投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 28 日 14:51:45:
米同多発テロ事件を契機に、同国景気が長期間立ち直れないとの観測が高まり、日系金融機関による米国債投資ラッシュが起こった。しかし、米国債券市場は日本勢の思惑とは正反対に動き、邦銀を中心に多額のロスを発生させることに。不良債権処理の拡大で青息吐息の日系金融機関に、新たな火種が生まれた形だ。
●またもや一斉行動
9月11日のテロ事件を機に、都銀や地銀のほか、生保、政府系金融機関の一角が一斉に米国債投資に向かった。米景気が悪化するのが必至と見られていたうえに、企業業績の低迷も重なって、「質への逃避」現象が顕在化。株安・債券高の流れが当面続くとみられていたためだ。
日本の財務省が発表した10月の対外債券投資によると、日系投資家の米国債購入は4兆9400億円に達した。持ち合い解消売りの増大で上昇の気配がほとんどない日本株の運用に嫌気がさしていたため、「米国債相場での利益捻出は、年度内最後のチャンス」(大手生保)とも映った。バブル経済の時期と同様に、ジャパンマネーがまたもや一斉行動をとった形だ。
ただ、低迷必至とみられていた米国の個人消費が、「愛国心」や自動車販売の無金利ローンキャンペーンで予想以上に底堅く推移。加えてアフガンでの戦況も予想外に好転して、タリバンが首都カブールを見捨てるなど、急騰してきた米国10年債相場は、11月初旬からほぼ一本調子の下げを演じた。日本勢が投資を始めた4%台前半の水準から、前週末には金利が1%近く上昇(相場は急落)して5%を超えた。さらに、「キャピタルゲイン狙いで一斉に買い向かっていた日本勢がろうばい売りに回り、需給関係を一層悪化させた」(米系証券)側面もあったという。
●先行組も大きな痛手
「会社がなくなるほどではないが、一部日系機関が外債投資でダブルパンチを食らった」(金融当局筋)―。ダブルパンチとは、新興国の国債でも損失を被っているというものだ。関係者によると、長引く日本株の下落傾向に嫌気がさしていた複数の金融機関は、今夏前からケイマンなどのタックスヘイブン経由でアルゼンチンやブラジルなど高リスクの国債を購入していたという。しかし、アルゼンチンと国際通貨基金(IMF)との債務返済交渉のもつれから、同国債が暴落。連れて周辺新興国の債券も急落したのである。
そこで、米国債に向かったわけだが、新興国債でのロスを埋めるはずが急落、「今通期決算に大きな痛手を残した」(欧州系運用会社幹部)という。
●「特俵」の金融システム
一方で、不良債権処理を加速させるため、UFJホールディングス<8307>や三井住友銀行<8318>など大手金融グループを中心に、今通期業績の大幅下方修正が相次いでいる。これは、法定準備金の取り崩しも予定するなど、「不良債権処理の最終章」(都銀幹部)を強く意識したためだ。
不良債権処理の急拡大に伴い、各社の体力が著しく低下、「日本の金融システムは、事実上特俵(とくだわら)に足がかかっている状態」(銀行系証券幹部)とも言える。しかし、起死回生策のはずだった米国債投資も失敗。各社の経営体力が低下する中で「今後、同じような失敗があれば、経営基盤そのものを危うくする」(同)ことになる。金融機関の資金運用は、当面綱渡りを強いられそうだ。
(相場 英雄)