投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 05 日 17:18:39:
NY(ウォール・ストリート・ジャーナル)キニコス・アソシエイツの社長でマネー・マネージャのジェームズ・シャノー氏は2000年12月、米総合エネルギー大手のエンロン(NYSE:ENE)のアニュアルレポートを詳細に検討し、彼に大きな利益をもたらすことになる投資を開始した。キニコスは空売りで有名な会社だ。エンロンの帳簿を理解するのは困難だったかもしれないが、当時高く買われていたエンロンを結局は下落へと導いた。
シャノー氏は、他のどのアナリストもそうであるのと同様、いつでも正しいというわけではないが、エンロンに関しては正しかった。エンロンは今年86%下落し、11.30ドルになった。どのようにして彼がそういう行動を取ったのかは啓発的だ。エンロンは、実際1年前同氏がマンハッタンの43階の事務所に座って、これは危険だと感じた正にその理由よって売り込まれた。
シャノー氏の見方によれば、エンロンはパイプラインやユーティリティーの事業など、たくさんの資産を抱えていた。しかし、彼の目には「正体を隠したヘッジファンド」に見えた。特にエンロンの成長の源はエネルギー契約の取引のポジションに由来していた。シャノー氏からみれば、それはヘッジファンドの投資活動に似たものだった。
しかし重要な資質がひとつ欠けていた。シャノー氏の基準では収益性が低く、平均的なヘッジファンドにも及ばないのだ。それならなぜこんなに高く買われるのだろうか。ウォール街で高く評価されていた理由といえば、大概は、エンロンがいつも予想利益を達成するか、それを上回っていたからというものに過ぎなかった。
もちろん、それはもはや続けられなかった。10月16日、エンロンは7―9月期の決算で損失を計上し多くの投資家を驚かせた。その時以来、同社はその複雑な帳簿外のパートナーシップによる取引に対する当局の調査を明らかにした。この取引のあるものにはエンロン自身の役員が関与していたものもあった。エンロンは、独立した委員会を設けこれらの取引を検討させていたと発表している。
シャノー氏は「おかしいと思ったのは、エンロンが市場で主導的な立場にありながら、収益に関しては貧弱な結果しか出していないことだった」と言う。2000年9月30日までの投資利回りは、大体7%だった。それは同氏が推定した9―12%の資本コストを下回るものだった。彼は投資がうまくいっているとするためには、資本の利回りは資本の調達コストを3―5%上回らなければならないと感じた。
2000年の後半、エンロンは同社純資産の約6倍で取引されていた。これに対しウォール街の証券会社は2〜3倍だし、ヘッジファンドはほぼ1倍だ。
1999年版アニュアルレポートで注目したことの一つに関連当事者との取引がある。エンロンの役員の一人が、エンロンが一連の取引をしているプライベートな投資会社の経営陣の一人となっていると述べた文章に、シャノー氏はアンダーラインを引いた。「その部分を何度も何度も読み返したがどうしても理解できなかった。脚注も読んだがわからなかった」その時にはただ「変な注だ」と思っただけだったと彼は言う。
彼は、強気派の論点で彼が見過ごしている点は何かを調べるため、アナリストへの電話を開始した。聞いた結果彼は一層興奮しただけだった。強気派の一部が注目していたのは広帯域ネットワーク能力を取引するエンロンの戦略だけだった。シャノー氏は既にブロードバンド通信には悲観的に見ていた。これでエンロンは既に設備過剰になっており、今後は状態が一層悪くなるだけだと判断した。
彼の結論:通信市場にふりかかる災難が姿を見せ始めようとしているのに、もしそれが、エンロンに見えないとしたら、エンロンに見えないものがそのほかにもあるのではないか。みんなはエンロンが誤りを犯さないと見ているが、エネルギー分野でも誤った判断をしていないとは言えないだろう。
これらを根拠にして、昨年11月当時65ドルから80ドルで推移していたエンロン株の空売りを開始した。
(11月5日付Heard On The Streetより)