投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 02 日 20:57:11:
富士通＜6702＞は、どこへ行こうとしているのか―。10月31日、実に6年ぶりに900円台を一時割り込んだ株価は、翌日に小戻したものの、先行きに対する市場関係者の見方は相変わらず厳しい。
通常であれば、「まだは、もうなり」という感覚から買い場を探る動きが広がりはじめるところだが、業績不振、バランスシートの毀損（きそん）、証券マンに義憤を抱かせてしまった「トップの発言」など、株価の足を引っ張る悪材料は目白押しだ。
株価出直りへの道のりは、かつてなく険しいといえる。
「あの会社は株式市場を甘くみているんじゃないか」「かなり不信感を抱かせる銘柄だね」「市場の制裁を受けるべきだ」―。同社は10月24日発表の2001年9月中間決算で大幅赤字を計上し、通期の業績見通しも大きく下方修正した。その直後、大手証券のディーリング・ルームでは、こんな声が飛び交った。案の定、マーケットの嫌気ムードに押されて翌日から株価は下落歩調を強めた。
収益予想の下方修正は、7月に続いて今期2度目。しかも、「今期を含め5期連続で収益予想を減額修正している、いわば“常習犯”」（外資系証券アナリスト）とあって、マーケットの不信感は根強いものがある。法律で義務付けられているわけではないが、上場企業が提示する収益予想は最高度の経営情報をベースにまとめた（少なくとも投資家の多くは、そう見ている）数字なのだから、投資家はそれを信用して売り買いの決断を下すことが多い。頻繁に収益予想を変更すること自体、投資家の信用を傷付けるものだ。
●波紋広げるトップの“強弁”
決算発表と同時に打ち出した国内外で2万1000人削減という過去最大級のリストラ策をめぐる経営トップの発言にも、「かなりカチンときた」と受け止める向きが証券会社では多い。「『雇用を守れない人は腹を切れ』という人もいるが、現実には経営と雇用の責任は両立しない」と、同社の秋草社長は断言（10月30日付朝日新聞朝刊）。
これが、バブル崩壊後、嫌というほどリストラの恐怖に苛（さいな）まれてきた市場関係者にとっては、「強引な人減らしに向けた開き直りの発言」に映ったようだ。
感情を逆なでされたせいもあるのだろうか、証券会社のアナリストが作成する富士通の調査リポートは、ここ1週間ほど、松下電器産業＜6752＞、東芝＜6502＞などに比べて、めっきり減っている。
●毀損進むバランス・シート
改めて富士通の9月中間連結決算をチェックすると、バランス・シートの“傷みぶり”は尋常ではない。営業損益591億円の赤字（前年同期実績は1002億円の黒字）、経常利益1075億円の赤字（同650億円の黒字）、当期利益1747億円の赤字（同1723億円の黒字）、株主資本比率は前年同期の24.4%から今中間期は21.4%に低下、一株当たり株主資本も同様に516円08銭（前年同期実績は615円62銭）へと落ち込んだ。一方、連結有利子負債は1兆8439億円と前期末比13%増。財務リストラに逆行した増加ぶりだ。
通期の連結業績予想は、経常損益で1000億円の赤字（前期1897億円の黒字）だが、「甘い見通し」との声がしきりだ。当期損益では実に3100億円の欠損（同85億円の黒字）である。
●「解散価値」水準が最後の砦
さて、株価だ。今年3月高値1846円に比べ、ざっと半値水準に売り叩かれたが、マーケットでは「まだ底を打ったという感じがしない」との見方が圧倒的。チャート上、有力な下値メドのひとつといえるのは1995年につけた740円安値だ。来期の収益回復期待が強まるなら、もちろんそこまで下落することはないだろうが、逆にリストラ不調の見通しが広がるなら解散価値である1株当たり株主資本のレベル、つまり516円どころまでの下落があっておかしくない。
これは暴論だろうか。しかし、富士通ほどバランスシートが劣化していない松下電器や日立＜6501＞でさえ、すでにこの解散価値を9月下旬から10月初めにかけて一度割り込んでいるのだ。ならば富士通も・・・。しばらくは、楽観禁物と見た方がどうやら正解のようだ。
○URL
・富士通「投資家の皆様へ」
http://pr.fujitsu.com/jp/ir/finance/2001h/
・“真冬”で生き残れる？〜寒すぎるIT企業の決算事情
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200111/02/20011102091519_03.shtml
[楠英司 2001/11/02 10:21]
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。