投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 29 日 11:01:48:
自民・公明・保守の与党3党が、整理回収機構(RCC)の機能拡充に向けた金融再生法改正案で正式合意した先週24日、不良債権処理の加速を見込んだ買いに銀行株が急伸した。ポジションを売りに傾けていた海外ヘッジファンドが一斉に買い戻しに転じたほか、彼らの動きを見て証券ディーラーの追随買いが急増したのだ。
ただ、急伸劇の裏側では、一部大手外資系証券から出された「巨額の一手売り」が市場関係者の話題をさらっていた。この証券会社は、日本政府への情報収集が活発な上に、様々な政府関連の金融取引を手がけているため、「何か売り材料を入手したのでは」との思惑が高まった。
●買い戻しに“冷や水”
24日は、みずほホールディングス<8305>をはじめ、大手金融グループの株価が軒並み5%超も値を飛ばした。「RCC拡充法案がすんなり成立するとは思えないが、不良債権処理が進むとのムードの中では、ショート(売り)ポジションを一旦手仕舞わざるを得ない」(ヘッジファンド筋)として、買い戻しを強制させられた向きが多い。
しかし、一部大手外資からの売りが目立ち始めると、買い戻しを急いでいた向きに動揺が広がった。「相場の流れに逆らうかのごとく、しつこく売りが持ち込まれた」(米系運用会社)ためだ。しかも特定株だけではなく、大手行全てに対しての売りだった。このため、「確信を持って売っているとしか思えず」(同)、急伸相場に冷や水を浴びせた格好となった。
●特別検査巡る憶測
通常、大手証券と言えども、たった1社の売りに時価総額の巨大な銀行セクター全体が影響を受けることは少ない。しかし同日は「金融庁が進める予定の特別検査を巡り、市場が疑心暗鬼に陥っていたタイミングだった」(銀行系証券)ため、政府への食い込み度が深い同社の注文に、市場全体が動揺したのだ。
特に同日は、金融庁と一部大手銀行の間で、「巨額有利子負債企業の自己査定を巡って『下げる・下げない』の壮絶な綱引きが展開されている」(別の銀行系証券)との思惑が広がっていた。
このため、しつこく食い下がる売り注文が「特別検査の結果が基で、大手行が軒並み収益悪化に陥るのでは」(準大手証券)と、思わぬ“尾ひれ”となった形だ。
●銀行株物色は「時期尚早」
RCC拡充策合意を境に、銀行株の上伸を足掛かりにして、平均株価や東証株価指数(TOPIX)が水準訂正して出直る気配を強めている。「買い戻しが一巡したハイテク銘柄と比べると、銀行株にもようやく値ごろ感が出てきた」(国内投信)と機関投資家が買いを入り始めているのが株価指数上伸を下支えしているのは間違いない。
24日に一手売りを出した外資系証券が、政府から何らかの情報を仕入れ、これを売りにつなげたか否かは不明だ。ただ、「特別検査を巡る不透明感が払しょくできない以上、手放しで銀行株を買うのは危険」(米系運用会社)との見方は根強く、銀行株を取り巻く地合いは不安定。手放しで銀行株を物色するには、まだ「時期尚早」(同)と言えそうだ。
(相場 英雄)