投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 15 日 10:36:57:
あさひ銀行<8322>が混迷から抜け出せずにいる。大和銀行<8319>グループとの経営統合によって窮地を脱しようと試みたものの、不良債権先であるゼネコンなどの経営不安が一気に表面化し、株価も100円台をついに割り込んでしまった。さらに経営環境の激変から両行の関係にも翳りがみられ、万が一の“破談”を外資系や大手銀行が虎視眈々(たんたん)と狙っている。もはや打つ手は無いのか―。大手銀行の再編第2幕は今まさにあさひ銀行の行く末から始まろうとしている。
●無力の新頭取〜マーケットを甘く見ると・・・
あさひ銀行の梁瀬行雄新頭取は、就任以来、経営不安説を打ち消す事に全精力を注ぎ込んで来た。特定の大手紙やテレビ局の記者を巧みに使ってリークを重ね、株価の上昇を狙う。マスコミの中にはこの行為に嘲笑すらこぼす者もいる。しかし、その努力も空しく、あさひ銀行の株価は下がり続け、今月8日にはついに100円を割り込んだ。
これに対し梁瀬頭取は、金融庁からの指導もあって開いた記者会見で「株価の値下がりは、短期的なサヤを狙った投機的な売買によるもので何ら当行の実態を反映したものでない」と言い切った。これでマーケットの信頼を回復できると考えたのか。もしそうだとすれば、マーケットの警告をあまりに甘くみている事になろう。株価の急落は、まさにあさひ銀行の経営の脆(ぜい)弱さをそのまま映しているからだ。
●閉ざされた再編劇〜旧勢力の対立の中で
三和銀行と東海銀行との経営統合から離脱して以降、あさひ銀行は、首都圏のリテールバンクとして存亡をかけた再編劇を模索してきた。横浜銀行<8332>と千葉銀行<8331>、それに諸々の関東の地銀を従え、関東地銀連合の王座に君臨しようとしたのだ。他方、東京圏のリテール網で劣る東京三菱銀行が、経営統合に前向きなあさひ銀行側に色気を見せた事もあった。しかし、このどちらも実を結ぶ事はなかった。
それは何故か―。行内には、以前に合併した旧協和銀行・旧埼玉銀行の2つの系列が今でも残存し続けてきた事が背景にある。頭取の御旗を掲げ前者の話を進めたのは旧協和、現在の梁瀬新頭取(当時、副頭取)を頂いて東京三菱銀行に擦り寄ったのは、旧埼玉勢である。この2つの話はそれぞれが交わる事もなく、旧勢力同士の対立の中で泡と消えていった。
●剰余金の薄さが命取りに、経営陣の総無責任体制の結果
あさひ銀行は、その後も金融庁の強い指導に沿って再編に突き進む。それしか生き残る術を見つける事はできないと観念したからだ。今年9月末の時点での剰余金は418億円に過ぎなかった。株主への配当原資となる剰余金は枯渇寸前の状態にあった。不良債権や株の含み損を大胆に処理した場合、国が持つ優先株に対しても、来年3月末の決算時に配当できない可能性が出てきた。足利銀行<8335>や北陸銀行<8357>の例からして、頭取の首は飛ぶ。実質的な国有化の一歩手前まで来ている現状がそこにはあった。しかし、ここまで事態が及んだ時、すでに当時の伊藤龍郎頭取、田中正会長に経営の主導権は無かったのだ。言い換えるとそれは責任を放棄していたことにならないだろうか。
オリックス<8591>やシティバンクなど結婚相手に名前が挙がったところに対しては、あさひ銀行のOBが相談に及んでいる。その意味で伊藤前頭取は、横浜銀行との再編話が潰えて以降、国有銀行の謗りを免れ自らの責任を突き詰められずに済む事に全神経を尖らせてきたと指摘されてもやむを得ないであろう。現在の経営不安はズバリ“経営陣の総無責任体制”の結果といえる。
*「金融再生最前線」〜再編第2幕はあさひ銀行の行く末から動き出す<下>は、11月22日に掲載の予定です。(東山 恵)
・「金融再生最前線」〜露呈した三井住友のアキレス腱、どうなる最終判断・上
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200110/25/20011025122517_40.shtml
・「金融再生最前線」〜露呈した三井住友のアキレス腱、どうなる最終判断・下
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/01/20011101111012_87.shtml
・「金融再生最前線」〜すでにソフトバンクは「過去の話」?
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/08/20011108102004_45.shtml
・銀行株急落は事業法人の見切り売り〜持ち合い解消活発に
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/13/20011113114002_85.shtml