投稿者 sanetomi 日時 2001 年 11 月 28 日 06:17:50:
【ワシントン逸見義行】米景気循環の時期を事実上判定する民間団体、米経済調査局(NBER)が26日、3月からの景気後退(リセッション)入りを宣言したことで、景気論議の焦点は、回復の時期とその形に移った。米株式市場では、来年半ばの景気急回復期待からダウ工業株30種平均株価は1万ドルに近づいているものの、9月の同時多発テロの悪影響が今後表面化し、世界同時デフレ不況が進む懸念もささやかれ、景気後退長期化の不安も根強い。
宣言では、3月に雇用がピークを迎え、生産や売上高は縮小基調に陥ったのに対し、個人所得だけが拡大基調を続けていると分析。総合判断から戦後10回目の景気後退入りと判定した。また「テロ以前は低迷の度合いが弱く、景気後退と判定するのは難しかった可能性がある」と、テロが景気後退の流れを鮮明にしたとの認識を示した。
戦後の景気後退期間の平均は11・6カ月。最長は16カ月で、第1次石油ショックによる70年代半ばと米経済の競争力の急低下が問題化したレーガン政権初期の80年代初めの2回、経験している。
感謝祭翌日の23日から始まったクリスマス商戦は予想より顧客の出足は好調で、「経済環境はテロ以前に戻った。利下げの継続や景気対策の効果も出て、来年初めから回復に向かう」(オニール米財務長官)との楽観論も出ている。
しかし、クリスマス商戦は大幅値引き販売で顧客が集まっただけで「利益は極めて薄い」(大手ディスカウント)のが実情。今後、テロによる失業増が影響を及ぼすのは確実なうえ、テロ以前のIT(情報技術)バブル崩壊による過剰設備問題も解消していない。アメリカン・エンタープライズ研究所のメーキン研究員は「今後数カ月で景気や企業業績の大幅悪化は避けられず、景気後退が戦後平均を上回り長期化するのは必至だ」と分析している。
日米独はすでに景気後退に入り、70年代の石油ショック以来の世界同時不況が待ち構えている。原油価格の低下は表面上、先進国経済を下支えしているように見えるが、戦後初の世界同時デフレ不況の象徴的動きと見ることも可能で、デフレは金融政策の効果を薄める。世界経済の悪化が米経済の回復の足かせになる事態も懸念される。
◆米国の戦後の景気後退期◆
期 間 主な出来事
1948.11〜49.10 11カ月 北大西洋条約機構(NATO)発足
53. 7〜54. 5 10カ月 朝鮮戦争終結
57. 8〜58. 4 8カ月 なべ底不況(日本)
60. 4〜61. 2 10カ月 ケネディ大統領就任
69.12〜70.11 11カ月 ベトナム戦争泥沼化
73.11〜75. 3 16カ月 第1次石油ショック
80. 1〜80.7 6カ月 第2次石油ショック(79年)
81. 7〜82.11 16カ月 レーガン大統領就任(81年1月)
90. 7〜91. 3 8カ月 湾岸戦争
2001. 3〜 ? 同時多発テロ
(注)期間は景気のピークから谷。月数も含めてNBERの判定結果による。