投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 16 日 00:16:47:
小泉純一郎首相が住宅金融公庫の廃止方針を打ち出したのを受け、同公庫には15日、利用者から不安を訴える電話が殺到した。だが、「廃止」の言葉だけが躍り、具体的内容やスケジュールは不明。今後、財政投融資借り入れの繰り上げ償還問題が持ち上がるのは避けられず、民間の試算では「廃止に伴う国民負担4兆円」との指摘もある。過激な指示で論議を巻き起こそうと狙う首相の政治手法に、政府・与党内だけでなく、国民にも困惑が広がっている。
住宅金融公庫広報課によると、特殊法人改革に関する電話は前日まで約20件だったが、15日だけで約200件。「銀行は信用できない。廃止は困る」「首相一人で決めるのはおかしい」などの声が多かったという。
国土交通省は9月、10年後をメドに、同公庫を中低所得者向け融資や債券管理を行う特殊会社と住宅ローン債権の証券化を行う独立行政法人に改組する民営化案を提出済み。内閣の行革推進事務局も10月に「民営化の方向で検討する」との方針を出し、全閣僚が参加する特殊法人等改革推進本部(本部長・小泉首相)で了承された。寝耳に水の方針転換に、国交省も同公庫も情報収集に走り回っている状態だ。
首相の「廃止」論は「(融資業務を)民間に委託し、後は廃止すればいい」というだけ。国交省案の柱である(1)規模を縮小した新規融資(2)証券化支援・融資保険業務――も行わないのか、「公庫廃止」後、新たな公的機関で続けるのかについては明らかでない。
小幡政人国交省事務次官は同日の記者会見で、新規融資の縮小と550万戸・76兆円の既貸し出し債権の処理・管理の二つを検討すべき課題と指摘。「民間にできるなら公庫は退いていくが、民間が貸しにくい人々への措置の問題もある。利用者に不安を与えないように民間が今の貸し出し条件で受け取ってくれるのか相当詰めなくてはならない」と強調した。
公庫が融資債権を証券化などによって現金化した場合、財務省が財投資金の繰り上げ返済を認めるのかどうかも課題。既に扇千景国交相が提起し、塩川正十郎財務相と対立した経緯がある。
現在、政府から公庫に出ている4000億円の補給金は、過去に財投から高金利で借り入れた資金を、低利で貸し出した差額の補てん分。ローン債権を市場に売却するには、差損が出るのは避けられない。仮に繰り上げ償還が認められないと、差損は公庫が被り、結局は国民負担となる。
くしくも経団連のシンクタンク「21世紀政策研究所」は15日、首相方針と同じ「政府の住宅金融からの全面撤退」を求める緊急提言を発表。首相のブレーンで同研究所の田中直毅理事長は、国民負担について「4兆円前後の売却損を前提にしないと公庫の廃止はできない」と試算しており、今後、「廃止」案の最大の焦点となる見通しだ。【特殊法人取材班】