投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 29 日 23:58:26:
日銀の「経済・物価の将来展望とリスク評価」で示された経済成長率と物価の見通しは、「市場関係者の予想の範囲内」(みずほ証券の上野泰也チーフエコノミスト)だ。ただ、9人の政策委員全員が02年度の物価上昇率をマイナスと予想したことは、日銀の量的緩和策が一層長期化することを示し、さらに、物価下落に歯止めをかける新たな政策を日銀に求める声が強まることを意味する。
量的緩和について日銀は、消費者物価指数(CPI)の対前年度上昇率が安定的にゼロ%以上になるまで継続する方針だ。山口副総裁はCPIについて、経済成長率が高まった後にしか上昇しないとの認識を示している。今回、02年度の実質成長率が概ねマイナスの見通しでそろったことから、「CPIの回復が条件となる量的緩和の解除は今後3年以上、難しい」との見方が強まっている。
また、来年度下期の回復という「展望レポート」の「標準シナリオ」も、米国経済の回復が前提だ。「リスクシナリオ」では、海外が回復しなければ、「調整は広範で深いものになる」だけでなく、「不良債権が実態経済に対して深刻な悪影響を及ぼすリスクもある」と指摘している。
デフレの結果、倒産の増加や資産価格の低下も予想されるうえ、02年4月のペイオフ(預金の払戻し保証額を元本1000万円と利息とする措置)凍結解除に向け、預金の流出などが発生すれば、信用収縮や金融危機に至る可能性も否定できない。
このため、市場関係者からは、「金融システムが揺らげば、物価下落と景気悪化が同時に進むデフレスパイラルに陥る可能性もある」(JPモルガン証券の菅野雅明調査部長)との指摘も出てきている。 【藤好陽太郎】
[毎日新聞10月29日] ( 2001-10-29-21:04 )