投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 23 日 11:49:35:
「九月十一日以降」の世界経済は、羅針盤のない航海にも似た状態といえる。二十一世紀経済のエンジン役と期待されたIT(情報技術)産業の不振や金融・資本市場の低迷など、先の見えない不安を反映するかのように、経済の血液であるマネーも、行き場を失っている。今後の世界経済はどう展開するのか。元大蔵財務官の榊原英資・慶応大教授のインタビューを中心にエコノミストの見方をまとめてみた。
−−米中枢同時テロとその後の動きを世界経済の流れの中でどう位置づけたらいいのか
「一九九〇年代、経済のグローバル化をリードしたのは、米国中心の国際的な資金の流れだった。発展途上国などの新興市場も巻き込んで膨張した結果、九七−九八年のアジア通貨危機が起きた。当面の危機は乗り越えたが、ITバブルや米国の株式バブルが崩壊し、調整期に入り始めたときにテロが起きた。今の状況は、こうした流れの中でとらえるべきだ」
−−経済グローバル化の行き詰まり?
「世界人口が増大し、地球環境、食糧、エネルギーなどの問題が噴出し、すでに世界経済成長の限界は露呈していた。九〇年代後半のインターネット隆盛で、ITが切り札になると信じられていたが、実はそれもバブルだった。今回のテロが決定打となり、グローバリズム自体がある種の限界を迎えたといえる」
−−テロの直接的な影響は
「先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で大きなテーマとなったテロ資金の根絶だが、匿名性を持つ国際金融の世界で、テロ資金だけをあぶり出すのは非常に難しい。実効力を持たせるために公開性を強めようとすれば、資金の流れは一気に先細るだろう」
−−株式市場は
「世界的な株価の一段の下落は十分に考えられる。テロによる危機管理コストの増大は、国際金融だけでなく、航空業界や情報通信産業など米国が主導してきた、あらゆるグローバルサービス産業で起こりうるからだ。これらの産業が、テロ以前の収益性を取り戻すのは非常に困難だ」
−−米国の優位性は衰えたのか
「第一次世界大戦でパクス・ブリタニカ(英国支配による平和)が幕を閉じたように、グローバリズムの影の部分が生み出したテロリズムによる新しい形の戦争が、パクス・アメリカーナ(米国支配による平和)の終えんを告げている。百年、二百年に一回の経済構造の大転換期だ。産業革命以来、欧米がリードした大量生産、大量消費に支えられた時代は終わり、消費パターンが変化し、新しい産業も生まれるだろう。先がどうなるか読めないが、混乱が続きそうだ」
−−ドル暴落はあるか
「米国から資金が流出しても行き場がない。日本は米国より悪いし、欧州も急速に落ち込みつつある。新興市場はさらに深刻だ。行き場のない安定を保つ間はドルの暴落はないだろう」
−−日本はどうなる
「非常に危うい。これまでの日本の繁栄は、米国追随の二番手戦略でもたらされたもので、パクス・アメリカーナの最大の恩恵を受けていたといえる。米主導の秩序ある世界は崩壊し、各国・地域が一斉に走り出す新しい競争時代に突入する。日本はそのための準備が全くできていない」
−−小泉改革の役割は
「高度成長期以降に構築された日本のシステムを大きく変えないと生き残る道はない。防衛やテロ対策、経済など抜本的なシステム転換が必要で、小泉改革は、一歩を踏み出したにすぎない」