米国テロは「世界恐慌」再来の引き金となるか?!〜状況証拠はこれだけある、懸念される日本への影響(ウエッジ11月号)

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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 20 日 12:15:13:

米同時多発テロによる金融システムの崩壊懸念は、1930年代の世界大恐慌を彷彿させる。
世界的な同時株安と経済社会を取り巻く不信の連鎖、そしていつ終わるとも知れぬ軍事行動。
米国独り勝ちを前提とした冷戦後の国際システムは音を立てて崩れ、日本を含めた世界は今、混沌の渦にのみ込まれようとしている。

●恐慌モードに入った米国経済 30年代の経験は生きるか

世界経済は大きな混沌の時代に入ろうとしている。テロ直後の英経済誌『エコノミスト』(9月15日号)のタイトル、「ザ・デイ・ザ・ワールド・チェインジド(世界が変わった日)」がすべてを物語る。今回のテロによる損害額は200億ドルとも300億ドルともいわれるが、物的な被害とは別に米国主導のグローバリズムに代表された経済社会のあり方が、揺さぶられた。
21世紀初頭に起きた今回の事件は、時計の針を再び「不況と戦争」の時代だった1930年代に引き戻そうとしているのではないか。米国が「永遠の繁栄」を夢見た20年代と、ニューエコノミー(新しい経済)を謳歌した90年代――。米国株高を原動力とする繁栄の時代は酷似している。
株式市場から最初に、舞台が暗転したのもそっくりである。当時は1929年のウォール街の大暴落(暗黒の木曜日)がきっかけとなった。今回は2000年4月のナスダック(米店頭株式市場)のバブル崩壊で、情報技術(IT)の宴が終わった。
IT投資の落ち込みで急減速する米景気を、消費がなんとか下支えするなかで、同時多発テロが米国を襲った。今度は、消費関連などオールドエコノミー銘柄の多いニューヨーク・ダウ工業株30種平均が直撃された。9月17日に取引を再開した後の1週間で、ニューヨーク・ダウは実に14%も急落した。これは、大恐慌下の33年7月に次ぐ、史上第2位の下げである。
29年のウォール街暴落を機に、30年代の大不況期に突入した米国では、シャボン玉がはじけるように経済活動が急速に収縮した。33年から34年のボトム時には実質国内総生産(GDP)やマネーサプライ(通貨供給量)が29年のピーク時に比べて30%以上も落ち込んだ。消費者物価も30%近く下落している。
経済活動がこれほど急速に落ち込んだのは、銀行が相次いで取り付けに遭い、金融システムがショック死を起こしたからだ。なすすべもなく退陣したフーバー大統領の後を襲ったルーズベルト大統領は、バンクホリデー(銀行の一斉業務停止)を宣言し、銀行の整理をせざるを得なかった。
もうひとつ、経済政策の対応のまずさが指摘できる。均衡財政を最優先するフーバー大統領は、財政面から思い切った景気刺激に踏み切るのをためらい、民間需要の落ち込みをカバーできなかった。積極財政に転換したとされるルーズベルト大統領の政策も、入ったり来たりだった。
これに対して、現在のブッシュ政権の経済政策は、景気の落ち込みの回避に全力を尽くしている。米連邦準備制度理事会(FRB)は矢継ぎ早に金融緩和に踏み切り、ブッシュ政権も所得税減税に乗り出した。大きな損害を受けた航空業界に対しても、補償に出ている。30年代の大不況の経験に学び、手を打っているから大丈夫――と、エコノミストたちはいいたげだ。

●30年代と不気味に類似する 国際的なモノとカネの流れ

だが、10年間続いた米景気が変調を来し始めた局面で、今回のテロが起きたという間の悪さを見逃してはならない。まず、貿易取引のスパイラル(螺旋)的な落ち込みだ。すでにIT投資の急減を機に、日本やアジアの対米輸出はつるべ落としとなっている。米国のクリスマス商戦の不振がはっきりしている以上、米国への荷動きが一層落ち込むことは避けられない。
米経済学者キンドルバーガーの名著『大不況下の世界』によれば、30年代の世界貿易はくもの巣の真ん中に吸い込まれるように収縮していった。シンガポールのGDPが2・四半期連続で2桁のマイナスになっているのをみても、歴史は繰り返す恐れがある。
加えて、当時も今も世界的なデフレが進行しつつある。象徴的なのは原油価格だ。北海ブレントの相場は9月11日のテロ直後、一時1バレル =30ドル台に跳ね上がったが、その後20ドル台前半に下落した。他の国際商品市況も大幅安だ。商品市場は戦争によるインフレという側面よりも、経済活動の委縮に伴うデフレを織り込んでいる。
そしてマネー。30年代の世界大恐慌は、最大の債権国である米国が海外から投資資金を引き揚げたことで加速した。これに対して現在の資金フローは、最大の経常赤字国である米国が欧州や日本から投資資金を集め、経済成長や株高の原動力にしたうえで、全世界に再投資する形をとっている。
言い換えれば、同時テロをきっかけに対米投資が細れば、米国の株式市場は不安定となり、米国勢による海外からの投資資金引き揚げが発生する。テロ発生後、外国人投資家が日本株を売り越していることからみても、世界的な株安連鎖は続くとみておいた方がよい。

●急速な所得と技術格差の拡大 グローバル化への反発も

今回のテロは米国主導のグローバリズムへの挑戦であるという意味で、アングロサクソン主導の国際秩序に軍事力で挑んだ30年代の日本やドイツを彷彿とさせる。当時の日独が新秩序を唱えて冒険主義に走った背景には、米英仏などの「持てる国」が保護主義とブロック経済に走ったという事情が見逃せない。これに対して現在の米国は、グローバル化を進めている。
ブロック化とグローバル化。方向は逆だが、グローバル化の裏側で、急速に所得と技術の格差が拡大している。サミットや国際通貨基金(IMF)総会のたびに、反グローバリズムの嵐が吹き荒れるのは、偶然ではない。
米国主導の繁栄の象徴である世界貿易センタービルの瓦解は、冷戦終焉後10年間にわたって続いた、世界をあめんぼうのように一体化するグローバル化の流れが頓挫したことを物語る。最適地生産・最適地販売を図る米企業にとって、グローバル化はもっとも都合のよいシステムなだけに、その前提が揺らぐことは米経済の成長の基礎を揺るがす。
30年代との比較では、イデオロギーと戦争の時代という類似性も見逃せない。今回のテロ後、米国のメディアでは「アメリカズ・ニュー・ウォー」(CNNテレビ)という言葉が躍っている。先代のブッシュ大統領が指揮した90〜91年の湾岸危機・戦争を引き合いに出すメディアが多いが、ブッシュ政権の閣僚たちは、短期決戦で終わるとは思っていない。
何しろ相手は、イスラム原理主義に基づくといわれるテロリストたちである。ナイフでジェット機を乗っ取り、ジェット機そのものを爆弾に変えてしまうテロを、誰が事前に想像し得ただろうか。今後も米国の主要都市や軍事基地は想像もし得ない第2、第3のテロの標的になりかねない。
イスラム原理主義がテロリストの温床になる背景には、グローバリズムの影の部分としての絶望的な格差の拡大が存在する。30年代にはファシズムと共産主義というイデオロギーが絶望と不満を吸収したが、ハンティントン教授が指摘するように、今や「宗教」が戦争(ジハード)の時代の原動力になっているのである。

●崩れた日本の米国頼みの回復 迫り来るIMFの日本支配

再来する「30年代モード」は、日本にとって最も苦手とする世界である。30年代に軍国化に走った日本は太平洋戦争で完敗して以来、日米安保体制の下で、軍事や防衛の問題から「降りて」きた。今回はさすがに自衛隊が米国などの軍事行動を後方支援するが、どこまで覚悟しているのだろうか。
難民キャンプでの救援活動などと気楽にいうが、難民キャンプの中にはタリバンの支持者や予備軍がいる。ワイドショーの話題を集める外務省の下で、危機に臨んで適切な外交が行えるのだろうか。
30年代以降の日本が国を誤って、全世界を敵に回す戦争に突入したのは、欧州でのドイツの短期的な勝利に幻惑されて、英米(アングロサクソン)の底力を見逃したからだ。日米安保条約が存在する以上、今回は大きく国を誤ることはあるまい。それにしても、ブッシュ政権の登場を機に日本外交がつかみかけた地位向上の機会は完全に失われた。
中国重視のクリントン政権に対して、ブッシュ政権がせっかく日米同盟重視を打ち出したのに、軍事がモノをいう局面では、米国はむしろ中国の協力に頼らざるを得ない。大国外交の時代にあっては、いきおい日本の存在感は低下する。米国のメディアに登場する順番としては、ロシアのプーチン大統領、中国の江沢民国家主席の方が、小泉首相より前であることがすべてを物語っている。
そして、経済。米国頼みの景気回復シナリオが破綻したのはいうまでもない。前回の湾岸戦争に際して日本は130億ドルの協力をしながら、感謝もされなかった。今回は財政赤字が膨れ上がったなかで、前回以上の協力を求められようが、日本経済は果たして耐えられるのだろうか。
実はブッシュ政権が最も心配しているのは、日本の金融システムが自己破壊を起こし、日本が世界恐慌の引き金を引くことだ。すでに30年代型の大不況モードに入っている世界経済にとっても、それは最悪のケースである。9月25日、急遽訪米した小泉首相に対して、ブッシュ大統領が軍事面の貢献と並んで不良債権処理を求めたのは象徴的だ。
日本が直ちにできる「後方支援」は、先延ばししてきた不良債権処理にほかならない。余裕のなくなっているブッシュ政権はもう黙っていまい。歴史がすさまじい音を立てて繰り返す中で、太平洋戦争後のGHQによる対日占領のような、IMFによる日本経済の「占領」の日も遠くないとみておくべきだろう。

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