投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 17 日 08:56:12:
来年四月のペイオフ解禁まで五カ月を切り「預金」を巡る金融機関同士の争奪戦が激しくなってきた。預金の流出に備えて、地方銀行や信用金庫など中小金融機関が防衛策に知恵を絞る一方で、大手銀行も「信頼」をバックに新規の預金獲得に余念がない。ただ、不良債権が膨らんでいることもあって最近は、大手金融機関に対する預金者の目も厳しさを増している。各金融機関とも“健全性”を訴えるのに懸命だ。(小島清利)
▽預金を自衛
「粛々と万全の備えをとるだけ」。ペイオフ解禁の再延期をめぐる議論が永田町などで浮上している中、地方銀行協会会長の平澤貞昭横浜銀行頭取は十四日の定例会見でこう強調した。
「ペイオフを再延期したら市場の信頼を失うだけ」(大手都銀)との声は、銀行業界の内部にもあるが、こうした議論とは別にペイオフ解禁をにらんだ預金者のマネーは、早くも水面下で激しく動き始めている。
例えば、日銀の金融経済統計月報(十月)をみても都市銀行、地方銀行、第二地銀を合わせた定期預金の総額(八月)は、今年一月に比べ十八兆円も減った。来年保護対象から外れる預金とそれ以外で格差が出ているのは一目瞭然(りょうぜん)だ。大和総研の伊東洋一主任研究員は「少しでも安全なところへ預金を動かし、当面の状況を見定めようという行動」と指摘する。
▽サバイバル
ペイオフ解禁は、大手銀行に比べ経営体力差のある中堅・中小の金融機関にとっては、より高いハードルになる。このため、大手行への移し替えに走る動きを警戒し、生き残りを図るための取り組みも始まっている。
第二地銀の福岡シティ銀行は八月から、関連の長崎銀行との間で預金の取り次ぎサービスを始めた。例えば、預金者から二千万円を預かる場合、保護の上限である一千万円ずつにして二行に分けて預金する仕組みだ。
また広島銀行と福岡銀行が、銀行の心臓部ともいえる経営システムの共同化に乗り出すなど、全国各地の地銀などで、協力体制が加速。営業地域の重ならない銀行同士が大手行に対抗するため連携している。
▽預金者の目
ただ、多額の不良債権を抱える大手銀行もペイオフ解禁をきっかけに、預金者による銀行選別の厳しい目にさらされることは確かだ。
「大手銀行にとってバランスシートを早く健全化し、収益構造を高める青写真をどう描くかが、預金者の期待にこたえるための手段」とドイツ証券の秋場節子ディレクターは指摘する。
来週末からは銀行の中間決算の発表が本格化するが、各行とも厳しい業績が予想されている。市場だけでなく、預金者が納得できる経営再建策を示さねば預金者離れも進みかねない。
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≪ペイオフ≫
銀行などの金融機関が破たんした場合、1人につき一定金額と利息分までの預金の払い戻しを保証する制度。現在はすべての預金などが元本・利息ともに保証されている。平成14年4月からペイオフが解禁されると、定期預金などについては元本1000万円までとその利息は保証されるが、1000万円を超える預金は削減される可能性がある。さらに15年4月からは、普通預金や当座預金などについても同様になる。
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≪預金保険制度の対象商品≫
▽対象商品
《平成14年3月末までは全額保護》
定期預金、定期積み金、貯蓄預金、通知預金、元本補てん契約のある金銭信託(ビッグなどの貸付信託を含む)、金融債(保護預かり専用商品に限る)など
《平成15年3月末までは全額保護》
当座預金、普通預金、別段預金(振り込み資金などの一時的な管理をする預金)
▽対象外商品
外貨預金、譲渡性預金、元本補てん契約のない金銭信託(ヒット、スーパーヒットなど)、金融債(保護預り専用商品以外)など