投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 05 日 15:10:56:
このところ新聞の経済記事は不良債権問題一辺倒となっている。小泉構造改革の柱なのだからそれも当然か。けれどもその内容は、茶番としかいいようがない。政府も主要新聞も、自分が何をいっているのか分かっているのだろうか。
日経はこう述べる。「驚くべきことに、不良債権問題の本質は約十年前にこの問題が発生してから全く変わっていない。銀行や金融監督当局の不良債権に対する認識が甘く、銀行が実態に合わせた迅速な会計的処理を怠ってきた」(10月29日)。朝日はこうだ。「金融不安の懸念がくすぶり、金融が本来の機能を果たせないままになっている限り、日本経済はいつまでも回復軌道に乗れない」(10月27日)。
こうした議論が見失っているのは、不況とは需要が少なく供給がダブついて不良債権が生まれる状況だ、という当たり前の事実である。需要不足を放置するなら不良債権は増えるから、抜本的に解消することなど原理的に不可能なのだ。「本質」的には、金融危機を引き起こさない程度に処理を進めつつ、需要不足の抜本克服をするしかない。
朝日のいう「金融の本来の機能」とは、銀行がカネを貸し、それで企業が投資すれば投資財や新製品が売れるという理屈だろう。日銀も量的に金融緩和してやるからカネを貸せと銀行に迫っている。ところが需要不足の状態では、投資しても商品は一定の割合で売れ残るから、不良債権を生む。朝日も日銀も、不良債権の増加を後押ししているのだ。
政府にしても、「供給を強化するのが構造改革」だとかいっている。そんなことをしたら、供給過剰=不況深刻化=不良債権が増加となるだけじゃないか。それなのに不良債権処理が目標だというのだ。みんな、どうかしてしまっている。
(松原隆一郎・東京大学総合文化研究科教授)