投稿者 sanetomi 日時 2001 年 11 月 02 日 03:45:23:
スタンダード&プアーズは、本日、日本の事業会社の信用動向に関する年次調査レポ
ート、Japan CreditStatsの2001年版を発刊した。調査の結果、日本の事業会社は、コ
スト構造の改善と有利子負債削減に向けて努力しているが、その信用力は引き続き
弱い水準にとどまっていることが明らかとなった。主要信用力指標は2000年度にやや
改善を示したものの、投機的格付けを付与されている企業の指標は、依然として非常
に低い。スタンダード&プアーズ事業会社格付けグループディレクターの福富大介は、
「国内の景気悪化とデフレ傾向、米国および国際経済の減速のなか、企業の信用力
に対する見通しは、引き続き弱い」と述べている。
Japan CreditStats 2001年版は、スタンダード&プアーズが格付けしていない企業も
含めた日本の事業会社274社(電力・ガス会社を除く)の主要財務データを総合的に分
析したリポートである。主な調査結果は以下の通りである。
財務プロフィールに若干の改善
調査結果では、日本の事業会社による財務プロフィール改善に向けた努力が、徐々に
功を奏しつつあることが示されている。2000年度にみられた財務プロフィールの改善
は、企業のリストラの進展、設備投資の削減、および債務増加を抑制しながら返済を
行なったことによるものである。さらに、多くの産業にとって、国内の景気低迷を相殺す
る好調な米国経済、および世界的な情報通信(IT)関連の需要の伸びがメリットとなっ
た。
格付けの低い企業の信用力は引き続き脆弱
全般的な財務プロフィールの改善は見られたものの、投機的格付けを付与されている
企業の信用力は引き続き極めて脆弱である。有利子負債総額に対する営業キャッシ
ュフローの比率でみると、「BB」格の格付けを付与されている日本企業の中央値(3年
間の加重平均ベース)は7.5%と、「B」格の格付けを付与されている米国企業の中央
値7.8%より弱い。
デフォルトリスクの高まり
最近のマイカル破綻は、日本の大手企業の間でデフォルトのリスクが高まっていること
を例証し、銀行の支援がますます予測しにくくなっているという事実を示した。福富は、
「邦銀が、自身の体力低下、および不良債権の処理に対し高まる圧力に苦しむ中で
は、債権者である銀行からの支援は以前ほど確実なものではなくなっている」と指摘し
ている。スタンダード&プアーズは、日本企業による会社更正法などの適用申請や債
務のリストラ(金銭債務に対するデフォルトの一種である債権放棄の要請も含む)は、
今後も増え続けると考えている。
事業環境の悪化と不十分な改革
日本企業が直面する困難な事業環境は、短期間で改善しそうではない。国内の長引
く景気低迷に加え、日本企業は米国経済の減速の影響を感じ始めている。しかも、日
本の主要製造業は、依然として過剰な生産設備を抱えている。多くの企業がコスト構
造の改善に積極的な対策を取っているが、そのほとんどが過剰設備の削減と高い人
件費の問題への対処に関しては、限られた処策を取るにとどまっている。
格付けの下降傾向
2001年1月から10月まで、特に最後の4〜5ヵ月においては、格下げの傾向が顕著に
なっている。この期間に格上げとなったのは4社、アウトルックが「ポジティブ」に変更に
なったのは3社であった。しかし、12社の格付けが引き下げられ、3社のアウトルックが
「ネガティブ」に変更された。さらに、5社の格付けが、格下げの可能性ありとして「クレ
ジット・ウォッチ」に掲載された。スタンダード&プアーズは、今後1年間に格付けの下
方修正がありうる分野として、ハイテク、小売り、および建設部門をモニターしていく。