投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 30 日 16:33:55:
30日に発表された9月の完全失業率は5・3%で過去最悪を更新した。IT不況などで500人以上の規模の企業に勤める雇用者数も、7―9月は前年比で34万―45万人の減。業種別では建設業界の雇用者数が昨年11月から減り続けている。米同時テロの影響が出るのはこれからで、構造改革に伴う不良債権処理が進めば、さらに多くの失業者が出るとみられている。
中堅の舗装・土木工事会社「日新舗道建設」(東京・中央区)の森永正隆社長(58)が取引先の都銀の支店を訪れたのは今年の7月26日。関連会社に9億円の赤字が出ていたからだ。「8億円分は工事代金を先払いしてもらえる。残る1億円を融資でつないでほしい」と頼んだ。担当者は「先払いが確実なら」と応対したという。
先払いの確約を取り付けて翌27日に再び都銀へ。しかし、態度は一転していた。
同月30日には東京地裁に民事再生法の適用を申請。事業の大幅な縮小で340人の従業員のうち、8割が8月21日付で解雇され、事業整理が終わり次第、残る人にも新たなリストラが待っている。
支店長だった男性(53)は解雇から半月間、支店の閉鎖業務のかたわら部下10人の再就職先を探し歩いた。管理職の責任と考えて、競争相手の同業他社の支店長のもとへも日参したという。「履歴書をファクスで送り、事務所へ行って頭を下げました」
年配者も含めて7人が同業の5社へ。他の2人も自力で再就職先を見つけてきたが、今もこの元支店長と部下の1人は失業中だ。「住宅ローンも抱えているが、資格を取って就職活動をしたい」と苦笑した。
この会社は、道路舗装や土木工事、舗装材料の製造販売などを手がけ、1997年の年間売り上げは362億円超。その後、建設不況や競争激化などで、給与の2割をカットしたうえ、都銀からの役員派遣も受け入れた。工事の請負代金などにも譲渡担保権の設定が認められるようになったため、約60億円の民間工事の代金も担保として都銀に差し出した。昨年11月には、譲渡が禁じられている官公庁の工事代金も担保に提供したという。
しかし、今年3月期の年間売り上げは246億円に急減。再生法の適用申請直後、都銀側はさらに厳しい対応を取り、工事の発注元の国土交通省や日本道路公団にまで、工事代金を都銀に支払うように求める通知書を送っていた。
「官公庁の工事代金は会社に入金されたが、信用がなくなって工事も辞退せざるを得なかった」と森永社長。
都銀では「融資を断ったのは、8月にさらに資金繰りが悪化する見込みだったため」としており、「取引先に通知書を送ったことも、債権保全上の手続きで問題はない」と話す。
◆倒産件数、過去最悪のまま◆
民間調査機関「帝国データバンク」によると、今年度上半期の建設業の倒産件数は、過去最悪だった前年度同期と同数の3029件。内閣府の試算では、不良債権の処理に伴う企業倒産で失業する人は13万―19万人で、このうち4万5000―8万5000人が建設業者とみられている。
建設業界は、ゼネコンなどと契約を結んだ1次下請けに、中小・零細業者が2次、3次、4次とぶら下がる構造だ。東京近郊の水道設備業の男性(51)は2次下請け。年収は、数年前より4割減の400万円にダウンした。1次下請けに出す請求書の金額欄は記入しない。「いくらもらえるかは向こう次第」。資金繰りや生活費もままならない状態だ。
埼玉県で左官業を営んでいた男性(当時48歳)は昨年9月、会社の倉庫で自殺した。50人以上の職人を使っていたこともあるが、請負額のダウンなどで3億円の負債を抱えていた。妻(52)は「請負額が下がっても職人に渡すお金は下げられなかった」と言う。
中小・零細の建設業者の加盟する「全建総連」によると、経営難などで自殺に追い込まれた昨年の組合員数は、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で約130人。老田靖雄労働対策部長は「政府は他産業への就職を促しているが、建設現場で働いた人はなかなか別の仕事にいけない。仕事が減って“半失業状態”の人も多い」としている。
(10月30日13:52)