投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 16 日 21:55:51:
外資系証券が日本市場から相次ぎ撤退している。1300兆円といわれる個人金融資産の奪取を狙い、90年代始めから上陸を続けてきた外資系証券会社だが、戦いの土俵に乗ることなく敗れ去った。株式委託手数料の完全自由化で、外資系が日本市場に攻め入るに十分な整備がなされた半面、投資リスクに対し慎重な構えを崩さない日本国民。
東京市場を国際金融センターにしようと、大蔵省(現財務省)がごり押しした金融ビッグバンだが、自由化の波は意外にも外資系証券を真っ先に跳ね飛ばす結果となっている。
●本格化する淘汰〜「ネット証券は2005年までに6社に集約」?
「ネット証券は2005年までに6社程度に集約される」。日興ビーンズ証券の首脳は、ネット証券が急成長を続けた昨年末、未来のネット証券市場をこう占った。インターネットを活用し、株式の売買を行うネット証券は、99年10月の株式委託手数料の完全自由化の「申し子」だ。1000円以下という超ディスカウント、そして株式市場の活況で、バブル経済崩壊以後市場に背を向けていた個人投資家を抱きこみ、一気に売買シェアを拡大させた。時代の寵児としてもてはやされ、外資や異業種からの参入が相次ぎ現在ではおよそ60社がネット取引を手がけるが、肥大化し過ぎた業界は今、容赦ない淘汰(とうた)の時を迎えている。
●後発外資が再編の主役に?
株式市場が下降線をたどり始めた昨年後半から、ネット証券の再編が進み始める。
富士通<6702>が独自に仕掛けた「IT証券」はあっさり日興ビーンズに吸収されたほか、伊藤忠商事<8001>系証券は三和銀行系と合併して「カブドットコム証券」が誕生するなど、異業種からの参入組の再編が進んだが、今度は外資系が再編の主役に取って代わりつつある。
仏の有力社であるソシエテ・ジェネラル証券が、今回日本におけるネット証券事業から撤退するほか、世界最大のネット証券、米チャールズ・シュワブが東京海上火災保険と組み、鳴り物入りで参戦したシュワブ東京海上証券も業績不振から撤退が確実視されている。知名度そして体力がない外資系証券はまったく勝負にならず、証券関係者によれば「現在多くの外資系証券が日本の準大手や中堅証券に身売りを打診している」といった状況だ。DLJディレクトSFGなど一部先行組を除き、後発外資の苦戦は今後も続くであろう。
●最大の関心はメリルの行方
苦戦を強いられるのがネット証券事業だけではない。現在「証券村」といわれる兜町最大の関心事は、メリルリンチの行方だ。メリルリンチは97年11月に破綻した山一證券の受け皿として、人員および店舗網を急拡大した。しかし、そのメリルでさえ個人(リテール)事業からの撤退がささやかれている。
今夏には独のドレスナー・クラインオート・ワッサースタイン証券、オランダのABNアムロ証券がリテール部門から撤退したのをはじめ、米モルガン・スタンレーも今回、リテール部門の「モルガン・スタンレー日本証券」の清算を決めている。メリルも不振のリテール部門を法人部門と統合するなど手は打っているものの、世界レベルでリテール部門の見直しを進めることから、「撤退は時間の問題」(関係者)といわれている。
●“自滅型撤退”の外資、松井証券が奮戦
未曾有の不況で、証券業界は傷み続けている。今中間期でも軒並み大幅赤字を強いられ、元気が良いのは松井証券<8628>ぐらいなもの。それだけに今回相次ぐ外資系の撤退は「日の丸証券」に敗れたというより、「自滅型撤退」。個人金融資産を海外に持ち出そうとした外資系証券の野望は、はかなく消えうせようとしている。
[井原一樹 2001/11/16 16:41]