投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 10 月 22 日 10:28:50:
●本当の勝負はこれから
米英両軍のアフガニスタン攻撃は、空爆が一段落し、米特殊部隊が同国に潜入、タリバン司令部を急襲したことで、新たな段階を迎えた。米軍としては降雪とラマダン(断食月)が始まる11月半ばまでに、米同時テロの首謀者と目されるウサマ・ビンラディン率いるテロ集団「アルカイダ」の拠点を徹底的に叩き、来春までのビンラディン逮捕ないしは殺害の目鼻をつけようという目論みのようだ。ただアフガニスタンは英国の2度にわたる侵攻を退けただけでなく、旧ソ連軍が10年かかってもついに攻め切れなかった要害の地。兵士も勇猛果敢で知られる。4000メートル級の高峰が連なる同国を攻め落とすことは容易ではなく、本当の勝負はこれからだろう。
●“第2のビンラディン”出現か
重要なことは、米軍の攻撃が長引けば長引くほど、イスラム諸国の反米感情が強まるだけでなく、米国内や同盟国の厭(えん)戦気分も高まることだ。その意味でも米軍には何とか短期決戦で終えたいとのはやる気持ちが横溢(いつ)していよう。ただブッシュ米大統領が「テロ組織根絶」を掲げている以上、仮にビンラディンを逮捕・殺害したところで、“第2、第3のビンラディン”が出てくることはほぼ間違いない。一部には、この戦いはかつての十字軍遠征と同じく2世紀はかかろうとの見方すら出ている。
●バイオテロを口実にしたイラク攻撃は不可能
米国内で始まった炭疽菌事件は他の国にも広がるなどバイオ(生物)テロの様相をさらに強めている。米司法当局はなお断定していないが、ビンラディン一派ないしは、これに同調するテロ組織の犯行とみて間違いないだろう。米政府は、湾岸戦争時にイラクが大量に貯蔵していた炭疽菌の多くがその後行方不明になっていることから、同テロの背後にイラクがいるとの見方を強めている。慎重なパウエル国務長官に対し、ラムズフェルド国防長官は就任当初から「湾岸戦争でフセイン・イラク大統領を殺さなかったのは失敗だった」と公言しており、炭疽菌事件を口実に米軍がイラク攻撃に踏み切る可能性も示唆している。
しかし実際に攻撃するとなると、たとえイラクがアラブの“鬼っ子”であろうと、アラブ、イスラム全体を敵に回す恐れがある。何より、米国がイラン革命をけん制するため、一時期イラクを支援した米国特有のダブルスタンダード(二重基準)が白日の下にさらされることになる。考えてみれば現在、米軍が攻めているタリバンもソ連軍のアフガン侵攻の際は米国の支援の対象だったのは紛れも無い事実だ。
●炭疽(そ)菌ワクチンは国内在庫あり
一方、日本国内のバイオテロ対策は、補正予算に生物兵器研究や万一の場合の医療体制確立の費用が盛り込まれるなどようやく動き出した。厚生労働省も当初、炭疽菌のワクチンはないとしていたが、「一般に流通している抗生物質の投与が有効」などとして、ペニシリンGなどの抗生物質が製薬会社などに数十万人分の在庫があることを確認した。ただ炭疽菌と同じくテロへの悪用が懸念される天然痘ウイルスは国内でワクチンを製造しておらず、これから製造を検討するという。
●押さえ込まれた「小泉・鳩山」連携
米軍支援のためのテロ対策法案をめぐる修正協議は、あくまで「国会事前承認」を必要とする民主党の要求を与党側が突っぱね、結局、民主党は反対に回り、与党3党による衆院通過となった。最後は小泉純一郎首相が折れてくると踏んだ鳩山由紀夫民主党代表の“読み負け”だろう。さらに言えば、今後をにらみ民主党との連係を模索する小泉首相の姿勢に危機感を抱いた橋本派と公明党が、首相と鳩山氏の思惑を強引に押さえ込んだとの見方も成り立つ。
●野中氏らが首相に無言の圧力
その証拠に、期待された衆院テロ対策特別委員長の加藤紘一元幹事長と菅直人民主党幹事長とのパイプは全く機能しなかった。また野中広務、古賀誠両元幹事長が衆院本会議でのテロ法案採決を欠席したのは「下手な動きをすれば、いつでも政権から引きずり下ろすぞ」という、首相への無言の圧力とみるのが妥当だろう。
それにしても野中、古賀両氏は、昨年11月のいわゆる「加藤の乱」の時は内閣不信任決議案採決を欠席した加藤、山崎拓両氏に対し、離党勧告を突き付けるなどの脅しをかけたが、立場が逆転すると平気でこういう挙に出る。“闇の世界”にも通じているといわれる野中、古賀両氏が政界で恐れられる理由はこういうところにもある。
●“絶好のチャンス”をみすみす逸した田中外相
中曽根康弘元首相、森喜朗前首相、山崎拓幹事長と自民党実力者から期せずして早期の内閣改造論が出ている。もともと7月の参院選直後に期待されていた改造が、首相の「一内閣一閣僚」との主張で延び延びとなっているためだ。今回の改造論は、田中真紀子外相の言動・行動があまりに非常識なことによる更迭論がきっかけとなっている。外相は先に、外務省事務当局からパキスタン出張を提案されたが、「危ない」などの理由で断った。
もしムシャラフ同国大統領との会談が実現していれば、ブレア英首相やパウエル米国務長官より先だっただけに、日本の存在感を示す非常にいいチャンスだったと悔やまれる。パキスタン訪問では、タリバン勢力との秘密裏の接触も検討されており、国際的大ニュースの主役になるチャンスをみすみす逃したことになる。
●内閣改造は首相の「公約破り」か
こうしたことなどから小泉首相も外相更迭は止む無しの判断に傾きつつあるとみられる。しかし、これをきっかけに狂牛病対策で手間取っている武部勤農水相や大規模な選挙違反事件で多数の郵政幹部が逮捕された片山虎之助総務相、保守党内の権力闘争に伴い扇千景国土交通相などの閣僚交代を望む声が上がり始めており、そうなれば全面的改造につながり、首相の「公約破り」との批判を招く恐れがある。
また、あらかじめ全閣僚に辞表提出を求める通常の内閣改造とは異なり、小規模の場合は誰かが率先して辞表を出す必要がある。今やポストにしがみついているだけの外相が自ら進んでこの役目を引き受けるとは到底考えられず、同問題は実際に改造できるかどうかの重要なポイントになる可能性がある。
●皇太子殿下の第一子は12月4日誕生?
年末の政治日程をみてみると、先に挙げた内閣改造は今臨時国会閉幕直後の12月10日(月)が有力。新しい陣容で同月20日(木)または21日(金)から始まる2002年度予算編成に取り組むことになる。政府原案決定は25日(火)の予定。また、政治日程とは直接関係ないが、皇太子妃雅子様の第一子誕生は大安の同月4日(火)ではないかとの情報があることをご紹介しておく。
(政治アナリスト 北 光一)