投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 26 日 15:34:45:
政府が21日の経済財政諮問会議で決めた改革の「工程表」と最優先課題の「先行プラグラム」の中間取りまとめにより、民間部門の「病巣」つまり不良債権問題の処理が動き出すことになった。マスメディアからは、取りまとめに向けて金融庁が前向きに関与したような印象が伝わるが、実態は異なる。首相官邸側が過激とも言える案を提示、追い込まれた金融庁がぎりぎりの選択を行ったのが真相のようだ。
●日経報道の「衝撃」
9月20日付日本経済新聞の朝刊報道で、銀行界は大きく揺れた。21日に開かれる経済財政諮問会議が決める改革工程表では、銀行の「要注意先債権」について、建設や流通など「高リスク」業種については貸倒引当金を厚く積むよう求めると伝えたのだ。銀行サイドからは「マイカル<8269>の破たんのあとなので当然のことと言えるが、事前の情報収集の網にもかからず、当惑している」(大手銀)との本音が漏れた。マイカル向けの引当率は各取引行ともに概ね3〜5%。報道に沿えば「引当金の積み立てラッシュとともに、収益計画が根本から狂う」(同)ことを意味するからだ。
金融界が驚いたのは、この情報だけではない。同日付の1面囲み記事では、「金融不安終結宣言めざせ」との見出しとともに、「小泉政権内では経営不振の大手企業に的を絞り、厳格な資産査定と引き当てを銀行に強く求めるべきとの主張もある」と書かれたのだ。経財会議の開催を翌日に控え、「政府サイドがもっと過激なことを考えているとうかがわせる」(銀行系証券)との不安も芽生えた。
●金融庁も動揺
この報道の前日に当たる19日は、金融庁も動揺していた。官邸サイドが積極的に民間経済人と接触。中でも一部コンサルティング会社の提案に急速に傾いていたことが明らかになり、「長官の怒声とともに巻き返しを図った」(金融当局筋)というのだ。民間金融機関の情報収集に引っ掛からなかったのは当然でもある。
このコンサル会社は、9月第2週にかけて「問題企業リスト」を携え、政界関係者に対して活発な“ロビー活動”を展開。経財会議の開催週には、官邸首脳と直接やり取りしている。同社は「金融問題終結宣言」と題する資料を基に、首相のリーダーシップで不良債権処理を推進させることを提案したもようだ。資料には「銀行の経営者責任と不振銀行に対する当局の監視、問題事業会社の淘汰を強く促す内容」(関係者)が盛り込まれていたという。
一連の提案は「日本経済を根本から変える特効薬にもなり得る可能性」(金融当局筋)もあるものだったが、「疲弊し切った金融システムを即死させかねない副作用も内包している」(同)。そこで、過激な提案に驚いた金融庁があわてて業種別の引当率アップなどの代替案を検討し、経財会議に持ち込んだというのが真相のようだ。
市場サイドが求めていた不良債権処理問題は、経財会議の中間とりまとめを境にようやく走り始める。だが、当局内部の足並みが揃っているとは言いがたく、今後も曲折の可能性は否定できない。
(相場英雄 沖野宗一)
・実在した“問題企業リスト”〜市場揺るがす震源に
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200109/25/20010925133009_06.shtml