投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 11 月 01 日 12:30:04:
「過剰債務企業に対する公正な基準を示し、再建のめどが立たない場合は銀行が整理に取りかかり易くするのもひとつの方法」―。10月29日に大阪市で会見した“塩爺”こと塩川正十郎財務相の発言が、市場に波紋を投げかけている。
同日は奇しくも金融庁が大手銀行に対する「特別検査」の実施を正式通告した日。特別検査の進展次第では、大手企業の突発倒産があり得ると身構えていた市場に対し、同相は「債務超過」「債務免除」「無配」など、問題企業の「死刑宣告」に向けた具体的な基準を示した。唐突な発言の真意を探ろうと、市場関係者は疑心暗鬼に陥っている。
●「私案」の衝撃
不良債権問題は金融庁が所轄するテーマであり、29日の財務相発言は明らかに省庁間の越境行為。あくまでも「私案」との位置づけだが、同相は、翌30日も会見で「過剰債務企業と銀行が癒着している」とまで強調、「不良債権処理を進めるために何らかの政治的な行動が必要」とまで言い切った。
9月下旬の経済財政諮問会議の直前、民間経済人が提案した処理スキームが官邸主導で動き、金融庁が蚊帳の外に置かれていた記憶が市場関係者の脳裏に生々しく残っていたため、「金融庁抜きで不良債権処理に向けた抜本策が動き出している」(銀行系証券)との思惑が高まったのは無理もないところ。
一方、正反対の思惑も浮上した。「特別検査を強力に進めれば、大手行の中にも優先株への配当が怪しくなる銀行が出てくるのは必至。公的資金再注入への道筋を作るため、金融庁が財務省に援軍を頼んだ」(別の銀行系証券)との説まで飛び出すなど、市場には諸説が入り乱れている。
●ブレーン不在で思惑に拍車
同相発言は、一部の早耳筋たちにも衝撃を与えた。9月の経済財政諮問会議で民間経済人を官邸首脳に引き合わせた銀行OBのブレーンが10月初旬に病に倒れて以降、「官邸の経済政策機能が実質機能停止し、ブレーンの後ガマを財務省が勤めている」(市場筋)との観測がくすぶっていたためだ。従って、唐突な財務相発言は、「不良債権処理が市場の予想を大きく超えるスピードで進展する」(米系証券)との思惑をも呼んだ。
実際30日の株式市場では、「特別検査の進行と、債務超過などの条件を示した財務相発言を組み合わせれば、巨額の有利子負債を抱え、かつ再建の見込みが薄い企業は売るしかない」(準大手証券)とのムードが台頭。額面割れゼネコンを中心に大量の売り注文を浴びる銘柄が相次いだ。
●混乱長期化の兆し
同相発言を巡って、金融庁は「民間の問題で行政は介入できない」(森長官)、「過剰債務をどう把握するのか難しい」(柳沢金融担当相)と慎重姿勢を崩していない。ただ、財務相発言を巡って諸説が飛び交う中では、金融庁の慎重姿勢も今ひとつ「説得力に欠ける」(同)。塩爺発言の真意が判明するまで、市場は様々な憶測に振り回されることになりそうだ。
(相場 英雄)
・思惑呼ぶ“巨額一手売り”〜銀行株急伸に冷や水
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200110/29/20011029105005_49.shtml