投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 23 日 20:01:53:
柳沢伯夫金融担当相が12日の閣議後会見で放った言葉に、株式市場関係者が身構えた。株価の急落や格付けの低下で市場の評価が著しく落ち込んだ企業の状況を精査する「特別検査」に向け、月内に準備作業に着手すると明言したのだ。特別検査とは、民間経済人が主導し、首相官邸が強く導入を求めた不良債権処理策に対抗して、9月末の経済財政諮問会議に金融庁が急ごしらえで持ち込んだ“起死回生策”だ。特別検査は不良債権処理の進展を狙ったものだが、公的資金の再注入があり得るとの思惑が広がるきっかけも市場に与えた。同時に「問題先送り」への警戒感も呼び起こしているのだ。
●公的資金への布石?
特別検査への関心が高まっているのは、「本当に厳正な姿勢で検査に臨んだら、公的資金の再注入は不要と言い続けてきた柳沢担当相の論理が崩壊する恐れが出てくる」(同)からだ。つまり、マイカル破たん以降、市場が猜疑心のこもった目でみている「要注意先債権」に対し、金融庁が厳正な引当てを求めれば「資本が著しく毀損(きそん)する大手行が相次ぐのは間違いない」(米系証券)。このため、特別検査の着手を明言した柳沢氏の発言は、「次なるアクション(=公的資金再注入)に向けた布石か」
(同)ともとらえられている。
●融資残100億円以上の問題企業が対象
柳沢担当相が会見する前日、金融庁事務局は大手行の融資担当者を集め、「要注意先」「破たん懸念先」に分類される企業で融資残高が100億円以上に上る“問題企業”の詳細を報告するよう求めた。また「正常先」分類企業でも、市場の評価が低下しているものも報告するよう言明。銀行側からの報告を基に、金融庁が特定企業を選定し、「本格調査」に踏み切る段取りだ。
また、同庁は検査が間に合った分に関して、この中間決算にも結果を反映させる意向を示している。ここで市場関係者が注目する点が浮かび上がる。つまり「金融庁側が問題企業を選ぶ、つまり裁量が働く余地が出てくる」(同)ことだ。
●大手行から1、2社だけ?
金融庁の問題企業選定の裁量余地があることで、株式市場では「金融4大グループからぞれそれ1、2社をピックアップし、象徴的に処理して幕引きではないか」(準大手証券)との思惑が浮上している。同時に、経営体力が相対的に弱い大手行からは問題企業をピックアップせず、「お茶を濁す単なるセレモニーになる可能性もある」(銀行系証券)との観測もくすぶる。
長年の金融行政への不信が、こうした見方の背景にあることは間違いない。同時に、「裁量によってポーズだけ示すようなことだけはしてくれるな」(同)との期待もこもっているのは確か。
その背景には、「ヘッジファンドの間でまたしても銀行不信が高まれば、大手グループといえども市場からの退場を強制される銀行が出てくるのは必至。市場全体が大混乱に陥る」(同)との切実な危機感がある。
特別検査で厳正審査を行い、公的資金再注入論議が高まれば、トップである金融担当相の辞任問題が浮上する。半面で、裁量が先行し「先送り」色が強まれば、海外投機筋の暴走が始まるのは必至。金融庁は「行くも戻るも地獄」(市場筋)の状況に置かれたといえよう。
○URL
・ジワリ浸透の“問題企業リスト”〜情報格差で思わぬ急落劇も
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200110/16/20011016142013_75.shtml
[相場英雄 2001/10/23 14:28]