投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 22 日 12:22:46:
米エネルギー大手、ダイナジーによる買収提案を受けた、エンロン 同社の債券格付けについて、S&Pは11月1日、BBB+からBBB(ネガティブ)に引き下げを発表。ムーディーズも、11月9日にBaa2から投資適格最低ラインのBaa3(ネガティブ)に格下げした。 ◎MMFへのエンロン債組み入れ状況(10月末現在:一部推計含む) (MMF名称) (額面合計) (組入比率) ◎償却原価法:債券の取得価格と償却原価の差額を、残存日数であん分して日々計上する 評価方法。MMFでは、残存期間1年未満の債券、もしくは純資産額の15%まで認められる満期保有目的債券に適用される。
国内の一部投信会社が、MMF(マネー・マネージメント・ファンド)の運用資産にエンロン債を組み入れているためだ。投信各社は、買収案件の行方を見守るとともに、ひとまず投資継続を決定した。また、今回のエンロン債の組み入れ状況を巡っては、投信会社が情報開示に前向きな姿勢を示すなど”変わる投信”を印象付けた格好となった。
エンロンは、米テキサス州ヒューストンに本拠地を置く大手総合エネルギー会社。国内ガス・パイプラインから、エネルギー小売り、海外エネルギー事業などを幅広く展開し、コア事業である電力・ガス卸売りでは、約30%のシェアを握る。しかし今年10月、前最高財務責任者(CFO)の不正取引疑惑を受けて信用不安が高まり、資金調達に窮するなど経営の危機的状況に陥った。
ロイターが独自に入手したファンド開示資料や、運用会社、販売会社への取材で明らかになったところによると、エンロン債を組み入れているMMFは、日興MMF(運用:日興アセットマネジメント)、スミセイMMF(同:スミセイグローバル投信)、ユニバーサルMMF(同:UFJパートナーズ投信)、UFJパートナーズMMF(同:UFJパートナーズ投信)、日本MMF(同:日本投信)の5本で、総額は385億円。
いずれのMMFも、組み入れているエンロン債は、償却原価法に基づき時価評価の対象外となっている。基準価額への直接の影響は出ていないが、元本確保性の高い投信業界の主力商品であるMMFに組み入れられていることから、同社債の先行きが注目を集めている。
合併などに伴い2本のMMFを運用するUFJパートナーズ投信では、今年5月末現在、2002年5月満期のエンロン債を合わせて額面30億円保有している。同社によると、10月にエンロンの株価が急落した後も、各方面から情報収集を行い、クレジット判断を行った結果、「エンロンのコアビジネスは好調で、業界の勝ち組に属している。(エンロンの)不確実性についても、満期までの期間が1年未満で、期間が長い債券に比べればリスクは少ないため、来年5月の償還時には、元本の償還に重大な懸念が発生しているとは考えていないと判断」(井上靖・債券運用部長)したことから、現在も保有を続けている。
同社によると、自発的に10月15日、MMFに組み入れている全銘柄を受益者向けに開示した。開示後に投資家からの問い合わせがみられたため、11月7日付で販売会社を通じて、エンロン債の保有状況や投資判断などを記した説明資料を用意したという。「今回は、法定外の情報開示となったが、リスクに関わる情報を全受益者へ平等に開示するため、資料を作成した」(井上氏)と話している。
額面で30億円のエンロン債を組み入れていたスミセイグローバル投信では、月ベースで組み入れている全銘柄を情報開示しているが、11月8日、エンロン債の保有状況を説明した説明書を販売会社を通じて全受益者に配布した。さらに、ダイナジーによる買収が明らかになった直後の12日には、エンロン債についての見解を、自社のホームページで開示した。「投資判断材料となるリスクの情報開示は、投資家の信頼を勝ち取って行くためには必要不可欠」(山本栄一常務)としている。同社のMMFは、運用の透明性確保と投資家への投資判断を提供するため、ムーディーズからAの格付けを取得している。
また、日興アセットも11月9日と12日、「日興MMF」に組み入れているエンロン債の保有状況に関する説明文書を、取扱販売会社に配布した。同9日には、短期公社債投信「チャンス」のB号、1号、2号、4号、9月号に組み入れているエンロン債の保有状況を説明する文書も、取扱販売会社に配布している。日興アセットでは、「一般論として、当社の運用する商品について投資家の関心は高く、問い合わせがあると思われるテーマについて、投資家には適宜適切に説明している。今回の資料も販売会社が投資家の説明の際に活用していただくために配布した」(総合企画室)と話している。
[参考]
・日興MMF 255億円 0.64%
・スミセイMMF 30億円 2.20%
・ユニバーサルMMF 10億円 0.24%
・UFJパートナーズMMF 20億円 0.39%
・日本MMF 70億円 2.50%