投稿者 sanetomi 日時 2001 年 11 月 15 日 05:45:19:
12日の米航空機墜落事故はテロではないようだが、不安と警戒心は一段と増している。
その影響は航空業界だけでなく、世界同時不況を一層深化させる。これに対し政策は金
融・財政両面ともあまり効果を発揮していない。
それは政策が効果を表す前提が変化したからだろう。ケインズ以降は、数量経済学や市
場原理の影響が大きいが、それが幅を利かせたのも、経済の基本構造や前提があまり変
わらない範囲内でのことだった。しかし、今は違う。ベルリンの壁が崩れて以来、自由経済
の市場に参入する低所得国が飛躍的に増え、価格革命によって世界の産業構造は大きく
変わった。日本も生産の空洞化は一挙に進んでいる。また市場原理の強調、グローバリズ
ムの広がりによって画一化が進行している。
多様さが保ってきたやさしさ、試練におけるクッションは失われ、個におけるアイデンティテ
ィーの喪失、共同体における文化的伝承の破壊など、経済活動を営む人間や共同体という
基盤自体が傷ついてきた。このような変化が地震エネルギーのように蓄積され、それが限
界を超えて表面化していると思われる。この基本の問題をそのままにして表面的に対症療
法をしてもうまくいくはずはない。
問題が加速的に複雑化し難しくなることを緩和するために景気対策など過渡的な対症療
法は必要だろうが、その位置付けはわきまえておく必要がある。また、現内閣の「改革」も
徹底を志している割には目指す目標は今一つあいまいである。首相が孤立化している状況
からも、周辺の同志的結束を固めるには根本療法に向かう補強が必要だろう。
それには、まず世界が当面している不連続な転換の意味をつかみ、人間と世界のかかわ
りの原点を突き詰め、そこからの「眺め」に立ち直す必要がある。 (猷)