投稿者 sanetomi 日時 2001 年 11 月 11 日 07:49:18:
日本銀行が10兆円を超える膨大な資金を市場に供給したはずなのに、市場金利が跳ね上がる−−。そんな奇妙な現象が、9月半ば以降、短期
金融市場で現れている。「マイナス金利」という異常な金利で円を調達した一部の外国銀行が、日銀の当座預金口座に積み上げた結果だ。その額
は最大3兆円を超えたとも言われる。なぜこんな現象が起きたのか。
●関係者は困惑
「日銀は大量に資金を出しているのに。おかしい」。テロによる金融市場の混乱が落ち着いた10月初め、日銀や銀行の市場関係者は困惑してい
た。通常0・002%の無担保翌日物金利が10倍程度にはねるケースが見られたからだ。日銀は10兆円近い資金供給をしており、ゼロ金利を維持
するのに必要な5〜6兆円を大きく上回っていたにもかかわらずだ。
「容疑者」はすぐにわかった。外銀が3兆円にも達する日銀当座預金を積んでいたからだ。市場に大量に資金は供給されたものの、外銀分を除け
ば、日本の金融機関に「資金の余剰感はほとんどなかった」(大手銀資金担当者)ため、金利が上昇した。日銀の当座預金は金融機関が無利子
で預けるもので、そのままでは利益を生まない。外銀はなぜそんな行動に出たのか。
●「おいしい」取引
「今なら1カ月お金を借りていただくと、0・5%の金利を差し上げます」。9月半ば、ある在日外銀支店の資金担当者は邦銀からこんな取引をもち
かけられた。ドル金利との金利差を利用した「おいしい」取引だった。
この取引は為替スワップ市場で起きていた。通常の取引はドルと円などを交換する目的で行うのがスワップ取引だが、テロ事件直後は、損をして
もドルが欲しい邦銀と取引をした一部の有力外銀が最初から利益を得る取引になっていた。
事件直後に連邦準備制度理事会(FRB)が大量のドルを市場に供給したことで、信用力の高い有力外銀は市場金利よりも大幅に低いレートでド
ルを調達。そのドルで為替スワップ取引をすれば、外銀はドルを担保に円を借りることになり、もうかる。この金が日銀当座預金に積み上がってい
た。
●市場のゆがみ
外銀の動きを「極めて合理的な行動だ」と関係者の多くは指摘する。 短期市場を含め国内の金融市場は超低金利下にある。「100億円運用
してコーラ1本の利益」ともいわれ、運用収益より費用のほうがかかる場合もある。外銀はすでにスワップ取引で利益を得ている資金を金庫として
の日銀当座に預けたわけだ。
為替スワップで外銀が利益を得る「マイナス金利」は97年の金融危機当時などに発生しているが、その運用に日銀の当座預金が使われること
はなかった。
東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「本来、運用手段でないはずの日銀当座が運用手段になるのは、異常な量的緩和であることを示して
いる」と指摘する。
(11/07