投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 17 日 22:39:33:
ニューヨークの世界貿易センターが数時間のうちに倒壊してしまった。この事件は、21世紀の世界を考える点で意味深く思われる。ここでは、3つの視点を提起したい。
1つは、仮想と現実の境がますます薄れていくことである。この事件は、ハリウッドが執ように作ってきた「破壊型勧善懲悪」映画の延長線上にある。事実はフィクションより出て、フィクションよりすさまじい。
第2に、ゲリラ戦の進化である。20世紀は毛沢東の「敵を奥深くおびき寄せ、せん滅する」というゲリラ戦略が中国・ベトナム・アフガニスタンやアフリカ諸国で成功した世紀である。ベトナムの泥沼に敗れ去った米国は対抗策として無人・電子戦争としての湾岸戦争を実行した。
今回の進化したゲリラ戦略は、敵地深く入り込み、敵の機器を使い、民衆を巻き込む戦略である。しかも自らの身分・所在を明らかにしない「見えざるゲリラ戦」である。首謀者とされているアラブ人の命運にかかわらず、この戦略は21世紀に継続・拡大していく。
第3は、見えざる崩壊である。世界貿易センターの物理的崩壊はリアルタイムで報道されたこともあり、だれの目にも明らかであるが、金融メルトダウンや経済崩壊のような事象はなかなか目に見えない。今回の事件と同じ週に2兆円近い負債を抱えて巨大流通企業が破たんしたが、この会社の近年の迷走はまるで恐竜の断末魔を想起させるものであった。
我が国の経済はバブル後10年間先送りを繰り返した結果、病膏肓(こうこう)にいたっている。今後も大型の恐竜が次々に倒壊していこうが、それが失業・消費抑制といった経済崩壊から家庭崩壊・犯罪増加といった社会崩壊へとつながる。政治が実態的に崩壊していることは、財政の破たんと官僚の腐敗でも明らかである。我が国に必要なものは、もはや口先だけの変革では済まなくなっている。(鷦鷯)
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