県
大阪第一信金 大阪府
常滑信組 愛知県
10・26 沖縄信金 沖縄県
11・2 大栄信組 東京都
東京富士信組 東京都
中津川信組 岐阜県
11・9 宮城県中央信組 宮城県
岩手信組 岩手県
網走信組 北海道
11・16 大日光信組 栃木県
馬頭信組 栃木県
中津信金 大分県
臼杵信金 大分県
佐賀関信金 大分県
11・22 三栄信組 東京都
関西西宮信金 兵庫県
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▽ペイオフ 金融機関が破たんした場合、預金の払い戻し限度額を元本1000万円とその利子までとする制度。中小金融機関からの資金流出を懸念した政府が平成11年末、凍結解除を1年延期し、14年4月とした。普通預金や当座預金は15年3月末まで全額払い戻しが保証される。外貨預金や譲渡性預金(CD)などは保護の対象外。預金流出で金融システム危機に発展しそうな場合、国の危機対応勘定(15兆円)から公的資金を投入し預金を全額保護する仕組みがある。