投稿者 sanetomi 日時 2001 年 11 月 22 日 19:16:18:
同時多発テロの犯人たちがハイジャックのために払った航空運賃など米本土攻撃にかけたコ
ストは全部で50万ドル程度だったが、それが米経済に与えた損失は少なくとも1千億ドルを
上回ると見られている。テロは世界経済をも痛撃した。
アフガニスタンでの対テロ作戦が軍事から政治へとギアチェンジするにつれ、世界経済の立
て直しが急務となってきた。軍事で勝っても経済で負けてはオサマ・ピンラデインの思うつぼ
だ。
それとともに、日本経済の立て直しを求める世界の声も悲鳴に近くなってきた。先週末、フ
ランス・リヨンで行われたある国際会議に出席したが、そこでジェフリー・ハウ元英副首相
(蔵相)は、こう言った。
「このままでは日本発の世界不況を引き起こす危険がある。日本の場合、経済成長の方が対
テロ政策よりはるかに重要な課題であるということを日本政府は十分に認識してほしい」
「日本ではデフレスパイラルが始まっているのに、なぜ、より速やかに、より根本的にこの
問題に取り組まないのか。ゼロ金利というが、物価下落がこのように進めば金利は高止まり
だ。マクロ政策で常識にとらわれない手法を検討するべきだ」
ハウ氏は「常識にとらわれない手法」の具体策には触れなかったが、その「非常識」の度合
いの強いものから挙げれば次のようなものが候補になりうる。
* 日銀が自動車とパソコンを兆単位で買い、それを海に捨てる
* 空高くヘリから兆単位の日銀券をばらまく
* 消費税をゼロにする。その原資となる赤字国債は日銀が市場から買う
* 日銀が外債を買う
* 日鈍が株を買う
消費喚起のためにいったんは消費税をゼロに戻す構想など実現できたらいいと思うが、友人
の財務省高官に聞くと「主税局タリバーンがそんなことを許すはずがない」とにべもない。
日銀は、このうち外債買い入れにひそかに関心を示している。それによる円安誘導も期待
してのことだ。だが、米国、中国、それに肝心の日本の財務省がそれを受け入れるかどうか。
海外では銀行の不良債権問題で後手後手に回った金融庁への風当たりが強いが、このところ
日銀を見る目が険しくなっている。物価崩壊を放置したまま、「物価安定」の責任を果たして
いないとの批判である。
背景には、アジアと米国のデフレの進展がある。アジアでは香港や台湾などでデフレが深ま
っている上、成長路線をひた走りしてきた中国も消費者物価が急低下しつつある。米国でも米
連邦準備制度理事会(FRB)が今年10回も利下げしたのに景気回復のめどが立たないことで、
金融政策に対する不信感が市場に芽生え始めている。それだけに日本のデフレスパイラルの
横波が怖い。
「東京発 同時多発世界不況」の恐怖である。
例えは、次のようなシナリオが考えられる。
@日本株がさらに売られ、銀行の取り付け騒ぎ、あるいは生命保険の解約ラッシュが発生。
続いて海外資産の取り崩し、資金引き揚げが起こる。それに伴い米国債が売られ、米金利が上
昇、世界景気の底が抜ける。
A日本から資金が流出し、円安が激化、つれて長期金利が跳ね上がり、銀行保有の長期債が
丸ごと不良債権となる。急激な円安に振れた場合、中国人民元の大幅切り上げを招き、中国の
経済成長が腰折れ、アジア経済危機が再発する。
B小泉改革が自民党内抵抗勢力によって挫折。市場は激しい「日本売り」攻勢をかけ、株、
為替、債券のトリプル全面安に突入する。
「国債発行30兆円枠」の手前、第2次補正予算も「中規模」程度か。それでデフレスパ
イラルをくい止められるものかどうか。「30兆円枠」をめぐる攻防は小泉改革教徒と異教徒、
背教者らの「抵抗勢力」との間の「聖戦」と化してしまった。経済政策が政争、いや内戦ごっ
この道具と相成る。こんなことを続けていては金融クラッシュで日本は自爆してしまう。
日本の不況との戦いはいつまでも「出口戦略」が描けず、「泥沼化」に陥っている。マク
ロ経済政策に関しては日本はもはや「失敗国家」も同然だ。経済財政諮問会議もいまではかの
国のロヤ・ジルガ(部族長会議)のように、財務省、経済財政担当相、金融庁、日本銀行な
どなど、それぞれ”部族”代表のようで、だれが司令官なのか、どこに求心力があるのかさ
っぱりわからない。