投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 31 日 19:01:04:
回答先: 野村総研、7―9月期GDP成長率マイナス0.6%〔日本経済新聞〕 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 31 日 15:24:46:
2001年7-9月期のGDP暫定推計
2001年10月31日
NRI野村総合研究所
経済研究部(日本経済担当)
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7-9月期GDPの暫定推計 --- 実質・前期比△0.6%
10月30日時点で利用可能な統計に基づく試算によれば、2001年7-9月期の実質GDP成長率は前期比△0.6%(同年率△2.4%)となった。なお、同推計値は、4-6月期の計数が速報段階の前期比△0.8%から同△1.0%へと下方修正されることを前提としている。
4-6月期のGDP成長率は、変則的な季節調整のために全体としては過大に評価されており、12月に行われる季節調整替えに際して下方修正される可能性が高い。そこで野村総合研究所では、2000年4-6月期の季節指数を用いて2001年4-6月期の季調値を再計算、これを前提に7-9月期のGDP成長率を推計することとした。再計算の結果、4-6月期の実質GDPは内閣府発表ベースの前期比△0.8%から若干下方修正されて△1.0(年率△3.9%)となった。特に、個人消費(前期比+0.5→同△0.2%)、公共投資(△4.1%→+1.4%)が大きく修正されている。
上述の再計算値を前提にすると、7-9月期の実質GDPは前期比△0.6%となる。実質GDPが2四半期連続で減少するのは、99年後半(7-9月期前期比△0.1%、10-12月期同△1.5%)以来である。景気の調整色が強まっていることが改めて確認されたと言えよう。内訳を見ると、(1)設備投資の落ち込みを個人消費が相殺する結果、民間内需がわずかながらもプラスに寄与(+0.1%)する反面、(2)公共投資が大きく減少したため、公的需要の寄与度が△0.6%となった他、(3)輸出の減少が輸入の減少を引き続き上回り、外需の寄与は△0.1%となった。輸出の落ち込みが企業収益を圧迫、設備投資が抑制される一方、個人消費は振るわないながらも大幅な悪化は免れた様子が窺える。公共投資については、ここ数年、7-9月期に大きく落ち込むパターンが続いている。
97・98年の不況時とは異なり、企業の資金調達環境が安定していることを考えれば、景気がスパイラル的に悪化していくリスクは低いと判断される。逆に、景気の全面的な悪化が明確とならないがゆえに、政府の緊縮財政路線が大幅に転換される可能性は今のところ低い。手持ちの手段をほぼ出し尽くした金融政策にも、追加的な景気刺激策を望むことは難しい。米国景気が立ち直りを見せる来年後半まで、国内景気は全体として停滞感の強い推移をたどると見込まれる。
主な需要項目別の予測値及び内容は、以下の通り。
個人消費は前期比+0.6%
個人消費については、4-6月期の計数が実質前期比+0.5%から同△0.2%へと下方修正されるのに加え、家計調査のコア消費(消費支出から住居費、自動車購入費等を控除したもの)が前年比下落率を縮小させた(4-6月期名目前年比△3.5%、7-9月期同△2.4%、9月については勤労者世帯ベース)ことなどから、前期比プラスになったと見込まれる。9月の失業率が5.3%にまで上昇し、消費者態度指数(内閣府)も6月比4ポイントの大幅下落を記録するなど、雇用環境の悪化が消費者マインドにまで影響している様子が観察されるものの、これまでのところ消費支出が大幅に抑制されるまでには至っていない。製造業において雇用削減姿勢が強まる中、非製造業での雇用調整が本格化していないことがその背景にあると考えられる。 なお、消費総額の2割を占める単身者支出の推計に用いられる「単身世帯収支調査」(総務省)が未発表であることには注意を要する。同調査は調査世帯数が少なく調査結果のブレが大きいため、推計結果に大きな影響を及ぼす可能性がある(11月16日前後に発表予定)。
設備投資は前期比△2.6%
設備投資については、推計に際し決定的に重要な「法人企業統計季報」が未発表であるため、代替的な方法をとった。すなわち、(1)機械投資については、資本財出荷から貿易統計より推計した資本財の輸出を控除し、同輸入を加えることで国内向け資本財出荷を求め、(2)建設投資については「建設総合統計」の民間非居住用出来高を用い、(3)ソフトウェア投資については「特定サービス産業動態統計」の情報サービス業データから推計した。7-9月期設備投資の実質前年比0.0%に対する(1)、(2)、(3)の寄与度は、それぞれ+2.9%、△3.7%、+0.9%と計算される。
一方、日銀短観9月調査によれば、2001年度上期の設備投資(全規模、ソフトウェア含む)は前年同期比+4.2%と、2000年度下期(同+0.9%)から伸びを高める計画となっている。設備投資デフレータが前年比2%程度下落していることから、実質では同6%程度の伸びが見込まれている計算となる。実際、4-6月期のGDP設備投資は実質前年比+4.2%の伸びを保っている。日銀短観の設備投資計画は下方修正されるケースが多く、結果を額面通りに受け取ることはできないものの、12月5日発表予定の法人企業統計季報では想定より強めの結果が出てくる可能性もあろう。
外需寄与度(前期比)は前期比Δ0.1%
財・サービスの輸出は、7-9月期も前期比△4.7%と大きく落ち込む見込みである。貿易統計によれば、7-9月期の地域別輸出数量は、自動車輸出の堅調を受けて米国向けが前期比+0.4%とわずかながら増加した他は、EU向け(同△7.5%)、アジア向け(△2.9%)ともに減少を続けている。海外景気の急減速により本年1-3月期に減少に転じた輸出は、今のところ底を打つ気配を見せていない。
一方、財・サービスの輸入も前期比△4.1%と大きなマイナスとなった。この結果、7-9月期の外需寄与度は4-6月期(野村総合研究所による再計算では△0.2%)からマイナス幅を縮小させると見込まれる。
公共投資は前期比△8.9%
国土交通省の「建設総合統計」から推計する限り、7-9月期の公共投資は大幅に減少する見込みである(なお、4-6月期は前期比△4.1%→+1.4%へと上方修正される見込み)。過去3年間の7-9月期公共投資が大幅に減少している(1998年7-9月期前期比△6.4%、1999年同△12.7%、2000年△11.9%)ことを考えると、季節調整に歪みが生じている可能性も否定できない。
以上
実質GDP要約表
(前期比、%)
2000年 2001年
4-6月期 7-9月期 10-12月期 1-3月期 (e)
4-6月期 (e)
7-9月期
GDP(年率) [0.5] [-2.7] [2.6] [0.5] [-3.9] [-2.4]
GDP 0.1 -0.7 0.6 0.1 -1.0 -0.6
内需寄与度 0.0 -0.6 1.0 0.3 -0.8 -0.5
民間需要 -0.5 0.3 0.9 -0.0 -1.0 0.1
公的需要 0.5 -0.9 0.1 0.4 0.2 -0.6
外需寄与度 0.1 -0.1 -0.4 -0.2 -0.2 -0.1
個人消費 0.1 0.0 -0.6 0.6 -0.2 0.6
住宅投資 -5.3 0.5 4.5 -5.2 -8.9 1.9
設備投資 -2.5 1.5 6.7 -0.9 -2.9 -2.6
政府消費 1.2 0.5 0.9 0.0 0.8 0.6
公共投資 4.0 -11.9 -0.6 5.2 1.4 -8.9
輸出 4.0 0.2 0.8 -3.6 -3.2 -4.7
輸入 3.9 1.3 5.1 -2.1 -2.0 -4.1
(注)2001年4-6月期は、2000年4-6月期の季節指数を用いた試算値
2001年7-9月期は、野村総合研究所による予測(10/31現在)
(出所)内閣府、野村総合研究所