投稿者 sanetomi 日時 2001 年 11 月 19 日 18:01:45:
今後の金融機関行動や企業金融の動向 には十分注意していく必要がある」――。日本銀行が19日公表した金融経済月 報の中で注目すべきは、潤沢な資金供給にもかかわらず、企業金融の2極化が 一段と鮮明になってきたことだ。日銀は“金融不安の兆し”に強い警戒感を示 し始めている。
中小企業の資金調達は厳しくなる
日銀は金融経済月報「基本的見解」の金融面で、「金融市場の状況や金利水準からみれば、きわめて緩和的な状況が続いている」としながらも、「民間銀行 や投資家の信用リスクテイク姿勢は幾分慎重化しており、信用力の低い企業や 中小企業では資金調達環境が厳しくなる動きがみられている」と指摘した。
さらに「民間銀行は優良企業に対しては貸出を増加させようとする姿勢を 続ける一方で、信用力の低い先に対しては貸出姿勢を慎重化させる傾向が窺われる」、「社債、CPなど市場を通じた企業の資金調達環境は低格付け企業の発行環境が幾分悪化している」などと分析した。
神経を尖らせる日銀
アジア金融危機に大型の国内金融機関の破たん、ロシア危機やLTCM(ロ ングターム・キャピタル・マネジメント)破たんが重なり、急激な信用収縮を 引き起こした97、98年の金融危機。
信用力が低い企業だけでなく、大手優良企業までが軒並み資金繰りに奔走 した当時と比べ、今はまだそこまで深刻にはなっていない。もちろん、日銀はこうみている。
だが、「トリプルB」以下の低格付け企業の社債発行が事実上ストップ、企 業倒産件数も月1600件ペースから1800件ペースに急増していることなどを受けて、金融機関や投資家のリスクテイク姿勢が明確に2極化し始めたことに神経を尖らせている。
株価の低迷、金融庁による大手行への特別検査、来年4月に迫ったペイオ フ凍結の解除。今後の情勢次第では、金融危機時のように、信用力の低い企業だけでなく、大手行まで巻き込んだ信用不安が生じないとも限らない。
まさに、情勢の悪化とともに金融面の動向にも気が抜けない局面に入ってきたといえそうだ。
IT不況は来春で一巡か
景気の情勢判断については、自動車の販売台数が9、10月と弱かったことな どを受け、個人消費を前月の「総じてみればなお横ばい圏内にあるが、このと ころやや弱めの指標が増えている」から「徐々に弱まりつつあるようにうかがわれる」に下方修正した。
それとともに、総合判断も「生産の大幅な減少の影響が雇用・所得面を通じて個人消費にも及び始めており、調整は厳しさを増している」に引き下げた。
先行きについては、まず、情報技術(IT)について、「米同時多発テロ事 件以降、世界経済は一段と減速しており、そうした中で情報関連財の最終需要も、当面は低調に推移する可能性が高い」と指摘した。
そのうえで、一部IT関連メーカーの出荷が増えていることや、DRAM (記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)価格が持ち直してい ることを受け、「世界同時的な情報関連財の在庫調整は来春辺りまでには概ね一巡するとの見方が多い」との判断は据え置いた。
今後の焦点は米経済と国内金融問題
次に、ゼロ金利ローンの影響で、米自動車販売が急増したことを受け、対 米輸出がすぐに大きく落ち込むことはないとの判断から、前月の「(テロ事件の 影響から)先行き不確実性はむしろ強まっている」との記述を削除した。
その代わりに「米国個人消費の不振が長引けばわが国においても消費財等の輸出減少を起点に新たな調整が誘発されることも考えられる」と、若干マイルドな表現に書き換えた。
今後は、底打ちの兆しを見せ始めた情報技術(IT)関連部品の動向、ゼロ金利ローン後の米自動車販売動向の行方、さらには、国内の金融不安の兆しが本物の危機に昇華するかどうか、といったところが焦点となりそうだ。