投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 25 日 11:21:33:
日銀の速水優総裁に追い風が吹き始めている。今月六日の先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)を境に、海外からのエールが強まっているためだ。半年前には進退をめぐる問題が取りざたされていたが、最近では「インフレ目標」を求める圧力が沈静化に向かう一方、米中枢同時テロ後の危機回避策で効果を上げるなど信頼回復に自信をのぞかせている。(小島清利)
「経験の深い各国の中央銀行の方々には理解していただいている」。十六日に行われた記者会見で、速水総裁はインフレ目標の導入について、胸を張って否定した。
インフレ目標をめぐっては、山本幸三氏や舛添要一氏ら自民党若手議員らをはじめ、政財界を中心に包囲網が強まっていたが、最近は風向きが変わりつつある。
きっかけはG7だ。塩川正十郎財務相より一足先にワシントン入りした速水総裁は、欧米の中央銀行総裁らと積極的に会談。テロ後、当座預金残高を一時十兆円以上にして流動性を供給したり、財務省と連携し円売り・ドル買い介入を繰り返すなど「迅速な対応でパニックを回避した」と、評価されたからだ。
特に、グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は速水総裁に対して、「日本はインフレ目標を導入すべきではない」と助言したという。
日銀は昨年八月、政府の反対を押し切って「ゼロ金利」を解除したものの、景気悪化で、今年三月には量的緩和によって「ゼロ金利」を事実上復活。以来、速水総裁の手腕を疑問視する声は絶えなかった。前回のG7直前の四月末には、「健康を理由に辞意を漏らした」と伝えられ、辞任騒動が、加熱した経緯もある。
その後半年で、速水総裁が自信を取り戻しつつある背景には、「国際金融で絶大な影響力」(国際金融筋)を持つグリーンスパン議長の発言が、“援護射撃”の役割を果たしたことが大きい。
一方で、欧米の中央銀行が日銀に“エール”を送るのは、世界同時不況の阻止やテロ対策で、団結を強化しなければならない事情もある。
しかし、日本経済は「テロや狂牛病の影響で、事態は悪化しており、デフレスパイラルの瀬戸際にある」(第一生命経済研究所の川崎真一郎主任研究員)状況。
任期まで一年半を切った速水総裁が、不況脱出に道筋をつけ「実績」を残すことができるか。「グリーンスパン議長がやったように、市場との対話を重視して、信頼を集め、政府とスクラムを組めるかがカギを握る」(第一勧銀総研の真壁昭夫主席研究員)といえそうだ。