防御一方の日銀が反撃の狼煙−総裁に続き、副総裁が政府に注文(解説)東京 10月17日(ブルームバーグ)

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投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 17 日 22:23:25:

 「政府が日銀法の規定を超えて金融政策の目的を定めるかどうかという議論をするのであれば、その目的とは何なのか、それを実現するために必要な政策の整合性をどのように確保するのか、財政政策を含めて政府の施策は目的実現のためにいかなる協力をする用意があるのか等々を議論しなければならない」−−。

  ここ数カ月、防御一方だった日銀が、ようやく反撃に出ている。山口泰副総裁が17日、都内で行った講演は、前日の速水優総裁の会見に続き、中央銀行首脳が口に出す言葉にしては、刺激に満ちていた。メッセージは、次の3つだ。1)量的緩和をこれ以上進めても意味はない、2)インフレターゲティングを強制する前に、議論すべきことがある、3)政府には、財政政策を含め、金融政策が機能する環境作りが求められている−−。

       「半年間の経験を経た暫定的な回答」

  山口副総裁はまず「『未踏の領域』における金融緩和措置の効果や限界に関するわれわれの知識も、時間の経過とともに、豊かになってきた。(中略)現在の緩和措置を始める前に私が疑問や仮説として持っていたことと、半年の経験を経た現時点での暫定的な回答という形で、論点を整理してみようと思う」述べ、次の4点を挙げた。

  第1点「短期金利が事実上ゼロに到達してしまった後でも、中央銀行は当座預金の残高を自由に増加させることができるか」→「金利の低下余地がなくなった状況の下では、当座預金は需要があれば増やせるが、需要がなければ増やせないという、言ってみればごく当たり前の結論に到達した」

  第2点「当座預金の量を大幅に増やすこと自体が金利、為替、株価といった資産価格に影響を与えるか」→結果は見ての通り。第3点「CPや社債など資本市場を通じる資金調達環境に与える影響の評価」→「そもそもCPや社債を発行できる企業は、相対的に格付の高い企業が中心であり、資本市場調達のできない低格付企業群まであわせて、緩和効果があまねく浸透しているという訳ではない」

    政策委員会の大勢は3月の量的緩和の枠組みは半ば放棄か

  第4点「銀行の貸出行動に与える影響」→「3月以降の金融緩和措置によって、銀行の貸し出し姿勢が大きく変わったようにはうかがわれない。マクロ的にみると、経済や産業の構造改革のプロセスでは、銀行の貸出や資産規模が縮小すること自体は、ある程度やむを得ない面がある。また、銀行が信用コストを含めて採算重視の貸し出し運営を行っていくことは、金融システムを健全化していくための必要条件だ」

  結論「一言で述べると、日銀は金融市場に対し文字通りあふれんばかりの流動性を供給し、CPや社債の発行市場等一部では望ましい効果を発揮しているが、全体としてみれば、金融システムの外側にいる企業等にはその効果が浸透していないということだと思う。このため、経済活動は改善せず、物価の下落傾向にも歯止めがかかっていない」

  ここ最近の速水優総裁、植田和男審議委員、田谷禎三審議委員、三木利夫審議委員などの発言と合わせて読むと、日銀政策委員会の大勢のスタンスとしては、3月の量的緩和の枠組みに沿って当預残高を引き上げる政策は、半ば放棄されたとみるのが自然だろう。

     「金融政策だけで物価の下落防止できない」

  次に、インフレ・ターゲティングについて、山口副総裁は「日銀が現在、インフレーション・ターゲティングの採用は適当でないと考える最大の理由は、現在の金融経済状況の下では、金融政策だけで物価の下落を防止することはできないからだ」と言明した。

  さらに「確かに中央銀行がどのような資産であるかを問わずいくらでも買い続ければ、最後はインフレが起こるはずであるというのは、ほぼ定義により、その通りかもしれない」が、「われわれの目的はインフレを起こすことにある訳ではなく、あくまでも持続的な経済成長を実現することが目的だ」と指摘。

  そのうえで「中央銀行に対し、どのような資産でも購入するということを求める場合には、そして、それが大規模なものになればなるほど、そうした資産の買入れは実質的には国会の議決を経ない財政政策に近い性格を有するということを明確に認識する必要がある。そのことを認識したうえで、経済の状況に照らし、その是非を考えるというのが議論の筋道であるように思う」と強調。政府関係者の一部に無責任な言動がまん延している現状に怒りをにじませた。

    返り血を覚悟で“捨て身の条件闘争”か

  財政政策についても「政府債務が高い水準に達している現在の日本のような状況の下で、財政政策を活用する余地は限られているということも恐らく事実だろう。ただ、限られているだけに、思い切った工夫をこらしていただきたい」と述べるなど、踏み込んだ発言が目立った。

  速水総裁は前日の会見で、追加的な財政支出の財源として「国有資産の売却」を挙げた。山口副総裁はこれに続き、「国際的には、不況期における財政の在り方として、いわゆる自動安定機能(ビルト・イン・スタビライザー)が働く余地を残しておくという発想が強いわけだが、この点はどう考えるべきなのか」と問題提起。暗に、税収が大きく落ち込んだ場合、新規国債発行額を30兆円以内に抑える公約にこだわるべきではないとの見解を示した。

  日銀は一段の量的緩和にも、インフレターゲティングの導入にも否定的。あとは財政政策だけ−−。講演内容の字面だけをたどると、日銀は塹壕(ざんごう)に立てこもり、鉄砲が飛び交うのをひたすら耐え忍ぶ覚悟とも取れる。しかし、返り血を浴びるのを覚悟のうえで政府に注文を付け始めていることを考えると、“捨て身の条件闘争”に入っているとみるべきかもしれない。

東京 日高 正裕 Masahiro Hidaka  TA


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