投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 29 日 17:47:19:
大手銀行の経営悪化ばかりが注目されているが、今年に入って各地で信組、信金の破綻が相次ぎ、金融連鎖破綻の危機は中小金融機関から広がっている。
東京都内の36信組の預金量総額は、この1年間で7%、ざっと2000億円減った。それに対して、東京三菱銀行は約3兆4000億円、みずほグループは約2兆6000億円と、大手行は軒並み預金を増やした。
都内の信用金庫の役員は、預金流出はむしろこれから急激に増えると見ている。
しかも、政府が金融再生を掲げているのに、自治体まで預金を引き上げて逆に危機を煽る結果を招いている。小泉首相のお膝元、神奈川県下のある自治体は、地元の中小金融機関に50億円の預金があったが、10月に入って突然、数億円を残して40億円以上を郵便貯金に移すと通告し、金融機関は大打撃を受けている。
信金、信組などの預金は地元の商店街や零細企業への融資にあてられていたから、預金流出は当然、貸し渋りを助長させる。さらに重大なことは、預金が増えすぎている大手銀行が、その分を融資に回さず減らしていることだ。
5大金融グループの合計では、平成10年度の預金量合計は約272兆円、貸出金もほぼ同額だった。だが、平成12年度には、預金量は約286兆円へと増えているのに、貸出金は約260兆円へと逆に大きく減っている。差額は国債の購入や海外での株・債券投資による運用などに回している。
そうした大銀行はいずれも貸し付けを減らしているが、その揚げ句、テロ事件でアメリカの株式市場が急落していざ運用先に困ると、前述のように≪預金者売買≫に走っている。
背景の問題は金融庁の行政指導にある。不良債権処理一辺倒の発想で、銀行に検査に入る場合、『金融検査マニュアル』に基づいて、融資先が赤字経営であれば画一的に不良債権と認定し、銀行に事実上の融資回収を指導しているからだ。
慶応大学の金子勝教授は、「危機の元凶は、政治、行政、経営それぞれの責任追及が全くなされていないことだ」と、次のように指摘する。
「不良債権を誤魔化してきた銀行の経営者、それを認めた政治家や役人の責任が問われていないから、銀行のずさんな経営は今も続き、再生できない。政府は住専処理以来、銀行に税金投入するたびに『これで不良債権処理は終わった』と説明してきた。前回(99年)の税金投入の責任者は柳沢金融相で、当時、小渕内閣の経済戦略会議のメンバーだった竹中平蔵氏が銀行経営者の責任を3年間棚上げする方針を報告書に盛り込んで税金投入を後押しした。本来なら、再び金融行政の責任者となった2人は、辞任覚悟で当時の失敗を明らかにし、これから国民にどれだけの負担をかけるか示さなければならない。ところが、それをやりたくないから2人はさらなる損失先送りで銀行を救済しようとしている」
金子氏はそのうえで金融機関に中小企業への融資という社会的責任を義務づける法律の必要性を説く。
「今の銀行は弱い者から資金を集めておきながら、弱者には資金を供給しないという経営だ。それを防ぐために、金融機関がどこに貸し出しているか情報開示させ、社会的役割を果たしているかを国民がチェックできる仕組みが不可欠です。アメリカは、そうした主旨で作られた『コミュニティ再投資法』がありますが、これをモデルにして、地域の中小企業に資金が回る枠組みを定めた『金融アセスメント法』のようなものを作るべきです」――。