投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 02 日 11:16:34:
大手ハイテク企業が出口の見えない袋小路に迷い込んでいる。ほぼ出揃った2001年9月中間決算をみると、三菱電機<6503>を除く大手6社が最終赤字に転落、史上最悪の決算を強いられた。肝心の通期見通しでも赤字転落は避けられず、人員削減を含むリストラはさらに加速する。世界的なIT不況、先の見えないテロに対する報復戦争が重なり合い、市場ではすでに「年明け早々にも業績見通しの再・再修正が行われる」(外資系証券)との声が大きくなっている。米国ハイテク企業の一部には強気の見通しを示し始めているところもあるが、日本の場合は「復活」に向けた糸口はなにも見出せていない。
●何を頼りにしていいのか・・・広がる弱気感
「政治もどうにかしてくれるだろう」。業績修正の「常連組」となった富士通<6702>。「業界の論客」で知られる高谷卓副社長は、あまりにも展望が開けないハイテク業界の現状に嫌気を差してか、こんな捨て台詞とも受け取れるコメントを吐いた。
富士通は、上場以来記録してきた営業黒字の維持がいよいよ困難になりつつある。今回業績の下方修正を行った富士通が示した通期の営業損益はゼロ。上期の591臆円の営業赤字を取り戻し、年間ベースでとんとんにこぎつけたいという腹づもりだが、回復に向けた根拠はほとんど無いと言っていい。「これ以上の下方修正はないのか」という厳しい質問にも「大いにある。テロによる政治情勢も勘案しなければならず、修正リスクは前にもまして大きくなっている」(高谷副社長)。ストレートで正直なホンネであろうが、開き直った姿勢と見る向きもあった。初の営業赤字は現実味を帯びてきている。
●構造不況の嵐、赤字たれ流しも
見通しが真っ暗なのは富士通だけではない。今中間期、どうにか営業黒字を確保したNEC<6701>でも主力の半導体事業は、全体の収益を大きく下ぶれさせた。「定期循環的な要因ではない。構造的な問題だ」(松本滋夫専務)。半導体トップの東芝<6502>は、DRAM事業が崩壊、半導体部門だけで通期1500臆円の営業赤字を強いられることになるなど、底入れ感はまったく見られず、半導体事業の「赤字たれ流し」状況からの脱却は難しい。状況はシャレでは全く済まされない現実を示している。
●遅れる事業転換、あり得る大手の合併、統合
総崩れのハイテク業界だが、その復活の条件として各社が掲げるのが「ハードからソフト・サービス」への転換。半導体という高リスク分野の収益比率を低め、粗利益率が高いサービス部門へ経営資源を集中するという新たなビジネスモデルを模索中だが、この最後の切り札も、決して即効性があるものではない。あの米IBMをして効果を発揮するまでに8年の歳月を要していることからも分かるように、あくまでも中長期の戦略だからだ。わが国においてもIT投資が減速し始めている現在、サービス部門が飛躍的に伸びる可能性は小さく、それに頼り過ぎる経営はさらなる失墜を招く。「日本の不況はこれからが本番」(外資系証券)との分析も出ている。ハイテク各社の苦難はこれからも続く。長引いてくると大手同士の経営統合や合併も避けられないことになろう。
(井原一樹 市川徹)