企業淘汰と再編は“鬼の復権”から始まる〜金融庁「特別検査」スタート(PAXNET)

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投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 19 日 20:36:44:

金融庁の大手銀行対象の特別検査(以下、特検)がスタートした。「かつてない厳しさ」「存在を賭けたメス入れ」と言われている一方で、特検実施が明らかになったあと特検そのものの内容がどの程度のものになるのか見極められない、といった理由で外人投資家による大手銀行株の失望売り続けている実態もある。だが今回の特検では日本の金融検査のスタイルを確立し、検査の“鬼”とまで言われた人間が指揮を執っていることを忘れてはならない。金融庁は「本気」なのだ。鬼の復権の後には何が待っているのか―日本の政治、経済、産業に嵐が吹き荒れるかもしれない。

●検査は銀行だけでない、経営不振企業にたどりつく

特検は11月12日の三井住友銀行<8318>、第一勧業銀行、富士銀行の3行を皮切りに、19日中央三井信託銀行<8408>、21日からは三和銀行に入る。その後、27日あさひ銀行<8322>、30日大和銀行<8319>、12月に入ると3日東京三菱銀行、4日三菱信託銀行、5日東洋信託銀行、7日日本興業銀行、10日東海銀行と住友信託銀行<8403>、13日から安田信託銀行<8404>に入るスケジュールを組んでいるのだ、という。
金融庁は、こうした特検に関する情報が漏れる事にひどく神経を尖(とが)らせている。検査の日程が表に出るだけで、市場は検査対象の企業を探り出そうとする。しかしことは、それだけにとどまらない。その銀行がメインをつとめる経営不振企業の査定が厳しく見直されたという情報が1度でも流れれば、その企業の株は一斉に売り浴びせられ市場からの退場を突き付けられる可能性がある。事実、永田町では口の悪い人間が特別検査を大手流通企業のアルファベットの頭文字を冠して“○検査”と呼んでいるのだから。

●特別検査は何をあぶり出すのか〜売り浴びせの銀行株

特検にあたる検査官は、短期間で集中的に検査を終えるため、ベテラン中心で構成している。検査局の精鋭たちばかりが集められている。検査の期間は長くて2週間、ベテランをヘッドに検査班を3、4チーム編成し、少数精鋭部隊が順次検査に入っていく。マイカルショックを受け、特検は要注意先の企業を貸し出し残高が100億円以上の大口融資先で、正常先の一部についても対象とするとしている。それを最新の格付けや株価の動向などを参考に債務者区分が適正になされているかを調べていく。事前に銀行側から対象企業の査定資料の提出を受けた金融庁は、すでに切り捨てる企業と救う企業のリストを作成し終えている、という。つまり、金融庁は検査に入る時には、いくつかの企業について生死に関わる結論を出している可能性が極めて高い。
今回の特検は、不良債権処理を急ぎたい小泉首相の強い意向から実現したものだ。
しかし、この特検の実施が表明されて以降、いったんは上昇した大手銀行株が外人投資家の失望売りでどんどん下落を続けている。特検そのものの内容がどの程度のものになるのか見極められない所に問題がある、と指摘する声が上がっているのだ。

●「検査の鬼」の復活

では金融庁はどこまで「本気」なのか。特検は柳沢伯夫金融担当相が、官邸と竹中平蔵経済財政担当相らに押切られて実現したもので、金融庁は嫌々検査に踏み切ったと表向きにはみられている。しかし、金融庁にはこの特検に復権を賭けている人がいる。この夏、検査局長に返り咲いた五味廣文氏がその人。五味検査局長は、前身の金融監督庁検査部長時代、未曾(ぞう)有の金融危機の中で長銀、日債銀を破たんに追い込んだ張本人だ。やると言ったら政治や官邸の意向に屈せず徹底してやる、それが五味流であり、その姿勢を貫き日本の金融検査のスタイルを確立した、と言われている。しかし、五味氏が外部に飛ばされて以降、金融庁の検査部門は森昭治金融庁長官の「調整型」の金融行政も前にキバを抜かれ、これといった成果を挙げられずに来た。
五味氏の復活は検査官たちの意気込みを伝えるのに十分すぎるとまでいわれる。特に、五味「検査部長」時代を知るベテランにとっては、検査局、復権を賭けた戦いなのである。
ある金融庁幹部は「五味という猟官のもと検査官は猟犬と化している」と話し、検査結果の報告が他の部局に来るのは、検査の対象企業の命運が決ってからで政策的判断など調整の余地は無いとあきらめ顔だ。検査の鬼「五味」が、いま復活しようとしている。生贄(いけにえ)となる企業を1つ2つみつくろって検査官にお土産に渡せば事が済むであろう、とタカをくくっている銀行関係者がいるとしたら、痛い目にあうかもしれない。

●検査の秘密保持は大丈夫か

しかし、五味体制の特検に何も問題が無いわけではない。内部の情報管理がそれだ。
個別債務者には、暗号を用いるなど仮に部外に資料が流出しても判らないようにしてある、と言われるほどの気の使いようだ。だがそれでも情報の漏れ出る穴を完全に塞(ふさ)ぐ事ができるのか。今回は対象企業を特定しての検査であり、その企業のメインバンクの債務者区分に他の銀行の区分を揃える、いわば横串を刺すものになる。
いくら金融庁が厳しく情報を管理しても、銀行関係者の全ての口を封じることができるかの疑問が残る。それに金融庁には、門外不出の資料や情報が幾度と無く流出した「前例」があることも忘れてはならない。

●特別検査が招くものは

金融庁が本気になればなるほど、大手銀行の引当金の積み増しが急増する。そうなれば、資本不足に陥る大手銀行が間違い無く出てこよう。そのシナリオを想定して公的資金の再注入論がくすぶってくる。これ以上の国家関与を嫌う大手銀行各行は、来年3月期決算で大赤字、配当見送り、行員の給与カット、人員整理、法定準備金の取り崩し、それにトップの首・・・などなど、すべてをかけて臨まざるを得ない状況に陥っている。
一方で、特検自体が思わぬ方向に波及しつつある。大手銀行は、特検で大口の債務者の処理に手をつけざるを得ない。そうなれば、大手銀行が国際的に見て十分な自己資本比率を確保するために何をするか。いわゆる“貸しはがし”である。それも息も絶え絶えの企業からだ。これでは、かつての金融危機の当時と何らか変わらないではないか。金融庁は、新生銀行の性急な融資の回収に対して水面下で「行政指導」を行ったが、事態が改善するとは思えない。こうした事が表面化した時、最も危惧(ぐ)されるのは、政府が不良債権問題の処理の手を緩め、危機的な事態の先送りしようとする事だ。かつて長銀、日債銀の危機の際、大き過ぎるから潰せないという「常識」を覆した五味局長が、金融危機の再来を恐れず特検に臨む事ができるのか。
それは、検査後に表面化する企業の淘汰と再編が如実に物語ることになろう。
○URL
・金融庁
http://www.fsa.go.jp/
・「金融再生最前線」〜再編第2幕はあさひ銀行の行く末から動き出す・上
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/15/20011115092018_47.shtml
・「金融再生最前線」〜露呈した三井住友のアキレス腱、どうなる最終判断・上
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200110/25/20011025122517_40.shtml
・「金融再生最前線」〜露呈した三井住友のアキレス腱、どうなる最終判断・下
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/01/20011101111012_87.shtml
・「金融再生最前線」〜すでにソフトバンクは「過去の話」?
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/08/20011108102004_45.shtml
・銀行株急落は事業法人の見切り売り〜持ち合い解消活発に
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/13/20011113114002_85.shtml
[東山恵 2001/11/19 13:49]

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