16業界分析 中間決算総まとめ 本当の「勝ち組」〜デフレ進行 2年連続の企業収益大幅減益必至(週刊エコノミスト)

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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 27 日 21:03:36:

企業収益が急速に悪化している。2001年9月中間決算は売上高で前年同期比0.4%増とほぼ横バイながら、経常利益は同36.3%減と、大幅な落ち込みが目立つ(新光総合研究所集計、11月20日現在)。日本企業の必死のリストラを要因に、経常利益総額で42兆円とバブル期を超えるほどの好調決算となった01年3月期と比べ、坂道を転げ落ちたかのような惨状ぶりだ。
確かに、「明」から「暗」への反転は、期初から予想されていたことではあった。しかし、期待されたようなIT不況の回復は一向に見えず、国内の過剰生産と中国などからの安価な輸入品の増加でデフレ傾向はさらに強まった。これに加えて、米国を襲った同時多発テロ事件は、牽引力の米国経済を直撃した。
お先は、まだ真っ暗なのだ。
だが、こうした状況のなかで、確実に利益を生み出している企業がある。純利益10期連続増益見込みのリコー、国内製薬業界初の売上高1兆円に達する武田薬品工業――。逆境のなかで見える本当の「勝ち組」の実力とは何か。16業界の詳細分析に加え、「勝ち組」5社を例に利益を生み出す力を探った。 (編集部)

霧島 和孝(住友生命総合研究所主席主任研究員)

厳しい決算発表が続いている。世界的なITブームに沸いた1999〜2000年度とは様変わりの様相である。ITバブル崩壊で既に停滞し始めていた世界経済は、米国テロ事件の影響で一段と同時不況の色合いを強めている。日本経済も輸出の急減に見舞われ、生産が急低下し、失業率が5・3%に上昇するなど、不況の度合いがさらに深まりつつある。
景気が循環的に回復をするとしても、それは早くても02年度後半と見込まれる。しかも、回復しても、本格回復とはほど遠い緩やかなものにすぎない。01〜02年度と2年連続で1〜3割の大幅減益は避けられそうもない。

●個人消費回復せず

最も収益の悪化が急速なのは、世界的なIT不況の直撃を受けた電機である。日銀の9月短観によれば、01年度の電機の経常損益計画は前年度比マイナス59・4%と、00年度実績の61・1%増から大幅な減益に転じている。世界的なIT需要の回復は、早くても03年にずれ込むという見方が一般的である。WSTS(世界半導体統計)は02年の世界の半導体市場はわずか2・5%増にとどまると見ている。電機は、02年度も大幅減益に沈む可能性が高い。
米国を震源とするIT不況の広がりで、世界的に需要が減退しているのを反映して、IT関連のみならず鉄鋼、化学、繊維製品、パルプ・紙、非鉄金属など素材関連の市況も冴えない。特にわが国の場合、長期にわたる低成長に苦しんでいるうえ、中国などから安価な輸入品が大量に流入し、デフレ(物価の持続的下落)経済が続いている。素材産業では、市況の低迷で大幅減益に陥る企業が多くなっている。
自動車は、01年9月中間決算で数少ない増益組の一つ。日銀の9月短観によれば、自動車は01年度上期の経常損益を17・4%増と見込むなど6月短観より上方修正している。
しかし、年度下期以降は自動車も減益組に転落すると見られる。理由は、比較的底堅かった国内の乗用車販売が9〜10月は前年同期比で減少に転じた。消費不振がついに車でも確認されるようになったからだ。
消費を取り巻く環境は、今後悪くなる一方と見られる。毎月勤労統計によれば、現金給与総額は9月までで5カ月連続で前年に比べて低下し、しかも下げ幅を拡大している。雇用も製造業や建設業での減少が激しく、失業率6%乗せも時間の問題と考えられる。消費者マインドの悪化は、どの調査においても顕著になっている。雇用不安、社会保障不安に加えて、最近では米国テロ事件や狂牛病など安全への不安も高まっている。
消費が一段と冷え込めば、自動車はもちろんのこと、家電、旅行・観光、流通など広範な産業に深刻な影響が広がる。特に、旅行や航空は米国テロ事件で海外旅行が激減するなど特殊要因も加わって、中小の旅行業者では倒産が起き始めている。確かに旅行やブランド品などでは国内消費に振り向ける動きもあるが、それらを考慮しても大きなマイナスには変わりない。
テロ事件で米国経済の回復が遅れることも、自動車の業績悪化要因である。米国では9月に減少した自動車販売が、10月は大幅値引きの効果で季調前月比24・6%も増加した。しかし、これは明らかに、需要の先食いにすぎない。失業率が急上昇しているなかで、大型の耐久財である自動車販売に持続性があるはずがない。値引きが終わる02年1月以降は大きな反動減に見舞われよう。
輸出が減少し、設備投資が落ち込み、個人消費が低迷し、公共事業は削減される。02年度も、わが国経済は需要全般にわたって不振が続こう。02年度の実質GDP成長率も、01年度と同様にマイナス1%前後が見込まれる。しかも、名目成長率はデフレの進行で両年度ともマイナス2%をも下回る。金額にすると、10兆円の減少になる。これはシンガポールの名目GDPにも相当する。全体の経済規模が大幅に縮小するデフレ経済の一段の進行で、売上高も収益も2年連続で減少する。
01年に入って人件費が増加しているのも、懸念材料の一つである。法人企業統計季報によれば、01年4〜6月の全産業の人件費は前年同期比で2・9%増加している。売上高に占める人件費の比率を見ても、01年1〜3月、4〜6月と2四半期連続で上昇している。あくまでも大企業の場合であるが、リストラの手がやや緩んできていると言わざるを得ない。01年度の中間決算では、これも利益圧迫要因となっている。

●再び激化リストラの嵐

しかし、01年度後半以降は一転大企業を中心にリストラの嵐が吹き荒れ始めている。日本経済新聞による上場82社の調査によれば、既に発表された計画だけで12万人の雇用が削減される。賃下げも残業時間や賞与にとどまらず、基本給にまで及ぶ企業が増えつつある。02年度春闘はベアの要求どころか定期昇給すら維持できないかもしれない。むしろ、中心テーマは、賃上げからワークシェアリングの採用など雇用の確保に移っている。
問題は、リストラの強化がどれだけ収益の改善に結びつくかである。売上高に占める人件費の割合を長期のトレンドで見ると、90年代の初めに急上昇していることが分かる。バブル崩壊で売上高が伸び悩むなかでも、人件費だけは傾向的に増え続けている(図)。
収益力回復のため、90年代初めの水準にまでこの比率を戻す場合を想定してみよう。全産業ベースで、13%から11%まで落とさなければならない。売上高横バイで試算すると、人件費は現状より約30兆円、2割程度の削減が必要となる。とても1〜2年で実現できる数字ではない。バブル崩壊後も引き上げ続けた高い人件費の水準が、今となっては重しとなっている。
原油価格の低下は、数少ない利益押し上げ要因である。原油価格は世界的な需要の不振を反映して、このところ急速に値を下げている。11月のOPEC(石油輸出国機構)総会で減産が事実上見送られたことも下げを加速している。
ただし、エネルギー効率が飛躍的に高まっていることもあって、かつてほどは原油価格低下の恩恵が大きくないことも押さえておく必要がある。
00年度の原・粗油輸入金額は約5兆円にすぎない。もし、原油価格が10ドル低下したとしても、輸入金額の減少額は約2兆円にとどまる。それがすべて企業の利益になったとしても、00年度の全産業(法人統計季報ベース)の経常利益約40兆円のわずか5%である。
マクロ経済が悪化し、売上高が大きく減少する環境の下では、リストラの強化も、原油価格下落も効果は限られる。

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