投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 08 日 10:47:29:
ソフトバンク<9984>が揺れている。ITバブルの崩壊が直撃し、経営を支えてきた株価は時価総額で以前の20分の1近くまで下落している。さらに今9月期の中間決算が大赤字に転落するというから、世間の目は一段と厳しいものにならざるを得ない。先月26日には9月中間期連結で過去最悪の550億円の最終赤字に転落する業績を発表した。欧州や南米などへの投資の失敗が主な原因で、このままでは新規投資を見直さざるを得ない状況に追い込まれるのは必至だ。これを受けて金融業界でも同社を見る目が大きな変化を見せ始めている。旧日債銀の買収についても、すでにオリックス<8591>主導で実質上の経営が行われていると言われ、常々囁かれてきた「(ソフトバンクは)金融的な後ろ盾を持っている」といった指摘は、まるで存在感が無くなっている。時代の寵(ちょう)児と持てはやされたソフトバンクはどこに行くのか―。同社の経営環境がいっそう厳しいものになりつつあることだけは確かだ。
●冷ややかな金融界
ソフトバンクの取締役である笠井和彦氏が、富士銀行副頭取と安田信託銀行<8404>会長を務めたプロの銀行マンである事は、よく知られている。その縁もあって、本店が直に取引しているのは、今は富士銀行だけ。言い換えると同社のメインバンクという事になる。
しかし、ソフトバンクに対する富士銀行のスタンスはあまりにストレートだ。同行首脳によると「この先、短いなと判断すれば、取り引きは即座に停止する」というのだ。理由は、ソフトバンクの経営実態が余りにも判りにくい事。そして、同じみずほフィナンシャルグループの日本興行銀行が、過去のいきさつもあって、ソフトバンクと犬猿の仲である事―などが挙げられる。つまり、笠井氏が古巣に泣きつくことがあったとしても最悪の場合、救ってくれる可能性は非常に低い。
●可能性はほとんどゼロ〜“機関銀行化”説
それでは他の金融機関はどうだろう。金融庁の特別検査を控え、査定の見直しが進む中で、これ以上、不良債権予備軍のような企業を取り引き先に抱えられないというのが本音だ。そこで注目されるのが、旧日債銀、現在のあおぞら銀行の存在だ。ソフトバンクの孫正義社長はオリックス、東京海上火災保険<8751>とともに、旧日債銀を買収している。この買収時に囁かれたのは、銀行が孫氏の財布代わりになるのではないかという“機関銀行化”説だ。
しかし、これも現在では国有化されて巨額の公的資金が投入されている事を考え合わせれば、簡単に資金を引いてこれるはずがないことがわかる。さらに肝心なことは今、孫氏の関心がすでに銀行から離れてしまい、旧日債銀自体がオリックス主導で経営が行われている事実だ。
●もう過去のもの?
「孫氏にとって旧日債銀の買収は、その行為自体に意味があり、最終的には早めに株を上場させてリターンを得られれば良かったはず」―。複数の大手銀行幹部は異口同音にそう語る。いずれにしても旧日債銀の買収によって孫氏が金融的な後ろ盾を持ったわけではない。「孫さんとソフトバンク。我々にとっては、もう過去のものになりつつあるよ」―。ポツリと呟いたある大手銀行首脳の一言が、金融界から見たソフトバンクを如実に物語っている。