笑いが止まらない消費者金融〜倹約文化はどこへ〜経営努力、外部環境、日本人変質による顧客増(ウエッジ11月号)

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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 20 日 12:44:25:

借りるから貸すのか、貸すから借りるのか。個人向け無担保ローンを主力とする消費者金融(サラ金)が若年を中心に顧客層を拡大させ、急速に業容を広げている。
業界の統計によると、2000年で20代の利用率は10%強、30歳代で20%弱と1990年代初めからほぼ倍増した。
就業人口6500万人に対して消費者金融の顧客は1000万人。
不況下なのに、どうして顧客増が可能なのか――。
検証すると、消費者金融自身の経営努力、意外な外部環境の追い風、そして後ろめたさを感じなくなった「日本人の変質」が浮かんでくる。

●的を射たテレビ広告戦略 若年層の新規顧客獲得に貢献

「お金がいくらでも出てくるんですよ、この機械!」。大学を卒業したばかりという後輩のI君(25歳)と夕食を共にした時である。手持ちがなかったI君は、なにやらカタカナ文字の看板がかかった駅前のキャッシュコーナーへ筆者を連れていった。「サラ金だ!」思わず、説明を求めた。
「いつも、何のために借りるの?」
「旅行とか、食事とか、洋服とか。あと、麻雀や競馬の戦費ですかね」
「金利がいくらか知っている?」
「25%ぐらいかな。年10万円借りても月2000円の利息ですよ。友達も結構借りています」
「…………」
目下、業績は絶好調。消費者金融は日本の産業界の中で、唯一気を吐いている。武富士、アコム、プロミス、アイフルの大手4社はバブル崩壊後の90年代を通じて連続最高益を更新。ソニーや富士通など、景気の牽引役が最近は相次いで業績を下方修正しているが、消費者金融にIT(情報技術)バブルの崩壊は「どこ吹く風」である。大手8社の融資残高は約5兆6000億円と過去5年間で7割ほどの伸び。大手各社の格付けはトリプルB〜ダブルAクラス(日本格付研究所)と不良債権処理に手間取る都市銀行を上回る。
こうした拡大路線のキーワードは「顧客開拓力」。もともとは「年収200万〜600万円で工場等に勤務する40歳以上の男性労務職者」が顧客の中心だったが、90年代からは、「若年層」をターゲットの中心に据えた。消費者金融の主力商品は50万円までの無担保小口ローン。なるべく貸し倒れと呼ばれる焦げ付きを抑えるために「広く浅く貸す」のがモットーだ。それだけに、良質の新規顧客獲得が拡大戦略の生命線となる。
Vリーグに所属する女子バレーボールチーム「イトーヨーカドー・プリオール」。この1978年創立の名門が今年8月、「武富士バンブー」に生まれ変わった。武富士がイトーヨーカ堂からチーム経営を引き継いだのだ。同じ月には、業界4位のアイフルが自社イメージのタレント発掘イベントを芸能プロダクションばりに全国で展開。ゴルフ、プロ野球、歌謡大会を問わず、最近はさまざまな広報活動で消費者金融の冠名が目立ってきた。
これらは単なるメセナ活動ではない。「広報活動で獲得した新規顧客は、まだ借り入れ経験がない分だけ焦げ付く確率が低い」というメリットを計算した、したたかな処女地開拓戦略である。スポーツや芸能分野は若者に好まれる。70〜80年代にかけて、大手の既存顧客のうち20〜30歳代の若年が占める割合は20〜30%しかなかったが、現在は50〜60%と40歳超のオジサン層のウエートを抜いた。
「中学生の娘が『♪きーろい看板、プーロミス♪』と消費者金融のコマーシャルソングばかりを口ずさむのですよ。強烈な刷り込み効果ですね」。大手電機メーカー課長のBさん(43歳)は、困惑気味に打ち明ける。それもそのはず。大手4社はここ2年間で40億〜70億円もの広告宣伝費を増やしており(今年は4社合計で800億円と過去2年で約4割増)、その増額分のほとんどが若年層への影響が強いテレビ広告に費やされている。
例えば、大手の中で最も成長したアイフル。90年3月期の広告宣伝費は63億円にすぎなかったが、今期は197億円まで増加。営業貸付金残高は1兆3000億円とほぼ10倍の規模にまで拡大している。
消費者金融の新規顧客開拓には、マスコミの規制緩和が大きく貢献している。TBSが4月に消費者金融のCMを解禁し、過去2〜3年間でテレビ朝日など主なキー5局がCM放映を24時間枠で開放した。もともと、消費者金融は社会的にそぐわない業種として、広告規制の網が張り巡らされていた。が、広告収入減に苦しむテレビ、ラジオ局、新聞社は消費者金融の資金力を当てにし、続々と広告規制を解除している。
業界アンケートによれば、消費者金融の認知経路としてテレビCMを挙げた回答者が80%と10年前から倍増、ティッシュ配りを抜いてトップに躍り出た。テレビCM強化策は新規顧客、とりわけ若者への影響が大きいことを見抜いた戦略だ。最近の新規顧客のうち、ほぼ3分の2が若年層と既存客の比率を大きく上回るだけに、狙いが的を射ていることが証明されている。

●なぜ収益性が突出しているのか 追い風となった外部環境の変化

このデフレの時代に、消費者金融大手8社の売上高営業利益率は4割強。収益性も突出している。通称、「金融界のギアナ高地」。「サラ金」が一種の蔑称である事実が示す通り、消費者金融は銀行が避けてきた分野だ。昨今、プロミスと三和銀行、アコムと東京三菱銀行といった組み合わせで、都銀が消費者金融と提携するケースが増えているが、信用力の高い中年サラリーマンが対象で、業界が得意とする低所得者層ではない。
「ポイントは日本人の性格だよ」。消費者金融大手のT社長は強調する。T社長によると、消費者金融は、「借りたものは返す」という日本人が古来からもっている生真面目な性格を利用した商売だという。T社長は、さらに付け加える。「通常海外では低所得であるほど金を返さない。だが、日本では『未返済は恥』という文化が染み付いているので、意外と低所得の人でもお金を律義に返したがるのだよ」
なるほど――消費者金融が海外に店舗を拡大しないわけである。変なプライドが邪魔している銀行も本格的には参入してこない。「業界差別」が超過利潤の源だったのだ。異業種の参入をはね付け、業界内の競争原理が働きにくい――こんなおいしいマーケットはないだろう。
90年代を通じて、外部環境の変化もプラスに働いてきた。実は、3回も「タナボタ」に恵まれている。第1は90年代半ばにかけて、日本にベンチャー企業がほとんど登場しなかったこと。このため、公開引受部と呼ばれる証券会社の投資銀行部門は、手数料欲しさに消費者金融に着目。消費者金融をベンチャー金融会社と呼称し、プロミス、三洋信販など大手の株式を次々と上場させた。株式上場は、イメージ向上と集客力に役立つ。
2度目が日栄など、事業者金融である商工ローンのずっこけ。一般に、消費者金融大手の顧客の1〜2割程度が飲食店など自営業者。彼らは自身が経営する店の運転資金にするケースが多く、日栄や商工ファンドなどは潜在的な競合先である。だが、商工ローン会社は強引かつ詐欺的な契約や債権回収方法が社会問題化したために、自ら競争の土俵から降りてくれた。
極め付けは、ノンバンク社債法の成立だ。もともと、出資法の規制によって、ノンバンクは社債やコマーシャルペーパー(CP)といった資本市場で調達した資金を、直接融資にまわすことができなかった。が、99年5月の同法施行により、金融庁に登録すれば、それが可能になった。ノンバンクのアキレス腱ともいえる資金調達面が補強されたのは大きい。
例えば、業界3位のプロミスを見てみると、同法施行前の98年3月期に7%だった直接調達比率(有利子負債のうち社債・CPなど市場調達が占める割合)が2001年3月期には27%に上昇、資金調達の幅が拡大した。その間、調達金利は0・4%低下している。大手では軒並み直接調達比率を上昇させて、業容拡大のタネ銭を確保。数パーセントで調達した資金を20%超で貸すという事業モデルが完成した。
もちろん、精緻な与信リスク分析など自助努力も見逃せない。大手では不良債権の発生比率である貸倒償却比率が2〜3%にとどまる。朝のティッシュ配り、与信から督促まで、業務はすべてコンピュータでマニュアル化。営業店と本店はシステム統合され、人件費などコスト管理でもギリギリまで抑えている。4月にプロミスがハーバード大学のビジネススクールの研究対象となり、国際的に消費者金融の高金利ビジネスは注目されている。

●増加する自己破産者件数 借金文化のツケは誰が払うか

「高収益というが、人の弱さに付け込んでいる」――。多重債務者の救済を中心に活動を広げる宇都宮健児弁護士は強調する。なぜか。2000年の自己破産者件数は13万9281人と過去最高を更新、今年も昨年実績を超える勢いだ。「消費者金融の顧客増は自己破産の増加の遠因である」との見方が国内では根強い。「消費者金融会社の構造として、顧客は大手の借入金を中小で返すのが端緒となり、多重債務のスパイラルにはまるケースが多い」(弁護士)という。
消費者金融白書によると、「生活費や小遣いが不足した場合」の対応策として、91年に「親や身内で借りる」が23%だったのが98年では13%に低下。一方、「クレジットカードや消費者金融会社からキャッシングする(割賦販売ではなくてお金をそのまま借りる)」が20%から32%に上昇している。消費者金融の台頭と重なるようにして、「倹約」という日本人の美徳がなくなってきた。
東京地裁(東京・霞が関)の破産申し立て受付係は、毎日のように忙しい。自己破産申請から破産が決定して免責を得るまでの期間が半年と、これまでの1〜2年から大幅に短縮し、申立者が増えているためだ。多重債務者の事態が深刻化する前に立ち直らせるための手続き簡素化が背景にあるが、自己破産に対する抵抗感がなくなり、安直に消費者金融からお金を借りるという悪循環シナリオが生まれつつあるようだ。
積極的な広告活動を通じて、こらえ性のない飽食の世代といえる若年層から日本人独特の気質を剥ぎ取った消費者金融。「人に会うのが面倒くさい」というテレビゲーム世代に、対面の必要がない自動契約機を売り込んだ戦略も経営的には絶妙だ。だが、その繁栄は決して自助努力だけではなかったことを肝に銘じるべきである。
日本人を変質させてしまった理由を消費者金融だけに帰するのはフェアではないが、広告活動の影響力を見る限り、少なくとも相乗効果はある。借り入れ、そして返済の過程において、日本人が従来の律義さを完全に失えば、どうなるか。自己破産がさらに増加して社会問題となり、金融庁から自粛命令が出るだろう。焦げ付きが増えれば、消費者金融は29・2%という法定上限金利内で営業することが難しくなる。借金文化という社会現象に便乗したツケを、意外にも消費者金融自身が支払う日も近いのかもしれない。

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