投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 20 日 13:34:36:
今月13日に一時1万円割れを演じた日経平均株価だが、その後は1万1000円をうかがう水準まで急回復。この余勢をかって、証券会社のセールストークにも「今が底値圏でこの機を逃すと買い場はない」と熱がこもってきた。ただ、主要インデックスは上伸したものの、機関投資家の表情は今ひとつさえない。なぜなら、今回の指数急上昇は、彼らのポートフォリオ入れ替えに伴う要因が寄与している側面が強いからだ。この局面、証券会社の“買い”推奨には、十分注意を払う必要がある。
●ディフェンシブ売り・ハイテク買い
機関投資家の表情がさえないのは、ITバブル崩壊に伴ってポートフォリオから外していたハイテク株を「買い戻しているだけ」(米系運用会社)とされる。つまり、主要インデックスへの影響度の高い銘柄が買われれば、「日経平均もTOPIXも上がって当たり前」(同)なわけだ。
彼らが買い戻しを進めているのは、「電子部品や半導体の市況にようやく下げ止まりの気配が出始め、企業が抱える在庫も減り始めてきた」(欧州系運用会社)ことが背景にある。「株価的にも相当な割安圏に落ちてきているため、ここからは短期のリターンが十分見込める」(同)。こうした見方を基に、海外年金が海外のハイテク株の見直しを進め、この一環として日本でも同業種の株を買い戻した。しかしスタンスは依然「短期」のままだ。
海外勢の動きに敏感な国内投資家もこれに追随。小泉改革の目玉政策である都市再生をテーマに人気化し、ITバブル後に投資資金の避難先となっていた「電鉄・不動産・小売り」などのディフェンシブ銘柄が、ハイテク株への乗り換えのために一斉に売りを浴びた。ハイテク株が直近の高値を付ける一方で、ディフェンシブ銘柄が安値を付けているのは「ポートフォリオ入れ替えに伴う象徴的な値動き。日本株全体の時価総額が増えたわけではない」(銀行系証券)といえよう。
●生保も放出、拭えぬ需給の重し
機関投資家の表情がさえないのは、こうした要因だけではない。東京海上火災保険<8751>子会社への営業部門譲渡を発表した朝日生命保険や、三井住友海上火災保険<8752>への子会社損保の譲渡方針を固めた三井生命保険など「大手生保の一角がリストラのために保有株式の売却を明らかにし始めた」(米系投資信託)ことがある。
朝日・三井両生保の売却予定額は、合計で約1兆円に上る。売却のタイミングや対象銘柄は不明だが、「対象となりそうな系列企業の株価は、当面上がりそうにない」(同)との見方が定着。「大手銀行が持ち合い解消売りにラストスパートをかける中での生保のリストラは、需給面での重しにならないはずがない」(同)と嫌気されている。
ハイテク株への買い戻しがほぼ一巡した19日辺りからは、「機関投資家が出遅れ銘柄物色と称して銀行株まで買い始めた」(米系証券)。銀行株は相場の悪役として嫌われ続けてきただけに、「銀行株の反発で相場は底離れしつつある」(大手証券の個人向け営業担当者)とのセールストークにもつながり始めた。
ただ、銀行株は依然不安要因が山積しているため、「積極的に買いたい向きは皆無で、いつでもポジションから外せるようにしてある」(先の米系投信)というのが実態だ。相場底打ちを唱えるセールストークには、まだまだ慎重なスタンスで臨む必要があるようだ。
(相場 英雄)
・銀行株急落は事業法人の見切り売り〜持ち合い解消活発に
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/13/20011113114002_85.shtml