投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 16 日 11:19:43:
経営再建中のダイエー<8263>が正念場を迎えている。格付け機関であるムーディーズやスタンダード＆プアーズ（S＆P）の格付けの引き下げを契機に株価は急落、ついに100円を割る局面も出る始末。高木邦夫社長は急きょ、会見を開くなど火消しに躍起だが、市場がダイエー再建に不信感を抱いているのは、主力銀行団の支援体制が不透明なことに加え、頼みの既存店の営業力回復ペースが遅いことが背景にあるからだ。ダイエーは、現行体制での再建がとん挫してXデーは来てしまうのか―。その不安と影響はかつての企業倒産とは全く比較にならないほど衝撃的になる可能性が高い。
●マイカルと似始めたダイエーの環境
「日用品や食品のメーカーがダイエーとの取引条件の見直しを開始した」。ある食品卸の幹部は、11月初旬、驚愕（がく）の事実を明らかにした。複数の取引先が支払いサイトを変更したり、商品を絞り込んだりと与信管理を厳格化、警戒感を示し始めたというのだ。実は破たんしたマイカルもそうだった。格付けの引き下げ、風説の流布、株価急落。そして取引先の与信管理厳格化により資金繰りが悪化、メーンバンクの第一勧業銀行に見放され、結局は破たんに追い込まれた。引き金は風説の流布だった、としても最後は信用力収縮による資金繰りの悪化だった。ダイエーはマイカルと極めて似たコースを歩んでいるように見える。
●主力4行次第〜貸出金利見直しでシナリオは大きく狂い始める
懸念される資金繰りについてはダイエーの主力4行（三和、東海、富士、三井住友）が支援を表明しており、高木社長もことあるごとに銀行の万全な支援体制が組まれていることを強調する。だが、ある関係筋は「すでに主力行のうち1行は（ダイエーを）要注意先債権から破綻懸念先に分類し直している」とすでに足並みが揃っていない現状を指摘する。加えて近く実施される金融庁の特別検査もダイエーにとっては大きな不安材料だ。ダイエーの2001年8月中間決算時点の有利子負債残高は約2兆3000億円。このうち主力4行のシェアは70％前後。4行に巨額の債権を金融庁が厳格に分類し直せという指示を出す公算が大きいからだ。しかも他企業よりも低利で優遇されている貸し出し金利の見直しを迫られれば、業績や財務の再建の前提が大きく狂い始める。
●使える資産はリクルート株、ドーム、ホテル・・・だけ
そのためダイエーは過剰債務が再建の足かせという見方を払拭するように、中間決算に合わせ、有利子負債の削減中期計画を発表している。連結のノンバンク、ダイエーオーエムシー（DOMC）<8258>分を除くと1兆8000億円になるが、これを2007年までに9950億円まで圧縮するという筋書きだ。約5年間で5400億円の資産を売却するとともに、毎年営業利益など830億円のキャッシュフローを生み出し、返済に回し有利子負債を圧縮するという。だが、ダイエーの資産として有力なのは、時価で1000億円といわれるリクルート株、さらにダイエーホークスの本拠地福岡ドーム、ホテルくらい。ところが売れれば売れたらで困ったことが起きる。ドームやホテルが売れたとしても数100億円の売却損が発生するからだ。債務超過ギリギリで自己資本が薄いダイエーは処理が難しい。財務上、これ以上、銀行団の先行きの支援体制が見い出せないことが、前述した取引先の条件変更のベースになっているといえる。
●流通関係者の視線はすでに「その次」へ〜吹き荒れるか淘汰の嵐
既存店売上高の前年比も今年度上期は計画の94％に届かず92％で終わった。下期も10月は前年同月比30％減と大きく落ち込むなど、収益力の回復も思い通りではない。銀行団が不協和音を奏でるなか既存店が回復せず、取引先の条件変更が続けば、ダイエーのXデーは近いといわざるを得ない。
ある流通業の幹部は「ダイエーの場合は債権放棄、公的資金注入というスキームといった選択肢も残っていたが、それも実現性が乏しくなってきた。後は民事再生法などの法的整理か、私的整理か。いずれかの選択を迫られる公算が大きい」とみる。ダイエーの店舗は現在約300店舗。整理となれば、店舗閉鎖や資産の処分、優良店舗の切り売りか、あるいは支援先企業をバックにつけ、再建を目指す―しか選べるべき道は残っていない。
流通業界では百貨店のそごうが破たんし、既存の百貨店に神風が吹いたことがあった。スーパーも“もしもの後に”一時的に浮上感が出る可能性はあるが、その先は淘汰（とうた）の嵐が吹き荒れるかもしれない。流通関係者が「その次」をにらんで戦々恐々とするのはそこに理由がある。残された時間はあまり無いのかもしれない。
（山科 静）
・ダイエー
http://www.daiei.co.jp/
・ダイエー「二頭政治」の弊害、遠のく再建への道のり
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200108/20/20010820093519_78.shtml
・「格下げ」と「株安」〜ニッポン暴落の前触れ？
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200109/28/20010928121507_07.shtml
・丸紅もローソン株を売却？〜流通部門再構築で猛反撃
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200108/27/20010827173506_70.shtml
・外資が虎視眈々と〜ダイエーグループ保有の「高島屋株」
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200106/06/20010606202009_38.shtml
・ユニクロ商法の正念場〜8月は既存店ベースで減収の衝撃
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200109/05/20010905151020_67.shtml
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。